石原敏郎さんのメルボルン日記(3) 「これは誰の玉?」(02・4・26)

  歩いても行ける距離の所にゴルフ場がある。日本円にすると、1500円くらいで充分ラウンドできる。退職者ビザで
4年間こちらに住んで、平日は毎日ゴルフをしている日本人の方もいる。私も、日本でサラリーマンをしていた時はゴ
ルフは強制的にやらされた。朝早く起きて、何時間もドライブし、3万円も取られてあげくの果てに負けようものなら
踏んだり蹴ったりだ。そんな日本からすればオーストラリアはゴルフ天国。だが、安くていつもできるとなると、逆に
やらなくなってしまうのも不思議だが。

  以前、こちらの会社で仕事をしている時、金曜日が休みであった。私は、まだ誰もやってない朝6時ごろゴルフ場
に行って一人で一気に回るのが好きだった。どんなに下手でも誰にも何も言われないし、空振りしても大丈夫。ゴル
フってこんなに楽しいものだったのかなどとちょっと勘違いにはしゃげる。それに、こちらのゴルフ場は敷居が低い。
カジュアルな格好でしかもスニーカーの人もいる。小学生もやっている。

  そんなある金曜日、私はいつものように一人で何も言わないのも寂しいので、「いよいよ、最終組がやって来まし
た。」などと景気をつけてプレーしていた。ふと見ると、フェアウエーの真中に真新しいボールが落ちている。自分の
ではない。こんな早くから、自分より先に回っている人などいない筈。私は、素早い動作でそのボールを拾い、ちょ
っと得した気分で爽快に歩いて行った。するとどうだろう。反対側の小高い丘を越えてオーストラリア人二人が私の
方に向かってくるではないか。私はどうしたものかとっさの判断に迷った。もう、拾ってから随分歩いている。そのフ
ェアウエーは短く刈り込んであり、一瞬にしてボールが見つかってしまう感じだった。私はそのまま行ってしまおうか
と思った。「Good morning Toshi.」。二人のうち一人は、何と私のオランダ系の連れ合いの上司だったのだ。一度、
会ったことがあり、私も覚えていた。すっと血の気が引いたのが自分でも分かった。彼らは、ハーフのプレイで第10
ホールから回っていたのだ。何も、こんなに広いメルボルンで、よりによって連れ合いの上司のボールを拾うことも
ないもんだ。「あっ、これ。貴方のボールでしたか。あっはは。」とポケットからボールを取り出しバカ笑いしながら、
歩いてきた方に軽く投げた。「有難う。」と二人は私と反対方向に歩いていった。私は前を向きながら後ろがはっき
りと見え、何を言っているかも想像できた。こんなきまりの悪い思いもない。

  パートナー同伴のこの国なので、パーティーなどでこの連れ合いの上司にもそれから何度か会っている。その度
に、「Where is my ball ?」とわざと大きい声で挨拶してきて、「真珠湾を忘れずに!」状態が続いている。ジョークで
笑いながら言われるとはいえ、日豪関係に修復の難しい悪影響を与えたことに深く反省。

 そんな訳で私は、大きい玉もそして小さい玉も苦手で、不正ができない所以でもある。