岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(102)運転手の癖」(00・10・16)

 サンノゼは晴天の週末でした。日差しは強く、屋外で、ちょっと動くと暑いくらいの日よりでした。私は相変わらず半そでの生活で、近所でも夏と違った格好をしている人はお年寄りぐらい、本当に季節感の無い格好です。

 先週の話題で触れたようにサンノゼでは車無しの場合、仕事を含めて生活面で数々の支障が生じてしまう社会です。生活をするには何としても車が必要と云う訳で、ポンコツ車を買って使う人も結構見かけました。車検制度の無い国ですから、車は走る限り使えますし、10年ほど使った車でも、走りさえすれば1000ドル(11万円)以上の値段がつきますし、走らなくなって解体屋に運ぶと400ドルほどで引きとってもらえます。解体屋では先ず、中古部品として抜き取り販売し、主な部品が無くなると、プレスでつぶしてしまいます。そんな訳で、ドアやフェンダーの色が違う車なんかも走っていましたけれど、アメリカの中でもずばぬけて活気のあるシリコンバレーはその超好景気に支えられ、この4〜5年の間に、平均的に見てもこの土地の人達の所有する車の質は格段に向上しました。

 新車でも安い車は影を潜め、3万ドル(約330万円)を超える車を持つ人が極、普通にいると言う感じです。なぜ、3万ドルを境にするのか?と云うと、こちらでは車両価格3万ドルを超える車を購入すると、3万ドルを超える金額に対して、妙な名前ですが贅沢税がかかります。そんな訳で高い車の目処を一応3万ドルとした訳です。3万ドルでどんな車が買えるのか?と云うと、一番売れている日本メーカーの乗用車、ホンダのアコードが2万4千ドルぐらいで、シビックが1万6千ドルぐらいです。トヨタのカムリ(日本のカムリと違うと聞いていますけれど?)が2万6千ドルぐらい、カローラが1万8千ドルぐらいです。無論、グレードの上下でプラスマイナス2千ドルほどの差はあります。丁度、3万ドルに近い車となるとトヨタのアバロンなどが入るのではないかと思います。

 さて、今日の話題のアメリカ人の運転の癖ですが、無論、車を運転する人は国に限らず個別の癖あり個性ありでしょうから、こんなことを良く見かけますと云う程度に理解してください。

1.駐車上には車の頭から入れる。

 駐車スペースの幅が日本に比べて広いこともあるかもしれませんが、日本流(?)にバックして車を駐車させると云うのは大変珍しいことです。悪口を言う人はアメリカでは運転免許を取得する為の実技試験で、車を後ろに動かすのは真っ直ぐ下がることだけ、日本流の車庫入れとか縦列駐車の実技試験がないからだよ!なんて云います。確かに実技試験の最後に車を駐車させる時も車は頭から入れることになっています。街中の駐車場は次第に狭くなってきていますが、それでも車を頭から駐車場に入れる習慣はまだ変わりません。

2.ヘッドライトは停車中も消さないもの

 最近は知りませんが、私が日本で運転していた頃、夜間、信号待ちの間はヘッドライトを消していました。こちらでは夜間、信号待ちの間にヘッドライトを消す人はいません。雨が降っていて、エアコンを入れた状態でも、ヘッドライトは消しません。現在、数社のメーカーの新車には、昼間でも自動的にヘッドライトが点灯するようになっています。昼間でもヘッドライトを点けていた方が事故が少ないと云う理由だそうです。安全上効果があるかもしれませんが、個人的には昼間にヘッドライトは点けたくありませんけれど。

3.オートマチックをPに切り替えずに信号を待つ

 オートマチックと云うのは走行時に一度、Dにセットしたらバックを例外にして、エンジンを切るまで、切りかえることはありません。信号待ちの間、ドライバーは、皆、ブレーキペタルを踏みつづけています。従って信号待ちの間はどの車もブレーキランプが点灯しています。

4.ハンドブレーキをあまり使わない

 マニュアルシフトの車は例外ですが、オートマチック車を使う人は、駐車中、ハンドブレーキを掛けません。オートマチック車はPポジションでギアがロックされると云う理解なのでしょうが、安全とは思いません。でも、ハンドブレーキを掛けていない車がほとんどです。坂の多いサンフランシスコ市内では坂の途中で路上駐車する場合、ハンドブレーキを掛けて、タイヤが歩道の縁にあたるようにハンドルを切っておかないと駐車違反になるとの話も聞きますが、実際のところは分りません。ハンドブレーキを一度も使ったことがないドライバーも多いと思います。

5.方向指示器を点けない人も多い

 これは細かな意味では、違反だと思います。運転免許の実技試験で、右左折や車線変更方時に方向指示器を出さないと、試験は確実に不合格になりますし、試験時には方向指示器が使えない場合に備えて、最初に手信号を知っているか?否かの試験があります。しかし、試験と実際は一致しないもの(?)。左折のレーンに入った場合には左折するのが当たり前と云う理解だと思いますし、右折レーンに入れば同様と云う訳で、交差点で、各レーンに入ってしまった後、方向指示器を消してしまいます。良く見ていると警察車両でも方向指示器を点滅させていないこともあります。ハイウエーでも混雑している時には走行レーンを変更する時に方向指示機を使うのですが、ちょっと空いてくると、やはり手抜きをするようです。

6.ドアを開ける時に隣の車を気にしない

 これは一番不愉快なことなんですが、駐車してドアを開ける時に勢いよく開けるので、隣の車のボデイーにドーンと当たってしまうことがよくあります。日本だと大抵のドライバーは隣の車のボデイーにドアが当たらぬように、かなり気をつけてドアを開けると思うのですが、日本と比べれば、隣の車とのスペースは人の乗り降りに充分な間隔がある筈なんですが関係ないようです。ですから新しい車でも何処かで、ドアに当てられて凹みを作っている車が実に多いこと。3〜4年間車を使うと、もう凹みだらけになってしまいます。凹ませたくない場合は大型のアメ車の2ドア車の横になるべく駐車しないことです。あの重量のあるドアにドカンとぶつけられると日本車のボデイーはひとたまりもありません。いくら注意して小型車の横に停まっても、その車が動いた後に、大型のアメ車の2ドア車が停まってしまったら不幸です。

7.フロントガラスの割れを気にしない

 駐車中の車のフロントガラスを見るとけっこう多くの車のフロントガラスに大きな欠けやひびが入っているのに気づきます。特にピックアップトラックなどフロントガラスの傾斜が少ない車に多いと思います。これも安全上問題ある筈なのですが、気にしていないのか?交換に行くのが面倒なのか?原因はダンプカーや大型建設車両を積載するフラットベッド型のトラックが走行中、バウンドする度に小石を落としていくことが原因のようです。日本の場合はダンプカーの荷台に幌がかかっていたり、現場で車両についた土や泥を洗車して、道路に出ていくようですが、こちらではどうも、そのような配慮が無く、ハイウエーで、これらの車両の後ろを走ると、砂や小石がフロントガラスにパチパチ当たることがあります。日本と比べると大型トラックの運転マナーは遥かに良いと思うのですが、この土砂を撒き散らすのは困りものです。それとハイウエー上に良く物が落ちているのも困ったもんです。

8.停車中の化粧

 これは朝の時間帯にあちこちの交差点で見かける光景です。信号停車中のわずかな時間の間にサンバイザーの鏡やバックミラーを利用して、化粧をしている女性ドライバーが多いことです。短時間の停車なのに実に見事なラインを引くような細かい化粧の作業をしているのですから驚きです。あまり格好良いとは思いませんけれど、実に多くの女性ドライバーが毎日やっているんです。

9.タバコのポイ捨て

 とても嫌な感じがします。その昔は、こんなことをするドライバーを見かけなかったので、運転マナーの良い国だなーと感じたものでしたが、最近はタバコのポイ捨ては大変増えています。タバコを吸いながらの運転は本人の問題なので、とやかく言うこともないのですが、火を消しもせずにタバコを簡単に窓の外に捨ててしまうのです。冬を除いてカリフォルニア州は大変乾燥していますから、ハイウエーの土手の枯草に、ポイ捨てのタバコの火がついて起こる火事が夏は頻発しています。これはアメリカ人の運転マナーが確実に落ちている証拠のような感じがしますし、運転中にポイッと捨てる場面を見ると実に不愉快なものです。

10.ゴミ箱車

 これは運転そのものではありませんが、日本で見る車は外も内側も綺麗にしています。アメリカ人が日本のタクシーに乗って、その室内の綺麗なことに驚くと言います。アメリカ人はタクシーの中は汚れているものと思っています。アメリカのタクシーは車両も古く、パトカーの中古車両やポンコツ車の一歩手前と云ったタクシーも多いと思います。こちらでも無論綺麗にしている車も多いのですが、買ってから一年間、一度も洗車したことが無いなんてことを平気で言う人もいます。車内にはハンバーガーを買った時のゴミや袋、飲み物を入れてあった紙のコップやストロー。タバコの空箱に、開封した郵便に古新聞に古いチラシ広告、ハイキングに行った帰りに脱いだ靴下に洗濯物、コーラの空き缶等など、こりゃ!車の中で生活しているのでは?と思うような車を時々見かけます。ほとんどの個人住宅には屋根付きの車庫があるのですが、車庫の中は使わないで家財道具が山になっていて、車を入れることが出来ずに雨ざらしと云うもったいないような使い方をして、洗車をしてもワックスがけなどしたことがないとか、掃除機をかけたことが無いなんて車も珍しくありません。車検の無い国なので、一度車を購入すると10年間ぐらい同じ車を使う人は珍しくありませんが、やはり傷みやすいのは塗装ですから、塗装がはげた車も多いと思います。

以上あげましたのはどちらかと云うとマイナス面のものが多いのですが、マナーが悪くなったとは云え、良い点も沢山あります。その筆頭が割りこみに対して非常に寛大なこと。横から割りこむ人に対して怒るドライバーはあまりいません。次ぎにハイウエー上ではあまりスピードを出さないことです。制限速度を大幅に超えるようなスピードで走る人は少ないと思います。

それではまた。

岩間@サンノゼ