岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(76)入試シーズン」(00・1・12)

 1月も中旬ですから、日本で、ぼつぼつ大学入試が始まる季節ではないかと思います。米国でも高校4年生(こちらは4年制の高校が多いので)は昨年11月の中旬ぐらいまでに共通試験であるSATの結果と学校の成績表と願書(大学によっては小論文も)を志望大学に提出して、今はちょうど合否の通知を待っている時期です。日本のように大学ごとで実施するペーパー試験はありませんから、大学からの合否通知を待っているだけです。発表は応募受付順に審査して合格者に順次通知していく大学や、大体の発表日が決まっていて、その日に一斉に合格者に通知を出す大学、一定の成績を満たしていればアポイントメントをとって直接大学に願書を持ち込んで、その場で審査合否が決まる大学など色々ありますが、いずれにしろ、どの進学希望者も、この1月から6月ぐらい迄の間に希望の大学に入れるか?否か?が分かるシステムになっています。

 ただ日本と違って、私立大学であろうと公立大学であろうと、合格が決まっても、短期間の間に入学金や初年度の授業料を払い込む必要はないので、何種類かの大学に応募して、複数の合格通知を受け取り、それからじっくり何処の大学に行くか?を考え、入学申し込みの締め切りとなっている5月末ぐらいの時期(ちょうど高校を卒業する時期ですが)までに、希望する大学に入学しますと云う意志表示をすれば良い訳
で、日本のように滑り止めと思って支払った入学金が無駄になると云うようなことはありません。

 アメリカの大学も偏差値云々とは言いませんが、大学による入学の難易度は4段階か5段階に分類され、AであればSATの成績は何点以上、学校の成績の平均ポイントは何点以上等と云う合否判定の為の情報は何種類かの出版社から本として毎年公開されています。本によっては単純に合否成績の情報だけでなく、入学した学生の満足度、たとえば入学後の学生は勉強に熱心か?教官は教育に熱心か?男女交際はオープンか?寮はきれいか?学食はうまいか?図書館の規模は?近くに旨いコーヒーの店はあるか?入学後の体重は増えるか減るか?等々の情報も総合して大学のランキングを付けているような、第3者が読んでも面白い本もあります。

 アメリカらしい制度であったのですが、少数民族保護の立場から黒人系、ヒスパニック系、アメリカインデイアン系の人たちには合格の特別枠がありました。成績は下位でも、その割り当て人数枠に入れば合格出来ると云うシステムで、以前は少数派民族にも高等教育の機会を与えると云う意味でそれなりの価値はあったようですが、人口増加によって全体の応募者が増加し、合格ラインが次第に厳しくなると、成績から判
断すると本来、合格出来る人間が合格出来ずに、成績がかなり劣っていても、この特別枠の適用を受けて、少数民族である故に入学出来ると云う問題が次第に表面化してきて、白人やアジア人(本来は少数民族扱いなのですが、優秀な大学への進学希望者が多いので特別枠にならない)にとっては逆差別になるとの意見が強まり、カリフォルニア州では議会だけでなく州内の各分野で大議論があり人種差別問題も絡んで複雑となったのですが、結局、競争の激しいカリフォルニア大学は、この特別枠制度を撤廃して合格選考は人種に関わりなく成績の結果だけで合格判定すると云う制度が決まり、先の州知事が合意して撤廃されました。その結果としては上記の特別枠を得ていた人達の合格者数は激減しましたが、ともかく、その議論は一応落ち着いたようです。ただ、人種問題が根底にあるだけに多くの州では未だに特別枠制度を維持しています。

 では留学生の受け入れ?に関しては?と云うと、これも州によって大きな差があります。州立大学に関して云うと、一般的に人口が少なく、結果として州内の入学応募者数が少ない州は留学生の受け入れにも熱心です。またこれらの州では学生の成績レベルを維持する為に、他州から応募する学生に魅力を持たせる為、州内から入学する学生の授業料と州外から入学する授業料をほぼ同じ金額レベルにまで調整している大学もあります。逆に人口の多い州では、州内の応募者も十分に入学させられない状況から、留学生や州外の学生の受け入れに、厳しい制限をつけていて非常に優秀な成績と判断される学生だけの入学に限定したり、授業料も州内と州外からの学生の間で2倍以上も違う授業料に設定しているところもあります。アメリカでは州立大学はその州民の支払った税金によって運営されていると云う意識が強い為、公立大学とは云え、州内から入学する学生と州外から入学する学生の授業料には大きな差をつけているのが普通で、支払う授業料の差が3倍にも及ぶ州もあります。

では授業料も入学金もゼロの大学は?と云うと実はあるんです。いわゆるアメリカの国立大学です。もっとも普通の大学のシステムを持つ国立大学はアメリカには存在しませんが、陸海空の3つの士官学校、商船大学それに沿岸警備隊士官学校は国立大学なんですが、これらは入学と同時に公務員扱いで授業料は必要ありません。ただ、卒業後、一定期間の兵役に就かないような場合は授業料の後払いを求められるようすでが。

 まあ日本とアメリカの大学の入学方法に色々な差はありますが、私個人がアメリカの大学システムでもっとも優れていると感じるのは編入の制度です。本来入学を希望していた大学に不合格で入学出来なかった場合や応募を諦めたような場合でも、他の大学でそれなりの成績をあげることによって、元々希望していた大学で実力が妥当と判断されれば、3年生からの編入が可能です。上位の大学では毎年同学年の学生数の一割程度の学生がこの編入システムで入ってきます。また過去に取得した単位の全てとはいきませんが、内容が相当レベルにあると見なされる科目の単位は認められますから再取得の必要がありません。日本のように浪人して次年度に再度試験を受けると言う無駄が無いことです。逆に希望の大学に入ったけれど成績が悪い場合は?と云うと、それなりのレベルの大学である場合、多くは半期に取得する単位で、Dと呼ばれる成績(不可では無いが、普通以下の判定)を2科目とった場合、留年で無くて放校処分となり、次の半期の授業を取らせてもらえません。それ以下の大学に行って、リカバリー出来る成績をとって復活を狙うか、その大学を諦めると云うことになります。この点がアメリカの大学生の厳しいところかもしれません。
 

岩間@サンノゼ