出張先のサクラメントから戻りました。桜は既に散っていましたが、桜と比較されるアメリカ人の好きな春の代表的なハナミズキ(こちらではドッグウッドと呼ぶのですが)は満開でした。桜ほど多くの花をつけることも無く、可憐にちらほらと咲く、ピンクや白の花はなかなか味わいのあるもので、東部の家庭の庭には必ず植えられていると云うぐらいポピュラーな木です。
今日も前回に続いて健康保険の話を続けさせてください。私が日本の健康保険を使ったのは、既に20年以上前のことですから、現在はどのようになっているのか?正直なところ分りません。実際には随分変わってきているのでしょうね。
アメリカの医療施設で診療を受ける場合に健康保険証を提示するのは日本もアメリカも同じだと思います。こちらの健康保険証は大抵は名刺大の紙のカードに、加入企業名、被保険者名、加入保険の内容を示すグループ番号、非保険者の個人番号(大抵は社会保険番号をそのまま使っています)が記入されたもので、どちらかと云うと安っぽいカードです。
同一の保険会社でも、保険額に応じて何種類かの保険が用意されていて、結果としては非保険者の個人負担額が異なります。更に健康保険でも、ある保険会社では保険による治療や投薬が認められたり、そうでなかったり、個人負担の比率も変わっていて一律ではありません。診療前に保険証を提示すると、診療施設はそのコピーを患者のカルテと一緒に保管します。また保険証の記名者と患者本人が一致するかの確認は運転免許書の写真と名前で行われます。
多分、日本と一番の違いは、先にお話したように健康保険は全て民間の保険会社がビジネスとしてやっている為に、診療後、医療施設が保険金を請求しても本当に保険が支払われるか?否か?と云う問題です。その点、診療施設も慎重で保険金の支払いの悪い健康保険やその地域であまり知られていない保険会社の場合、診療施設がその利用を拒否するケースがままあります。診療を拒否されることはありませんが、患者に診療費を全額その場で払ってもらい、患者が、診断書と治療記録を保険会社に送付して支払いを請求、保険会社から患者が、先に支払った診療費を保険会社から支払ってもらうと云う訳です。大きな病院で、このようなことが起こることは少ないのですが、個人医院の場合まま起こります。
ちょっと高めの健康保険であれば、10年ほど前まで診療費は全額保険負担も珍しくありませんでしたが、現在は、どの健康保険もCo-Paymentと云う形で、診療費の一部を患者が負担することになっています。これは診療内容にかかわらず一定額で、保険の種類によって、一回あたり10ドルから20ドルを医療施設に診察時に、その場で支払う必要があります。
診察後、入院患者でない限り、診療施設は、よほど急な状態を除いて、投薬したり、処方箋を提供することはありません。医者は診察後、処方箋を書き、患者はその処方箋を最寄の薬局に出かけて買うことになります。この場合も、保険がものを云います。処方箋薬に関しては保険会社単位で、保険のカバーを認める薬、認めない薬の規準があり、これがまた良く代わります。長期服用していた薬なのに突然、保険が効かなくなってしまい、医者と相談して薬を代えると云うことも良く起こります。医者も、どこの保険が、どの処方箋薬を認めないと云う情報を全て把握している訳ではありませんから、処方箋を薬局に持っていったらいきなり、この薬は保険が効きません!なんて云われて、憤慨して医者に連絡することもままあります。
現在、長期服用が必要な薬は30日分、抗生物質のように一時的に利用する薬は10日分が支給されます。ただし、長期服用薬の場合は医者が90日分程度の服用許可をしますから、30日後に、その空瓶などを同じ薬局に持っていけば、コンピューター上に記録がある為、その薬を診察無しに受け取ることが出来ます。この処方箋薬にも、全てCo-Paymentが伴い、薬一種類当たり5ドルから20ドルの個人負担をすることになります。
さて、医療施設にかかると、2週間ほどして保険会社から郵便が届きます。非保険者の受けた治療とその医療費、それに保険適用率と保険会社が医療施設に支払った金額の通知です。診察、治療や検査が、保険で100%カバーされるものであれば、個人の支払いはありませんが、ちょっと特殊なものであると、先ほどのCo-Paymentとは別に、保険のカバー率は80%とか60%になってしまいます。その差額分については医療施設から個人負担分の精算と云う形で請求書が送られてきて、患者はそれを支払うことになります。
典型的な例は、こんな場合です。顔に皮膚がんの疑いのあるものが出来た時ですが、治療方法としては、手術として、その部分を全て切除(最近は患部を凍らして切除する場合と焼きとってしまう場合が多いそうですが)します。当然ながら、手術後、患部の一部は検査にまわされて、悪性なものか?良性なものか?判定される訳ですが、悪性であれば初期の癌治療として手術費を含めて100%保険でカバーされる場合が多いのですが、検査結果が良性であった場合は既に手術も治療も終わっているのですが、美容整形と判断され、保険のカバーはほとんんど無く、患者がほぼ全額を負担しなければいけないと云うようなことが起こります。患者は癌で無かったと云う安堵感を持つことは出来ますが、高額の医療費の請求書が届きます。
色々不満のあるアメリカの医療保険ですが、医療費の高いアメリカでは大変重要です。個人負担が増えて問題になっている日本の医療保険ですが私などから見たら、まだまだ恵まれているように感じます。
岩間@SJ