岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(95)機内食」(00・8・9)

  生活のベースがアメリカにあるからでしょうか?。出張が終わってサンフランシスコの空港 に着くと、やはり、帰ってきた!と云う気持ちになります。 夏の期間中に日本へ出張することは、ほとんど無かったので、久々に日本の夏を感じ 取ることができました。いやはや、東京も大阪も暑かったですね。 別のメールにも書きましたが、気温の35度や36度はサンノゼ辺りでも、さほど珍 しくもないのですが、違いはその湿度で
す。乾燥した35度と湿気をたっぷり含んだ 35度の差は強烈でした。成田空港に到着して飛行機のドアが開いた時点から、湿気 を含んだ日本の外気を感じました(笑)。

  今回は出張帰りと云うこともあり、飛行中の機内食の話を少ししたいと思います。 アメリカ大陸を飛行機で横断すると、直行便で5時間から6時間かかりますから、国際線同様に飛行中に機内食が出されます。 以前は飛行時間が1時間前後だとピーナッツに飲み物。2時間を超えると軽食と飲 物。 3時間を超えると、まとまった食事と飲み物が出されると云うのがエコノミークラス の平均的なサービスの目安でした。そんな訳で大陸横断で途中の空港で乗り継ぎなど を行うと2回の食事にありつけるようなこともありました。

  10年ほど前まで、アメリカの国内便では現在の国際線のエコノミークラス並の質の 機内食が出され3種類ほどのメニューから乗客が選択することが出来ました。更に、 菜食主義者や宗教上の理由や病気などの理由で、特定の食材を使った料理を食べるこ とが出来ない乗客の為に、航空券を予約した時点で、本人の食材の制限を伝えておく と、機内では、その制限にあった特別メニューも提供されました。特に国際線の場合、エコノミー席でも、それなりにまとまった機内食が出ました。サ イズこそ小さめですが、それなりに美味しい、しっかりしたひれ肉のステーキなども メニューにありましたし、大きな都市には各航空会社の機内食のメニューと同じ物を メニューにするレストラン等もありましたから、認められる質の良い食事内容であっ たように思います。

  しかし、最近は、こんなもんか?と思う内容の食事になってしまったのは残念です。その始まりは日本がバブル景気に沸いているころです。当時、アメリカの景気は極度 に低迷し、アメリカ航空業界もひどい不況で大赤字に陥り、各社共に運賃の安値合戦 で生き残りをかけ、競争していました。当然ながら赤字減らしの合理化に注力して大幅 な職員の削減や給与カットなどの会社内部の合理化に留まらず、その実施は乗客サー ビスの質の低下と云う普通はサービス業がタブー視する分野にもコストダウンの手を付けました。結果として、その徹底した合理化は成功し、アメリカの航空会社は世界で有数のコスト安を実現でき、日本の航空会社の体力では、彼らと対等に競争出来ない状態に陥って しまいました。

  しかし、サービスの低下はやはり気になるもの。最初は航空会社社員の削減によって、作業者が不足し、搭乗手続きの待ち時間が増える程度の問題でしたが、やがて機内の座席の列の間隔を狭めてトータルの座席数を増やしたり、トイレに置いてあった化粧水や櫛や歯磨きのセットも無くなり、機内の音楽サービスも有料化したりと云う変化が起こってきました。 さて、今回の話しの機内食については、最初、サラダなどの下に引いてあるレタスを食べる乗客はほとんどいないと云う理由から、それを抜いてしまい、年間いくらのコストダウンが実現出来た等と云う話しがテレビニュースで話題になりました。もちろん、その程度のコストダウンに留まらず、機内食のメインの食材が安いものに変わってしまったり、元の調理が簡単なメニューが選ばれたり、口直しのチョコレートが消えてしまったり等など、質の低下が急速に進んでしまいました。定番の朝食メニューであったオムレツにハムかソーセージがついてポテトと云うメニューが今では牛乳をかけて食べるシリアルと小さいバナナ一本に代わってしまいました。つまり乗客に出す前に温める必要があるホットミールと云う種類の機内食を大幅に減らしてしまい、食器洗い等が必要でなく、使い捨てで、片付けが簡単なものに食事も食器も代わって きています。

  当初は合理化のツケを乗客に回すのか?と云う非難もありましたが、飛行機の旅において乗客が一番期待するものは安全の次ぎは料金と云う訳で、料金を値上げ、その分だけ機内食の質を上げると云うような話にはなりませんでした。無論、世の中には世間の裏をかくビジネスがあり、ある航空会社は当時の平均的な座席の列の間隔より多少広めに座席を配置し充分な足回りを確保して、機内食も他の航空会社より多少質を上げて、その航空会社の社長が毎月機内食の試食をして、翌月の機内食のメニューを決める等と云う特徴をアピールし、Almost First Class Serviceと云うキャッチフレーズ広告で乗客集めを試みたのですが、継続の無いシングル ヒットで終わってしまいました。やはり乗客の関心事は機内食の質より、より安い航空料金にあった訳です。

  更に最近では出発の時間帯によっては、3時間以上の飛行時間でも機内食は出ない便が増えてきています。そんな時、その便の搭乗ゲートに、この便には飲み物以外のサービスはありません!と書かれたサインが出ています。つまりは食事をしてから飛行機に乗ってください。と云う訳です。そんなことから旅慣れた乗客には、機内食をあてにせず、搭乗前に空港ターミナルビル内にあるファーストフード店でハンバーガーと飲み物を買い、それを機内に持ち込んで、離陸後に食べ、ゴミをスチワーデスに渡すなんて人も良く見かけるようになり ました。

  そんなことから想像すると将来、機内の食事は有料?なんてことになりかねない雰囲気で、機内で幕の内弁当をなんて時代が来るかもしれません。以前は機内に搭乗後、何らかの理由で出発時間が遅れたような場合、離陸後に機長から、離陸が遅れたお詫びのメッセージと共に、この便で提供出きるいつもは有料なアルコール類の飲み物を無料サービスしますと云うアナウンスがあって、乗客は拍手喝采。スコッチを一本、スチェワーデスに頼むと二本を持ってきてくれるなんて云うことも良くありましたが、最近はそんな場面に遭遇することも無くなってしまいました。
 

 では 岩間@サンノゼ