岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(110)電気が足りない」(12月17日)

 15日の金曜日、東部の町フィラデルフィアから戻ってきました。フィラデルフィアはアメリカ建国上の出来事の多くに関係する町で、合衆国建国後の最初の10年間、アメリカの首都が置かれていた町です。実際に仕事で出かけた町は、そこからハイウエイーを2時間ほど内陸側に走ったランカスターと云う町でした。この町はアメリカの中でアーミッシュと呼ばれる人達が生活する所として知られています。

 アーミッシュはもともとアランダ系の移民者の人達がルーツらしく、農業と木工家具作りなどで生計を立てていますが、近代文明の象徴である電気のある暮らしとか自動車の利用を否定して生活している人達で、男女共に白か黒の伝統的な衣服を着て生活しています。したがって、農耕にも馬を利用し、遠距離の移動には馬車を日常使っています。そんなことから町のいたる所の道路には、馬車に注意!の道路標識が出ています。滞在中は冬の嵐の通過時期でしたが、大雪にならず、道路も閉鎖されることが無く、無事仕事を済ませることが出来ました。しかし、時差の関係で3時間も早く仕事を始め、同じ日の夕方にフィラデルフィアからサンフランシスコに戻る6時間の飛行機はやはり疲れますね。

 17日の日曜からは東京に出張ですが、その前に「アメリカ暮らし」を送りたかったので、簡単ですが電気が足りない話題を送ります。

 エネルギーを世界一贅沢に使う国はアメリカだと思います。エネルギーは水とは云いませんが、この国は石油も天然ガスも比較的安価に手に入れることが出来、オイルショックの一時期をのぞけば、エネルギー価格は過去非常に安定していたことから、普段の生活の中で、そのコストをさほど意識することもありませんでした。しかし、昨年からじわじわ上昇してきた原油価格の影響をもろに受け、今年に関して云えば、私がアメリカで生活を始めて以来、一番高いガソリンを使っていることになります。現実には各州の間で、ガソリンに掛かる諸税率が異なることや、需要の大小の差で、ガソリン価格の地域差も大きいのですが、それでもアメリカ人は今、ガソリン価格を意識し始めています。それでも、ガソリン価格の方は秋ごろから価格上昇の峠は過ぎて今は高値安定と云った感じがします。

 ところが今年の夏ごろから予想もしてなかったカリフォルニア州内で電気が足りないと云う問題が表面化してきました。電力需要のピークは日本同様にエアコンを利用する夏に生じると思っていたのですが、好景気に乗ってカリフォルニア州内の企業の操業度が高いこと。仕事を求めた州外からの人口の急激な増大による自然需要の増大に加えて、夏時間が終わって生活時間が1時間遅く進める標準時間の生活に入ったところ、企業の操業電力需要と日没が早くなったことによる家庭需要の重複によって、電力の需要増加に対してその供給が追従できない状態が起こり始め、ここ1〜2週間の毎日、カリフォルニア州内の消費電力はほぼ供給の限界に達してしまい、いつ停電事故が起こるかもしれないと云う危機的な問題に直面し、州や連邦政府でも大きな問題として取りざたされ始めました。

 問題の発端は特定の電力会社による電力事業の独占を防ぎ、電力事業に競争原理を導入することによって消費者がより安い電力供給可能にすると云う意図から1996年に電力事業の規制緩和が実施されたことにあります。当時はカリフォルニア州内の景気も悪く、電力も需要に対して供給が大幅に上回っている時期でした。電力会社は発電事業そのものを切り離し、発電事業はその部門を売却したり、ひとり立ちさせた企業としてきました。結果として北カリフォルニア地域一体に電力を供給するPG&Eと云う会社はそれらの企業や、他州から電力を購入、その電力を一般に配給しサービスする企業に変わりました。

 従って発電事業そのものも採算性を重要視し、不必要な新規の発電所の建設には慎重になり、生産性の低い発電施設は廃棄するなどのコストダウンを実行していきました。ところがその後、カリフォルニア州の景気の回復と共に電力需要は増加したのですが、不足する電力は周辺の州の発電所から電力を購入することでまかなってきたのですが、電力も商品ですから需要が増えて供給が増えなければ売る電力の値段も上昇すると云う訳で、今年に入ってから家庭で使う電気料金はジワジワと上昇を始めました。もちろん需要があれば、その供給も事業になる訳ですが日本のみならず発電所建設に対して地元の反対は強く、北カリフォルニア最大の電力需要地であるサンノゼ市郊外に大型火力発電所を建設する計画は議論はされるものの反対が多くて実施に移せない状態です。同様に、州内の建設予定地ではどこも同じような問題を抱えていて、電力供給が大幅に改善される目処が立たない状況です。
連邦政府はこの危機的な状態に対し、カリフォルニア州に対し、他の州の発電所から

 安定した電力量を適切な価格で供給するように求め始めていますが、逆に云えばこれは規制緩和に逆行するような動きにもなりかねず、解決の特効薬がない状態で毎日を乗り切っています。州としては既に大口需要家に対して節電を呼びかけると共に、家庭に対してもクリスマス用として自宅をランプで照明するイルミネーションの点灯を夜の8時以降にして欲しい等と云う広告を記載したり、電力危機を訴える広告を打ち始めています。消費者保護の為の規制緩和の結果が消費者に高い電気代を支払わせてしまっていると云う妙な問題を起こしてしまい、州民としては何とも納得できない結果になっています。

 同様な問題は家庭に供給する天然ガスも抱えており、カリフォルニアの消費者はガソリンに続く、電気、ガスなど高価格になったエネルギー問題に直面しています。かってはガソリン代は日本の4分の1、電気代も3分の1以下と云われ、生活にふんだんに使われたエネルギーですが、次第にアメリカ人もその生活習慣を変えていく時期に入ったのかもしれません。
それでは!

岩間@サンノゼ