感謝祭の連休の後半です。自宅では子供たちが帰省で戻ってきた以外は特別なこともありませんけれど、家族が皆で食事をすると云うのが感謝祭のすごし方のようです。親子の関係がドライと云われるアメリカで、唯一長く続く習慣のような気がします。
ちょうど日本がバブルの全盛期でアメリカ経済が著しく停滞、日本企業がアメリカ国内で派手な活動をしていた当時、教育専門家はアメリカの教育システムの中で初等中等教育は崩壊寸前であり、日本の教育システムを見習うべきだと云うような考えをしてました。アメリカ国民自身もその自信を失いかけていた時期でした。それでも大学以上の高等教育に関して、多くの専門家達は日本の教育に学ぶところはない。日米の教育を比較するとアメリカには優れた高等教育システムがあると自負していました。それだけアメリカ社会そのものもアメリカの大学システムに対しては強い信頼感を持っています。
今日も前回の話題の続きとして開かれた大学の話をさせてください。サンノゼ市のほぼ中心部に位置しているのがサンノゼ州立大学です。カリフォルニア州内の実務教育型大学としては規模も大きく良く知られた大学です。学部と大学院を加えると学生数は2万4千人を超えています。
一般に大学生の支払う授業料の区分としてフルタイムスチューデントとパートタイムスチューデントがあります。フルタイムスチューデントは簡単に云えば100%学生家業の学生のことで、学期内の最低取得単位数が大学から決められていて、その単位数以上の科目を期間内に取得しなければいけません。授業料は定額です。一方のパートタイムスチューデントにはこの制限がありませんから、仕事をしながら自分が消化できる科目数を習得していく学生で、授業料は取得科目の数で支払うことになります。
さてサンノゼ州立大学のような実務教育型大学の場合は一般的にパートタイムスチューデントの学生比率が非常に高く、サンノゼ州立大学の場合、約40%程度の学生がパートタイムスチューデントにあたります。如何に社会に出ながら勉強している人が多いかと云うことです。
大学はこれらの学生が最大限科目を取り易くする為、日本の大学と比較にならぬほどの多くのクラスを、一日の長い時間をカバーする形で開いています。講義の一番早い時間帯
は朝7時から、一番遅いものは夜10時からと云う具合です。同じようなシステムは大抵の公立大学で実施されています。
次にサテライト講座の設置です。カリフォルニアの州立大学ではExtension とかProfessional Center と云うような名称が大学に応じて使われています。理由は大学本部のある場所が必ずしも大きな街中にある訳ではありません。勉強をしたい人達の為に大学が社会人の多い場所、通勤途中の便利な場所に、大学の出先教育機関を作っています。この出先機関の教育の狙いは社会人がより高度なレベルの勉強をする為のものです。
従って、講義の内容も一般教養的なものはなく、専門技術者が最新の技術を勉強したり、より専門的な内容を習得する為のクラスです。最近はIT業界で通用する資格を取得する為の集中講義的なクラスも沢山開かれています。目的上、講師は大学の教授よりも、むしろ企業で活躍する専門家の方が多いように思います。このサテライトクラスの受講は、その大学に所属する学生である必要はありません。あくまでも一般人が対象です。これらのクラスを最後まで習得して試験をパスするとその大学の正式の単位として認められるものと修了証と云う形で、公式に学習を認めてくれる2種類があります。
サンノゼを中心とするシリコンバレーの中では複数の大学がサテライトクラスを開講していますし、地域内の要所要所の複数箇所にサテライトクラスを持つ大学もあり、それらの拠点を利用して、遠隔地の大学が異なる科目を同じような形で教育に利用している等、単一の大学の組織や施設の枠を超えた形で、勉学を希望する人達に高等教育を提供する体制は非常に充実しています。
逆に云いますと、アメリカでも歴史のある企業は別ですが、シリコンバレーのようなベンチャー企業は社員を教育して実務に就かせると云う習慣がありません。入社イコール即戦力ですから、企業として明日から仕事が自分でこなせる人しか採用しません。また年功序列の考えは全くありませんから、自らこれらのシステムを利用して能力開発をはかるか?もしくは毎年、自分ではっきり上司に自分の成果を証明できぬ限り昇給もおぼつきません。そんな背景から技術者や管理者は絶えず何らかの能力アップにつながる努力を会社以外の場所で行う必要があることから、これらのシステムの必要性は今後もますます高まると思います。
特にIT産業に関しては必要な人材を大学から送り出すことは数の上で到底困難であり、現実はこれらのサテライトクラスが多くの人材を育てていますし、斜陽になった産業の技術者の再教育の場として、専門の変更をはかる人達や一般職から専門職に変わりたいと思う人達に対し将来の機会を作り出す場として重要な位置を占めています。
さて、大学生に夏休みはありますが大学には夏休みはありません。夏休みの期間も大学は多くのクラスを開いています。目的は夏休みの期間も休まずに単位を取りたい学生の為にクラスを用意する必要があるばかりでなく、大学によっては夏休みの間は空いている学生寮を利用して各地からの高校生を多く受け入れています。だれでも入学できると云う訳にはいきませんが、高校の推薦などを受けた高校生があちこちから集まり(もちろん授業料も寮費も取られますが)、大学生と一緒に自分の選択した科目のクラスを受けさせるのです。高校生にとっては自分の志望する大学を3ケ月と云う期間を通じて、実際に勉学と生活体験ができるわけです。無論、試験の結果が良好であれば、そこで勉強した科目は単位として認められますから、大学に入った後に再び同じ科目を勉強する必要はありません。
また、夏の間に海外からの学生を多数受け入れ、短期の語学研修のクラスを開く大学や、大学施設を開放して民間スポーツクラブの合宿などに利用させたり、その応用範囲は
多彩です。
最後は勉強とは直接関係ありませんが、常時、大学構内への立ち入りは一般市民にとって自由であることです。ですから大学には門柱はあっても門の扉はありません。カリフォルニア大学の中には大学の敷地面積だけで、その市の面積の半分以上を占めているところがあったりするくらい、その規模は日本の大学とは比較になりません。従って大学構内そのものが、市民にとって散歩やハイキングに持ってこいと云うところも少なくありません。無論、レストランや書店、図書館なども利用できます。端的に云うと、大学は特別な世界でも、特別な存在でもなく、広くそこで暮らす人々の中に定着した存在で、その利用の仕方が人によって異なるだけと云うことだと思います。
それでは
岩間@サンノゼ
写真:サンノゼ州立大付近の路地商店街:平日は多くの学生が通行しています。
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