岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(142)ニューヨーク」(01・12・16)

 ニューヨークでの連続航空機テロ事件からちょうど3ケ月。偶然その時期にニューヨークへ出張することになりました。私自身、今年はアメリカ国内の出張が少なく、アメリカ大陸を横断する出張も久しぶりでした。

 あの世界中を驚かせた事件をアメリカ人が忘れることは無いでしょうが、彼らは何時までも感傷と憎悪を抱きながら暮している訳では無く、本質的には楽天的で明るい人たちですから、その回復も早いように思います。今日は年末のニューヨークの様子を少し書かせてください。

 大晦日のカウントダウンが行われるタイムズスクエアーの夜景サンノゼ空港からニューヨークJFK空港までは直行便で5時間半ぐらい必要です。それに時差の3時間を加えると見かけ上、8時間半の旅になります。日照時間の短い冬の季節は、朝、薄暗い時刻にサンノゼを出発。その日の夕方にニューヨークに到着する訳でなのですが、移動の為に一日費やすことになってしまいます。

 この移動時間を節約したい人にとっては、夕方まで通常通り仕事をして、夕食後に空港へ向かい、午後11時過ぎに西部地域を出発する深夜の直行便があります。機中で寝て、ニューヨークに翌朝7時半ぐらいに到着しますから、移動の為に一日を無駄にせず、朝一番からニューヨークの訪問先との仕事が出来ることになります。

 ただ、普通は機内で熟睡できる人は少ないでしょうから、睡眠不足の為、到着時には乗客の目は真っ赤になっていると云うことから、この便を通常レッドアイと呼んでいます。深夜便と云えども、料金が安い訳でもありません。しかし、レッドアイ便は結構、人気があり、乗客で込み合うことでも知られています。昔は私もけっこう、この便を利用したことがありますが、今はその元気は完全に無くなりました(笑)。

 我々の云うニューヨークとは高層ビルが並ぶ、イーストリバーとハドソンリバーに囲まれたマンハッタン島のことなのですが、このマンハッタン地域は田舎から出てきた人達にとって、不思議な魅力を持っています。

 道路は車で溢れ遠慮をしていては車など運転出来ない。高層ビルの谷間は昼でも薄暗い。人は事務的であまり親切でなく、物価は高いし、町もさほど綺麗でもない。妙な格好をした人たちが多く、治安もどうかな?と云う訳で、ニューヨークは嫌いだ!と云う理由を挙げると切りがないなんてこともありますが、一度この町に足を踏み入れると、やっぱり、ニューヨークだ!と感動してしまうから不思議です。

 全米9位か10位の人口を持つ大都市(?)サンノゼで暮す私ですら、ニューヨークに出かけると、やはり圧倒させられる何かを感じ、自分は田舎もの!なんて感じに浸ります。

 10数年前のニューヨークは、町全体の治安が非常に悪く、町の清掃が行き届かないことから、ちょっと裏手の道を歩くと、何となく不安を感じさせるような町で、大手企業の事務所が集中する一番安全度が高いと云われた地域でも、好んでホテルに宿泊する気になれない町でした。時にはホテル自体が安全でないような感じでした。町を走るタクシーですら治安の悪い地域を避けて、遠回りになっても、安全な地域の道を選んでいました。

でも、この10年間でニューヨークは本当に変わりました。アメリカの景気回復と、町の浄化を公約に当選したジュリアーニ市長が就任後、時には強権行使と言われるほど徹底して、この町を変えました。警察官を大幅に増やして治安を回復し、好ましくないと思われるような店舗を条例で縮小させて商売を諦めさせたり、乱立する露天商を歩道から一掃させ、明るくしました。

 狙いは世界中の観光客が訪れたくなるような町に回帰させることでした。今のニューヨークの回復は彼の不撤退決意で望む実行力によるところが大きいのですが、任期切れの数ケ月前に、あの事件が起きました。しかし、彼の迅速な対応と陣頭指揮ぶりはニューヨークの人たちに大きな感銘を与え、市長の法的な任期制限の2期を3期に変えて、再度市長に選ぼうと云う動きもあったほどです。

 さて、ニューヨークの町の様子ですが、町一番の繁華街であるブロードウエーや5番街はいつも以上に豪華なクリスマスのイルミネーションで飾られ、通行人や買い物客も多く、アメリカ国旗や、I Love NY のサインが、多い感じがする以外は、事件の影は感じられずいつものニューヨークに戻ったような印象を持ちました。

 この町はヨーロッパ方面からの観光客も多い町なのですが、私の滞在中も地図やガイドブックを片手にフランス語、ドイツ語を話して町を歩く人も目立ちました。ブロードウエー周辺はミュージカルやレビューショーを上演する劇場の集中する地域ですが、劇場の当日券が購入できるボックスオフィースで、各劇場の座席の売れ具合を示す表示を見ると、平日でも朝一番の時間帯でも既に5割以上の席が売れている状態でしたから、必ずしも悪い状況とは云えないように思います。

 アメリカの若い人に人気のあるブロードウエーのMTVのスタジオただ、ブロードウエイー地域の高級ホテルはいつもなら一泊350ドルぐらい請求されるのですが、今回は一泊250ドルで宿泊することが出来ました。やはり未だに空き室が相当数あるのでしょう。私が感じた明るいニュース(?)は事件以来ほとんどゼロと云われた日本人の観光客も少しずつニューヨークを訪れるようになったことで、毎夕方、日系の旅行代理店の社員が団体旅行客の為にホテルのチェックインカウンターで宿泊手続きをしている姿を見かけました。

 タクシーの運転手等と話をすると、会話の中で My Town とか My City と云う表現が良く使われます。さほど不思議な言葉でもないのですが、以前はそんなに何回も聞いた言葉かな?と云う感じを持ちました。おそらく、9月11日の事件以来、ニューヨークに関わって暮す人たちの間では何か暗黙の連帯感が生まれているような印象を持ちました。

それじゃ!

写真1:大晦日のカウントダウンが行われるタイムズスクエアーの夜景

写真2:アメリカの若い人に人気のあるブロードウエーのMTVのスタジオ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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