岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(116)規制緩和続編」(01・1・29)
 

 カリフォルニア州の電力不足問題は先の2回の計画停電実施以来、毎日ぎりぎりの供給水準で何とかしのいでいるようです。現在、州政府が不足電力分を支払い能力の無い地元電力会社に肩代わりして州外から購入していることと、連邦政府の強い指導で余剰電力をカリフォルニア州に優先的に割り振ることが決められたこと、州内の古い発電設備を再稼動させて不足分を若干でも補おうとしている等の処置で、綱渡りのようですが停電の事態だけは避けています。電力会社もさることながら州政府への不満も増しているだけに計画停電の実施と云うのはイメージ的な悪影響が大なので、その批判をかわす意図も働いているように思います。

 ただ州政府が用意した当面の対応策の予算では2週間程度の不足電力を購入できる程度の資金でしかないこと。連邦政府の指導も2週間程度の期限付きのもので州の問題は州政府で解決するよう強く求められていること。緊急に再稼動させた古い発電施設はこれまた公害対策に金が掛かりすぎると云う理由で停止された設備であり、そのまま継続使用した場合は環境問題を新たに引き起こす等、問題を抱えたままです。

 恒久対策として州政府が州債を発行、支払い能力の無くなった電力会社の債務の肩代わりをして、電力会社の与信力を引き上げることによって不足電力を有利な価格条件で購入
できるようにする案が最も有力なようで、将来、対策が講じて電力会社の株が上がった場合、州政府はそれを売却して売却益も得ると云う筋書きです。ただこれは州政府が電力事業に関わる訳で、云わば電力事業が州政府によって半公営化される訳で、一時的(?)でも、結果的には全く逆の方向に動き出すことになります。州の税金を使う見返りとして向こう10年間電気料金を据え置くと云う話になっていますが、本当に出来るのか?どうか?です。

 もう一つの問題は電力問題で陰に隠れ、ニュースでは取り上げられていないのですが、電気代以上に家計に響いてくるのが、家庭用の家事や暖房に利用されている天然ガスの
不足です。実は私の暮らす地域の電力会社PG&E社は電気と天然ガスの両方を供給している会社です。

 電力問題同様に天然ガスに関しても、その元売先は支払いが滞っているPG&E社に対して供給を渋っており、天然ガス自体の価格高騰もあることから、こちらは今月から大幅な値上がりとなって跳ね返っており、届いた請求書を見て、その料金の大幅なアップに驚く家庭が多いそうです。私の家ではまだ請求書が届いていないので、いったいいくらになるのか?大変気になる訳です。いずれにしても州政府として断行した規制緩和の失敗のつけが州民に回ってきてしまった訳です。

 さて話は変わりますが、もろもろの規制緩和で今は大恩恵を受けている分野もあります。その典型的な例が国際電話です。一昔前、国際電話の料金はとにかく高く、会社はともかく自宅から日本に国際電話をする場合、その通話時間が気になり、電話をしながら電話機の横に時計を横に置いて、まだ大丈夫と云う具合で電話をしたり、午後8時以降の夜間割引を利用する為、あえてそれまでの時間に国際電話をするのを待っていたのはそれほど昔の話ではありません。ところが規制緩和によって多くの会社が国際電話事業に参入できるようになってからは国際電話は驚くほど安価なものになりました。

 驚く無かれ今は電話をする時間帯に関わらず、複数の国際電話会社が日本への国際電話料金として1分間12〜15セントのサービスを実施しています。更に一回の国際電話を10
分間以上続けると長電話歓迎と云う訳で更に料金の割り引きを行うサービスを売り物にしている国際電話会社もあります。つまり日本への国際電話が一分間で20円以下で済むと云う値段ですから、国際電話の方がアメリカ国内の長距離電話より遥かに安いと云う訳です。

 このサービスは日本向けだけで無く、多少の料金差はあるものの他のアジア諸国、南米、ヨーロッパにまで広がっており、外国語放送を実施しているテレビ局のコマーシャルにはこの電話サービスのスポット広告が良く出てきます。これらのサービスを行う国際電話を利用する場合、利用者はその国際電話会社と特別な契約を結ぶ必要は無く、相手の電話番号をダイアルする前に、国際電話会社を選ぶ7桁の番号を先にダイアルするだけで利用できます。この7桁の番号も非常に覚えやすい番号が選ばれていて、実はテレビのコマーシャルを見ている内に自然に覚えてしまうようような番号です。たとえば1010345とか1010220のような番号です。

 例えば私の自宅から大曲市内のどなたかに、これらの国際電話会社の一つを利用して電話をしようとすると 1010345−01181−187−6X−XXXX となります。1010345は国際電話会社の選択、011はアメリカから国際電話を利用する番号、81は国際電話に措ける日本のカントリーナンバー、187は大曲市の市外局番(最初の0は入りません)、以下は電話番号と云うことになります。多少長いダイヤルですが一分間10数セントの料金になると思うと抵抗はありません(笑)。

 以前に話したことがあるかもしれませんが、こちらでは市内通話を除き(市内通話は定額料金を利用する家庭が多い)、市外電話を利用した場合、全て利用日時、相手先の電話番号、利用時間、利用単価、料金が毎月の請求書にリストとして印刷されて届けられます。これらの国際電話会社を利用した場合でも、地元の契約先の電話会社の請求書の中にその国際電話会社分として利用明細と料金が印刷されてきます。その料金の差は歴然で、地元契約先の電話会社にとっては不利な情報を提供することになる訳ですが、それがアメリカです。

 国際電話に関する限り、現時点では少なくとも自由化によって多くの新規参入があり、競争原理が働いて、消費者にとっては非常に魅力ある利用料金になっています。ただ一連の自由化の結末を見ていると、独占的であった事業に対して、自由化によって多くの会社がその事業に参入し価格競争が起こり、一時的には消費者に有利な環境が出来上がる。しかし、その競争の中で体力的についていけない会社が現れたり、事業自体を商品にする会社が現れる。次にそれらの会社を買収して大きくなる会社が出現し、最終的には元の独占に近い形に舞い戻っていて、消費者にとっては元と同じ環境か、自由化によって政府が価格統制出来なくなってしまった分だけ消費者にとって逆に不利な環境になりうることもあると云うのが
実感です。

 特にアメリカの場合、会社の吸収合併や売却は必ずしも弱者吸収のシナリオでなく、会社経営者にとって、会社そのものが商品であると云う考え方で、甘みのありそうな分野で会社を興して、それを適度に成長させ、適当な付加価値が出てきた時点で、その会社を売却してその売却益を得ると云うのも一つのビジネスですから、よりその傾向が強くなるような感じもします。

岩間@サンノゼ