石木田一彦さんからの寄稿(12)「T書店の倒産」(02・5・・5)

 27年前、初めて仙台に来たときに初めて入った本屋。それがT書店である。本店は一番町にあり、お客
がたくさん入り繁盛していた。2階にパーラーTがありこぎれいな女性がコーヒーをすする姿に都会のにお
いを感じた。

 仙台の中心地に陣取り、すべてにおいてきらきらと輝いている店であった。近年、十数店舗ほど多店舗
展開して40億の売上規模になり、地元を代表する企業になった。中規模の書店を郊外や量販店内に展
開して成長したのだ。しかし、私が昨年のある日、T書店の基幹ともいうべき大きな店に入ったところ、レ
ジの中では若い社員が私語のオンパレードで、ギャハハという笑い声さえしている。

 お客が入店しても「いらっしゃいませ」も言わない。買っても「ありがとうございます」も言わない。周りの
客は気にならないのか、無表情に本を立ち読みしている。頭にきた私は、店長を呼んで「この店はなんだ」
と言った。平身低頭して誤っていたが、このばかな社員に面と向かって注意できない店長のいるこの企業
は近い将来倒産するなと思った。過激な感想だが、それほど店員の態度はひどかった。

 5月1日、T書店は37億の負債で倒産。

 仙台には、この数年間で紀伊国屋書店やジュンク堂、八文字屋書店など市外の書店が進出してきてお
り1000坪以上、1店舗で10億以上の売上の書店がどんどんできている。品ぞろえがいいだけでなく、第一
に接客態度がいい。

 じゅんく堂は、立ち読みお断り、座り読み(実際に机とイスが数十席ある)歓迎の店で評判を得て仙台の
最大手の書店にのし上がった。さすが関西の企業である。

 倒産したT書店にはビデオレンタルコーナーもあり別業態でも展開していた。1週間レンタル100円は蔦屋
(ツタヤ)などの全国チェーンの5分の一から3分の一くらいの価格である。にもかかわらず、お客は蔦屋に行
く。高いのに…。

 だから価格や品ぞろえは優先順位としては高くないと考える。潰れた企業のせりふは、いつも、「競合他
社の価格競争に翻弄された」とか、「資本力に負けた」というが、ウソである。優先順位はお客への「心」で
ある。

 最も大切な店員としての、人間としてお客への対応をおろそかにしたことを棚に上げて別のせいにするの
は商売人として失格である。お客を快く迎え入れる用意のない店、企業は早番倒産だ。そして、この倒産
劇を通じて、自分の仕事もそうしなければと肝に銘じてた。