石木田一彦さんからの投稿(6)「フィリピンでのひとこま」(01・10・8)
 

 昨年初めてマニラへ行ったとき、空港のトイレの屋根がなかった。聞いたらテロで爆破されたという。

 車は日本製が多い。特にホンダが目立った。バイクも同様にほとんど日本製。ジープニーはスズキのエンジンを使っ
た改造車。最大で20人近く乗車(定員は18人)でき、市民の足でもある。1ペソは変動するが3円ほど。両替所でかな
り異なる。ホテルが料率が悪く空港がやはりいいようだ。

 中心を離れるにつれて貧富の差を感じ始める。川べりで生活する人、崩れかけた家にごみ袋を山積みしてその中
をあさる人…それでいてゴルフコースのある庭をもつ超高級住宅地もある。平均月収1500万円くらいという。

 いよいよ仕事先のモンテンルーパ刑務所へ。そこには印刷工場がある。6000名の囚人のうち、常時1500人から
2000人が交代で働く。主に日本向けの「のし袋」と「正月飾り」を1台2億の印刷機械2台と5台の断裁機、100近い
各種関連の機械が並ぶ。

 手作業と近代設備が、圧倒的な価格競争力を生んでいるわけだ。経営は韓国の財閥が行っている。

 見学して工場を回ると、囚人は手を動かしながらこちらを一斉に見る。半数は入れ墨をしているので、最初はこわ
かった。数回見学するうちに、日本人の囚人と知りあいになった。麻薬と詐欺でつかまった彼はマネージャーにな
っている。理由は漢字とタガログ語、英語を読み書きできることにある。フィリピンでは漢字は記号にしか見えない
ので、時々逆さにしてしまうようだ。つまり検品係として重宝らしい。

 刑務所の周辺は囚人の家族が集落をなしている。女性(奥さんか?)と金網越しに泣きながら別れを惜しんでい
る光景を見た。この広大な場所はひとつのコミュニティをなしている。

 さて、腑に落ちないことがあって聞いた。「フィリピン人は手先も器用だし、いろんな言語も覚えている。すごいね。」
返答、「そう、優秀な国民だね。でも怠け心がマイナスね。」昔は後進国とか、発展途上国として遅れた地域として
とらえていたのだが、優秀な遺伝子をもっているし、潜在的なパワーがありそうだ。問題は国家としての整備や、
経済の基盤にある。今後楽しみな国なのかも。

 そういえば、ある日本人経営者が「中国や東南アジアに工場をシフトしているけど、賃金が安いからという理由は
過去の話、そこそこ賃金も高くなっているし、要は日本人より賢いし、いいものがつくれるようになったからさ。」…
日本の経済の低迷に見落とされている問題の本質を感じる。経営者は総力を挙げて社員のスキルアップに再投
資すべきなのだ。