「殺人ドライバー くるま社会ニッポンのタブー」
交通事故はアクシデントではなかった=日常に潜む危機(9月17日)
交通事故によって年間1万人もの人命が奪われているニッポン。果たして交通事故はその名が示す通り“事故”であって、暴力犯罪とはまったく異質のものと捉えていいのだろうか。交通事故の背景にメスを入れ、「人身事故を繰り返す人間は決まっていた」と悪質なドライバーの存在の実態を明らかにし、それを野放しにしている日本の車優先主義社会の警察・行政・メーカーの怠慢を問う「殺人ドライバー くるま社会ニッポンのタブー」が、WAVE出版(東京都千代田区九段南2−4−9)から発刊された。著者はモータージャーナリストの沼澤章氏。
著者はまず8年前のあて逃げ事故で免許取り消し処分を受けた30歳の男が、そのまま無免許運転を繰り返し、しかも酒気を帯びながら深夜、車検切れの車を運転し、パトカーの追跡を振り切って暴走、2人の若者の命を奪った事件を取材する。平成12年4月9日午前2時ごろに発生した神奈川県座間市の事故である。
警察の交通検問を目にした男は無免許に酒気帯び、そして車検切れの車を運転しているのがばれたら間違いなく逮捕されると恐れ、逃走を図る。車の不審な動きを察知した警官はパトカーで追跡。「捕まったら刑務所行きは確実だ」と制限速度を60キロオーバーの時速100キロで逃走する車は、緩いカーブを描いている橋の上でスピンし、歩道を歩いていた19歳の大学生2人をはねて死なせてしまう。車検切れの車となれば保険さえも効かない。これこそ悪質な交通犯罪だが裁判の結果は、業務上過失致死罪に科されただけで懲役5年6月である。
大切な息子を奪われた側の母の一人は悪質な交通犯罪者に科される量刑の引き上げを求める法改正の運動を展開する。そして著者は警察庁が発表した交通安全白書、法務総合研究所が交通事犯で刑務所に収容された交通犯罪受刑者と保護観察付執行猶予の言い渡しを受けた人へのアンケート調査結果などを詳細に分析。さらに全国交通事故遺族の会の会員560人からもアンケート調査を行う。回答を得られたのは143件だったが、そのわずか143件の中に過去に死亡事故を起こしたことがあるという加害者が4人もいて、そのうち2人は過去に2回も死亡事故を起こしているという実態が明らかになる。著者の友人で保険代理店を営む人が「交通事故を起こす人間は決まってるんだ」と言った言葉を裏付ける「殺人ドライバー」の存在がアンケート結果で明らかになる。
そして著者はそうした危険なドライバーを放置する社会システム、警察の交通取締、ずさんな事故調査など警察、行政、車メーカーの怠慢を訴える。「人間を轢き殺した者が、平気でまた免許を持ち、車に乗り、再び人を轢く。こんなことが許されるのか!」。渾身の怒りと犠牲者の悲しみが伝わってくる交通戦争の背景にメスを入れた問題作だ。
著者の沼澤氏は本紙に寄せたメールで「加害者の実態(特に累犯者の存在)に関してまとめたものとしては、公的資料も含めて本書が日本初ではないかと自負しております。もうすぐ秋の交通安全週間。そして、悪質交通事犯者に対する量刑引き上げの審議も始まります。お読みいただいた遺族・被害者の方からは『交通事故を知るための教科書。いままであったどの事故関連の本よりも、事故の本質を捉えている』という評価をいただいており、今後の展開に期待を抱いているしだいです」と語る。定価は1600円プラス税。
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