岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(160)株の話」(02・7・26)

 急な日本出張などもありケンニチから、ちょっとご無沙汰しておりました。景気回復基調にあると思われていた米国経済の象徴の一つである株価なんですが、一時は回復の動きを見せたのですが、ここに来て、またまた値下がりが続き、株式依存型の蓄財を考えるアメリカ人にとって悪いムードが漂っています。今日はそんな話をさせてください。

 駐在員としてアメリカで働いていた時期には、ほとんど気づかなかったことですが、現地企業で働き始めた頃、仕事仲間のほとんどが、株の話に並々ならぬ関心を持っていたのを知った時は驚いたものです。私自身も、それまでに日本企業の株を多少は持っていましたが、その購入目的はそれほど大きなものを期待した訳はではなく、ゆっくりでも長期的に値上がって、将来の資産の一部としてプラスになれば!と云う程度のもので、毎日の上げ下げに、関心は無く、長期間の塩漬け株のような状態で、自分が株を持っていることすら忘れて持ち株会社から届く、年1回か2回の決算報告書や配当金の振込み通知を受け取った時だけ、株を持っていることを認識する程度でした。

 でも、アメリカの職場の中では、お天気の話題の次ぐらいには株の話が出てくるのです。個人的に儲けたとか、損をしたと云う話が出てくることは無いのですが、XX社の株が上がった、下がった!と云う話。今はYY社の株が買い時だとか、売り時だとか。来月、この会社の株が公開されるけど○○ドルぐらいの価格は付きそう!と、云うような株式情報話です。

 最初に仲間の会話に加わった時、私の株売買に対する姿勢を聞かれたので、売り買いもせずに、ほとんど塩漬け状態であることを話したら、何で?そんなことをしているの?アホ違うか?と云うぐらい、皆はただただ呆れ、会話の座がしらけるほどでした。それぐらいシリコンバレーで働く人達は株の話が好きです。

 確かにほとんどのベンチャー企業は優れた人材を確保する為の手段として、ストックオプションを採用時にインセンテイブとして与えます。会社が期待する成果を上げたら、貴方にはXX株数を一株$5.00でとか、給与とは別に勤続3年になると自社株YY株数を一株$3.00でと云う具合です。当人も現在の会社の株価は$20.00だから、一株を$5.00で購入できたら???の儲けだとか、更に株価が上がったら、もっと儲けることが出来ると、期待も膨らみます。

 また就職選びの時に、どちらの会社のストックオプションの方が価値がありそうか?と云うのも大きな判断基準にもなります。2年ほど前までの株価バブルの時代には、私の知り合いの日本人のソフトウエア技術者の方は、年俸は600万円程度だったのですが、2年間働いて得たストックオプションの行使とその株の売却で5000万円ほどの家を現金で買ってしまいました。

 また、最近、日本でも知られるようになった401K型の退職金制度は自分の給与の一部を拠出し、会社は拠出額に見合う補てん金を出し、合計金額を、会社が契約する投資会社が用意した諸々の投資プログラムに参加することによって蓄財して、退職後に必要な資金を生み出そうと云う目的の年金制度なのですが、これも中身は株式投資を主体としたもので、ハイリスク、クハイリターンからローリスク、クローリターンの種類のものまで、色々選択は出来ますが、少しでも有利なものを期待すると、結局は定期預金型や州債、国債型よりも株投資型の方が有利に感じられるので、自然にそちらを選択することになってしまいます。つまりは株式市場の高値はイコール401Kを用いた蓄財を増やす結果になるので、401Kプログラム加入者にとっては株式市場での株価が気になるものです。

 アメリカ人は日本人と比べて銀行の貯蓄が非常に少ないと云われます。日本の銀行と比べると下がったとは云え、短期でも定期にすれば1.0%〜2.0%の利息は期待出来るのですが、各家庭の銀行口座の中身は普通預金には給料振込み額程度、定期預金には100万円程度はあると云うのが一般で、蓄財と云う点から貯金の魅力は薄く、ちょっと、まとまったお金が出来ると、銀行貯金で無く、ミューチュラルファンドと呼ばれる投資信託にお金を回してしまいます。これも、すなわち株式運用と云うことになります。

 そんなことから、アメリカ人の資産や蓄財は、株への依存が非常に高いのですが、今、アメリカ人が一番気にしている事は、この株価の値下がりです。家などの大型物件の購入資金として、あてにしていたストックオプションは、その行使可能な時期に来ているのだけれど、自社の株価の値下がりによって、入社時に約束された購入額より、市場の株価の方が安くなってしまい、ストックオプションを行使したら始めから損をすると云う問題に多くの人が直面しています。

 また、401Kを利用して投資プログラムに参加したけれど、株式市場の低迷によって、自分が今までに拠出した額と会社補てん金の合計よりも、現在の評価額は大幅に少ないと云う目減り減少が起こっています。(こう云う時には銀行に入れておけば少なくとも元金は保証されたのに!と悔しい思いをするのですが)銀行預金は損だ!と思って始めたミューチュラルファンドも株式市場の低迷によって、その多くは元金割れを起こしています。

 と云うことで、多くのアメリカ人は自分の資産の大きな目減りに悩んでいます。長期的に見たら、また増える可能性も高いと思いますが、それは捕らぬ狸。個人的な心理としては毎月、投資会社から自宅に郵送される運用結果から算出された評価額の合計金額を見る度に、また減った!と、ため息が出るばかりです。

それでは!

岩間@SJ
 
 

写真:7月上旬にサンノゼ仏教会が主催したお盆フェステイバルの中での、仏教会に所属するサンノゼ太鼓グループの演奏です。このグループは、今年のわらび座サンノゼ公演の時には現地で会場整理やチケット販売を支援してました。
 
 
 

--------------------------------------------------------------------------------