岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(148)回転鮨」(02・3・11)

 土曜日夜からは雨の天気になりましたが、もう、雨季の雨の冷たさはなく、やはりサンノゼの季節は春です。自宅の裏庭では椿やツツジの花が満開と同時にりんごや柿の新芽も膨らむ時期になりました。逆に辛いのは、この時期は雨季に成長した雑草の花粉が飛び散る頃で、車を屋外に朝、停めておくと、夕方にはフロントガラスにうっすらと黄色い花粉が積もっているのが分かるような状態で、花粉症に悩まされる人は、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目が痒くなったり充血したりのシーズンです。

 以前、日本の鮨が、アメリカの中で大衆化している話をしました。今やアメリカ国内で、鮨は一過性の食ブームで無くて、一つの食文化として完全に定着しているような感じがします。
最近はスーパーの惣菜売り場(こちらではデリと呼びますが)で、鉄火巻やきゅうり巻きをプラスチックのパックに詰めたランチボックス等(あまり美味しそうに見えませんが)が並んでいたり、中学、高校のカフェテリアで、同じようなものを、生徒の昼食用に売っているところもあります。値段も1パックが2ドル50セントから3ドルぐらいで、鮨としての質はともかく、まあ常食のハンバーガーセット並の値段で簡単に買えるようにもなりました。

 ここまで市場が広がると、鮨も今までのように、日本人鮨職人が鮨を握るものと云う常識も完全に崩れ、今はベトナム人、韓国人、中国人の人がカウンターで鮨を握ったり、日本食レストランを経営することも増えてきました。我々から見ると何か店内の雰囲気が違うとか、メニューに違いがあることに気づく場合もありますが、鮨として、中には昔からこのサンノゼにある日本食レストランの鮨とほとんど変わらぬくらいのものを提供してくれる店もありますが、酷い場合は明らかに鮨に使うような白く光るお米ではなく東南アジアで常用されている黄色い色をした臭いのある米や、粒の長い米を使った鮨、握り鮨では無くてイクラを鮨にする場合と同様に、ご飯の周りに海苔を巻いて、その上に諸々の食材を乗せた鮨(?)しか出てこないようなレストランに巡り合うこともあります。

 まず日本人の人たちは、その種のことに敏感で、おそらく知っていれば食べに行くことも無いと思うのですが?こちらの人たちには、それはそれなりに評価され、店もそれなりに客を集めています。アメリカの鮨は日本の鮨と同じ物と云う制約から解放され、ラーメンが中華料理のメニューに無いように、アメリカ流の鮨が近い将来出来上がるかもしれません。

 今回のテーマの回転鮨ですが、こちらでは鮨の皿を載せる回転する船から名前を得て回転鮨はスシボートと呼ばれてます。東部のニューヨークやカリフォルニアでも南のロスアンジェルスには、日系人口が多いこともあり、このスタイルの鮨店の進出も早かったようですが、我々の暮らす北カリフォルニアでは、7〜8年前、サンフランシスコ市内に最初の回転鮨店が出来ました。

 一般的にアメリカ人はレストラン行きの目的として、単に食事をする場で無く、炊事から開放されてリラックスしながら同席した人たちとコミュニケーションを図る場と考えるので、回転鮨のシステムのように、比較的狭い場所で、肩が触れ合うほどの座席間隔のテーブルに付き、目の前にある鮨を選択して、一通り食べておしまいと云うようなレストラン行きにお金を払うか?と当初は疑問にも思ったのですが意外にも受けています。その後はサンフランシスコから南下して、回転鮨店は広がりを見せ、現在、サンノゼ市内および近隣の町を含めるとその中に7軒ほどの回転鮨店が営業をしていますがどこも繁盛しています。

 規模的には50〜80人の客に対応できる店内で、一皿の値段は1ドル25セントから3ドルぐらい、日本同様、皿の柄で値段の違いが分かるシステムです。大抵の皿は1ドルか2ドル代で、3ドル代の皿になると鮨ねたの違いと云うより、加工に手間のかかるアメリカっぽい巻物鮨が多いような感じがします。どうも日本人の人たちは、こういう場所を敬遠しているせいか?お客の7〜8割は日本人以外の人たちでこれも特徴ですが、鮨の初心者(?)にとっては目の前で、食材を確かめることが出来ること、間違って口に合わない品を選んでしまっても、あきらめのつく値段であり、また別の品を選べること。鮨の皿が船に乗ってカウンターの前を回るような遊び心が、なかなか受けている理由のように思います。この回転鮨(スシボート)は、またアメリカ人の鮨文化をいっそう広げるのではないかと思います。
 

岩間@サンノゼ