岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(131)ある倒産」(01・09・03)

 日本の景気は何処まで落ち込むか?底が見えない状況のようにも感じますが、アメリカも、これまで景気を支えてきたIT産業が完全な凋落状態で、竹の子のように増えたドットコム企業と呼ばれるインターネットを利用したサービス企業の多くは、既に消えうせてしまったのですが、昨今はIT関連の大手企業の倒産が目立ちます。

 地元新聞の経済欄にも、時々倒産が危惧される企業の記事が記載され、A社は50日以内に新たな資金が注入されない限り、キャッシュショートに陥るとか、株価がピーク時の50分の1に下がってしまい、今は一株1ドル以下、この状況は30日続くと株式市場から除外される等など、倒産候補(?)の会社リストが紙面に並んでいます。

 株式公開会社に対する会社経営情報の開示原則が非常に厳しい国ですから、経営者も会社に不利益な情報だからと云って情報を隠すことはイコール犯罪になることからその状況を
素直に発表し、これからどうする?と云うことに関して、手を打っている内容も事細かに説明するのはアメリカ企業の良いところです。

 しかし、いつも不思議に思うのですが、日本企業のこの種のニュース発表と云うのは非常に暗いムードの中で、ぼそぼそと用意してきた紙面を読むだけの発表と、おざなりの質疑で終わってしまうのですが、少なくともベンチャー企業経営者はもちろん楽しくは無いでしょうが、役者が一枚上なのか?発表していても、質疑に応じていても、悲壮感とか、暗いムードを表面に出さないのも特徴です。

 もう7年ほど前になりますが、私自身もある会社の役員会のオブザーバーとして企業倒産に直面したことがあります。この会社は発足して3年、まだ未公開株企業で、従業員数は250人ほどでした。その会社の技術と製品にはなかなか魅力あるものもあり、当時、私の勤めていた会社も相当額の出資をしました。そんなことからこの会社の経営状況を常に把握する必要はあるけれども、直接経営には参画したくないと云うことで、役員会に参加は出来るが、発言権と投票権はないオブザーバーと云う立場で、毎回の役員会に参加していました。

 ベンチャー企業の場合の役員は大体、数名の会社幹部と投資家の代表メンバーから構成されています。会社がおかしくなってくると、役員会の上に特別委員会と云う組織を作って法的にもこれが会社の最高意思決定機関になります。ただ、この組織は会社経営者よりもむしろベンチャーキャピタル等の投資家主導で運営される為、必ずしも会社の経営者や社員の
意思が意思決定に反映する訳ではありません。

 兎に角、倒産直前に至るまでに、何回も役員会が開かれ、与信枠を小さくして貸し出し資金の引き上げを狙う銀行に対して待ってくれと云う交渉や、新たなに貸し出しになるような銀行との条件交渉や新たな出資先として彼らが他のベンチャーキャピタル先に資金を求める活動や、主要な債権者に対して、支払い期限の延期を求める等の全て手を尽くしたけれど、
良い方向に向かう可能性はなく、会社の資金も底をついて、これ以上、会社を生かすと社員の給料の支払いも出来なくなると判断し、私も出席して最後の役員会を開くことになったのですが、役員や弁護士など会議参加者が全員集まる迄の間、結構、皆、新しく買った車がどうのこうのとか、和やかに世間話なんかをしているのです。この雰囲気が日本と違い過ぎる!と妙に印象的でした。

 全員が集まったところで、特別委員会の議長が、状況を簡単に説明し、会社を倒産させる以外の手段は無いこと。日本の会社更生法に該当するチャプター11を破産裁判所に申請したいと申し入れ、参加メンバー全員の評決となり全員異議無し、賛成!では、会社更生法の申請を行います。また現在の役員全員は辞任をしますと云うことでこの会社の最後の役員会は終わりました。

 この結末でベンチャーキャピタル各社は、これまでに提供した資金は株になっているものの、この倒産によって株は全ては紙くずと云うことになるのですが、彼らの印象は愉快では
ないけれど、それほどのショックも悲壮感も無いと云う印象でした。最もこんなことでいちいちクヨクヨしていたら、ベンチャーキャピタルは勤まらないと云うんでしょうけれど。

 ベンチャーキャピタルが企業に投資、それの成功率は4社に1社ぐらいだそうです。つまり、一般投資家からの資金を集めて、それをベンチャー企業に投資するのですが、他の財テクよりも遥かにリスクは高いのですが、成功時には非常に有利になる株を得て、数年後に投資した会社が成功して株を公開できればその株の売却益を得て、それを投資家に還元すると云うビジネスです。そんな背景から彼らは自らが投資した会社の倒産に対しても、かなりクールな立場でいられるのかもしれません。

それではまた。

岩間@サンノゼ