9月から学校の新年度も始まり、多くの人がバケーションを終えて職場に戻ったことから、朝夕の通勤ラッシュは益々酷くなってきました。加えてハイテック産業に支えられて求人の多いサンノゼへの人の流入は激しく、年を追うごとに交通渋滞は酷くなってきています。週末は渋滞に縁の無い道路事情であった筈ですが、一部の地域では週末も交通渋滞に悩まされるようになってしまいました。
何れにしても、増えつづける住民を含めて、ここで暮らす人達が通勤用として一斉に朝夕、通勤帰宅の為に車を動かす訳ですから、どのハイウエーも通勤帰宅時間は最悪の交通渋滞になり、サンノゼの住民が暮らしにくさの原因のbPとして取り上げているのが交通事情の悪化と云う問題です。こちらの会社は工場や現場は朝の7時に始業、事務所は9時に始業としているところが普通ですから、まず通勤の渋滞は午前6時ごろから始まり9時半ぐらいまで続き、帰宅の渋滞は午後の3時から始まって7時ぐらいまで続くことになります。更にハイウエー上でこの時間帯に事故など(実際に多いんです)があった場合は完全にお手上げです。
交通専門家はこの町の場合、ハイウエーの一本や二本を新しく建設しても、効果のある対策にはならず、通勤の公共交通機関への切り替え以外に対策はないと言明していますが、住民の本音としては総論賛成各論反対と云う感じで、そうかもしれないけれど自分は車で通勤したいと云う訳です。
近くの大きな町であるサンフランシスコでは通勤に公共交通機関を利用すると云うことがかなり進んでいます。多分、サンフランシスコの町自体が半島の先端にあり、市の面積が限られ、密集した町作りになっていることから、もともと充分な駐車スペースの確保が出来ない町であり、市内の多くの企業は従業員の為の駐車場確保など難しく、どうしても車通勤をしたいと云うことから、個人で駐車場等を借りると月額300ドル(三万円強)ぐらいは最低取られますから、それを個人負担するとなると厳しいものがあります。まして路上駐車などはほとんど困難な町ですから、公共交通機関を利用せざるを得ない実情があるようです。ですから地上の交通だけでなくサンフランシスコを横断するフェリーボート等も重要な公共通機関の一つになっています。
一方のサンノゼは平らな土地で面積も広く、密集してきたとは云え、それでもダウンタウンの一部地域の話。どの企業もビルの横に従業員の為に充分な広さの駐車場を持っていま
す。そんなことから、駐車のための登録が必要ある訳でも無く、早く会社に来た人から自由な場所に停めて良いと云うのが今でも普通です。この違いが人口的には同様な規模の町でも、住民が公共交通機関を通勤に利用するか、否かの結果に現れているのではないかと思います。
ではサンノゼの公共交通機関は?と云うと、実際には結構あるのです。まず市内のみならず周辺の都市を含めた地域をカバーするVTAと云うバスシステムがあります。地域の数カ所にハブと云う乗り継ぎ用の中継基地を作り、かなりきめ細かく路線サービスを行っています。このバスは乗客だけでなく、その自転車も運んでくれます。バスの車体の前に自転車を載せるハンガーがあり、自転車を持った乗客はそれを前に倒して自転車を載せることができます。もちろん、自転車輸送代は無料です。でも、通勤に利用する乗客は限られており、車を持たない人や車を運転できない年齢の人達が主で、積極的に通勤に利用しようとする人は多くいません。
このバスシステムですが、慣れると便利とは聞きますが、初めて利用する時にはちょっと驚くことがあります。バス停には柱が一本立っていて、路線番号を示す番号の表示板がありますが、何処行き?通過時刻?の案内が全くありません。始発と最終便の時刻ぐらいは書いていても良いのでは?と思うのですが、あまりそう云う苦情も無いのか?良く分りません。まあ、アメリカ人は比較的待つことに強い人間と云われるので、それで良いのかもしれません。それらの情報を知りたければ交通局に電話をしてくださいと電話番号は書いています。交通局に依頼すると詳細な路線系統を示す地図と主なバス停の時刻表が送られてきます。基本的には日本で云うワンマンバスで、前乗り後ろ降りで、料金は一律なので乗車時に料金を払うシステムです。
また10年ほど前に地元公共交通機関の決定版としてライトレールと呼ばれる路面電車がサンノゼ市を南北に縦貫する形で建設されました。オレゴン州のポートランド市で成功したことに影響を受けたと聞いています。幹線道路沿いを走り複線式で時間帯によって2−6両の電車を連結して走っています。電車利用を促す為にパークアンドライドと云う方式を取り入れ、郊外の駅の周囲に大きな無料の駐車場を用意して、市内で出る時、ここで車を停めて電車を利用してくださいと云う考え方です。車両はなかなかモダンで、車内も清潔、安全度も高く、15分間隔程度で運行されていますから、待ち時間も少なく便利なのですが、利用者の数となると、次第に増えているとは云うものの、通勤システムを変え得るには、まだ力不足のような感じがします。
交通局自体は各電車駅とバスとの接続を良くするなどの改善も行っています。この電車のシステムは徹底した合理化を行い、全ては無人駅。電車も複数連結しながらも一名の運転手だけで車掌はいません。運転手は運転に専念しており車掌役はしませんから、乗客の切符の検札とか切符の回収は行われません。つまり、乗客は駅の自動販売機で切符を買い、乗車する訳ですが、切符を買わずに、ただのりしたとしてもほとんど見つかることは無い訳です。ライトレールの事業そのものは乗客の誠意にかかっていると云う日本では考えられないコンセプトで運営をしている訳です。
ただ、たまに、パトロール警官が乗車することがあり例外的に乗客の切符購入の有無を確かめることがあるそうです。この時に切符を持っていないことがバレると相当な罰金を支払うことにはなると聞いたことがあります。路線の長さは約55kmほどですが、料金は均一。一回の乗車は1ドル25セント(150円ほど)、一日何回でもと云う乗車券は3ドルです(子供は確か半額ぐらいだと思いました)。この電車は自転車の車内持ちこみ(無料)が可能で、車内の特定の場所に自転車を置くようにと云う考えから、自転車を吊り下げるハンガーや自転車を固定する手すりがついています。
休日などは特に自転車を積んで町のダウンタウンをサイクリングする人が目立ちます。路線の何箇所かには非常にきついカーブがあってスピードが極端に落ちる時もありますが、それ以外の所はかなりのスピードで走る、なかなか性能の良い電車です。当然ながら道路に平行して走るところには交通信号もありますが、これらの信号は電車の通行を優先するようにセットされていますし、電車の線路部分に自動車は進入できない構造になっていますから、路面電車システムとは云え、なかなかの優れものだと思います。
また、現在、サンノゼからサンフランシスコ方面に行く為の公共交通機関として、サンフランシスコ湾の西側をカルトレインと云う総2階建て車両を使った電車が運行されていますが、これは通勤時間を除いて一時間に一本程度で利用者も限られています。しかし湾の東側を走る高速無人運転鉄道として知られるBARTと云う高架鉄道はサンフランシスコ市内で地下鉄になる為、湾の東側で暮らし、サンフランシスコに職場のある人達には便利な通勤の足として、広く利用されています。当初のBARTの計画はサンフランシスコとサンノゼを結ぶ計画になっていたそうですが、当時のサンノゼはこのBARTシステムを利用して低所得者層がサンノゼ方面の町に流れ込むと云うことを暗黙的に警戒して反対したそうで、現在でも電車の終着駅はサンノゼからは相当離れた町になっていますが、サンノゼも交通渋滞に絶え切れず、再びBARTシステムをサンノゼのダウンタウンにまで延長する計画が出ています。
何れにしてもサンノゼ地域は気候が素晴らしく、能力さえあればハイテックの仕事がいくらでも見つかり、住民の平均所得も全米でずば抜けて高いと云う魅力ある土地なのですが、この交通渋滞と住宅価格の高騰と云う2つの都市問題を抱え、深刻さを増す現在、いつまで魅力ある土地で有り続けるられるのか?気になるところです。
岩間@サンノゼ