石原敏郎さんのメルボルン日記(2)「人種のごった煮メルボルン」(02・3・25)

 随分前だが、こちらに住み始めて間もない頃トゥーラックという所に住んでいた。私は、ここと隣の町サウスヤラを称しメルボルンの
赤坂、六本木と言っている。しゃれた店やカフェなどが多く歩いているだけでも田舎の銀座感がある。余談だが、赤坂といえば私が
サラリーマンをしていた時の会社があった所だし、六本木交差点のアマンドという喫茶店には、昼夜を問わずお世話になった忘れら
れない所だ。

 ギリシャの富豪で、アメリカ合衆国大統領ケネディ夫人の間男オナシスが何かの本に人生で成功したければ、「たとえ、屋根裏の
どうしようもない部屋に住もうとも、場所だけは一等地に住め」と書いていた。それでトゥーラックに住んだという訳ではないが、ここは
金持ちの、しかも成金じゃない金持ちの多いところだ。所謂、羊の背中に乗って儲けたといわれる大富豪達だ。

 ある日、歩いていて30分間に5台のロールスロイスを見たことがある。人が金持ちであることを自慢しても仕方ないが、そんな土地
なのだ。こちらの、金持ちは半端じゃない。日本から友人、知人が来ると話の種に車で回ってトゥーラックを見せることがある。オラン
ダ系の連れ合いは、「こんなに大きい家だと掃除するのも大変ね」などと言うので、「そんなこと心配しないでいい人がこういう大きい
家に住むんでしょう」と私が切り返したりしている。

 メルボルンを代表するエイジ紙と言う新聞の土曜版に、よく町ごとの不動産販売価格表が出る。ある期間に売れた家の最低、最高、
平均価格が一目瞭然となる。これを見ると、高級住宅地とそうでない所の差が、東京の田園調布と私の実家東村山との格差以上に
歴然としているのが分かる。所得の格差と共に、移民の多いオーストラリアでは人種に拠る居住地格差もあるようだ。メルボルンは、
好むと好まざるに拘らず住む所の地域格差が割とはっきりしている所だ西部はどちらかというと工場なども多く、ブルーカラーの多く
住んでいる地域。東部は、閑静な住宅地といった感じ。

 しかし、移民が多くいろいろな人種が住んでいるということは、結構面白い面もある。移民の人たちが、夫々の国の文化を持ち込み、
それが食文化の裾野などを広くしていて、地域ごとに独特の雰囲気を醸し出してくれている。因みに、連れ合いの家では、時々兔の
煮込みや羊の脳みその揚げたのが出てきたりして私も十分も刺激を受けている。

 秋田県出身の私の母親は、いろいろな具を入れ込んで煮込むごった煮が得意だが、メルボルンは正に人種と文化のごった煮のよ
うなところ。煮込めば煮込むほど味が出てくる街、そんな風に言える所だ。

 それにしても零細企業の社長では、トゥーラックの豪邸に住むのはこちらの宝くじにでも当たらない限り永遠の夢のようではある。