岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(161)シリコンバレーのこの頃」(02・8・4)

 私の通勤途中にある高校の角にある学校行事を示す電光サインに新年度は8月28日開講とか、新入生のオリエンテーションは8月23日等と云う表示が出ていました。週末の新聞に入る広告にはBack to School Sale と云う日本の入学セールに当たるようなものが目立ちます。学校で必要な文具、パソコン、新しい衣服の購入など、新年度を迎える親の気持ちは日本と一緒です。そんな動きなどもあり、こちらは、ぼつぼつ長い夏休みも終盤を迎えたような感じがします。

 それにしても何故か?ぱっとしないサンノゼを含むシリコンバレーの景気。IT不況は未だに尾を引いています。今日は最近のシリコンバレーの様子を少しお話します。

 この頃、シリコンバレーを車で走っていて、感じることは、事務所や工場、倉庫など企業が賃貸するビルや事務所のあちこちで For Lease  と書かれた看板が目立つことです。これは借手募集の広告看板です。つい1年半ほど前は、事務所を借りたくても、借りられる物件がない。物件は見つかっても賃貸料はべらぼうに高い。社員の通勤にはあまりにも遠方等、借手は希望に合う物件を探すのに大変な苦労したものです。

 それが今は何処でもお好きな物件を!と云うぐらい状況は変わってしまい、新規借手の賃貸料は1年半前の半分以下に下がっています。加えて既存の借手も事業規模の縮小などから人減らしを行なって、余った事務所スペースを、Sub Lease と云う形で第3者に又貸しを行なう為、これが一層、賃貸料の下落に拍車をかけています。身近なところでは私の事務所のあるビルでさえ、今は4分の1ぐらいの事務所スペースは借手がない状態です。

 写真はサンノゼの「ちどりバンド」特に景気のピーク時に、建設工事に着手したビルの多くは、今、完成したものの建設中に契約した借手が契約をキャンセルされたままであったり、借手が全くないと云う状態で、駐車場に一台の車も無く、巨大なビルが幾つも並んだ様子はさながら現代のゴーストタウンと云った感じがします。

 シリコンバレーの失業率は7%を切ることが出来ず、何と全米平均より遥かに高い状態で、以前はシリコンバレーに来れば仕事があると云ったものが、仕事を求めてシリコンバレーを離れると云う人が増えています。仕事があればともかく、仕事が無い状態で、アメリカの中で生活費がずば抜けて高いシリコンバレーで生活すると云うのは大変ですから、とりあえず生活の安い土地に移動していくと云う理由は良く分かります。

 この影響を一番強く受けているのがアパートです。一時、アパートは事務所スペース以上に不足した状態で、家賃の高騰も激しく、稼ぎのあるサラリーマンが家探しに苦労するなかで、学生にとってはもっと深刻な問題でした。遠方からサンノゼ地域の大学に入学した学生達は、学生として支払いが出来るレベルのアパートが見つからず、サンノゼ州立大学では大学に入学したくても通学距離範囲で、学生が住めるアパートが見つからないと云う理由の入学辞退者が増えてしまい、大学自体が新聞広告を出して学生の為のアパートやルームメート確保に協力してください!とPRをしたほどです。

 それが、今はどのアパートも貸事務所同様、借手を探す For Rent の看板や垂れ幕が目立ちます。アパートも内装をリモデルしたり、借手に何らかのインセンテイブプランを与えたりして借手の確保に必死です。通常、アパート等は1年間の契約ですから、新規の借手だけで無く、継続して借りる人達も、もう一年間借りるから家賃を下げろ!とアパート所有者との交渉はもう当たり前になっています。一年前に、同じようなことを言ったら、「それなら、出ていってください!」となった筈です。

 それでもどうして?と思うこともあります。こんなに景気の悪いニュースだけが流れる中でも個人住宅の販売状況は、さほど悪くないのです。大メーカーのレイオフなどが相次いで発表された当時、売り家が一気に増えたことから住宅価格は値下がりを始めました。しかし、元々住宅購入希望者の多い地域であり、一時の高値から購入を躊躇していた層が、物件が増えて選択の余地が広がったこと、昨年からの値下がり傾向を見て、今が買い時と判断したことや、金利の低下も大きな理由だそうですが、この半年ほどは、不況にも関わらず、再びシリコンバレーの住宅価格はじわじわと上昇しています。

 もう一つ、日本同様に不況感からの買い控えは自然の現象ですがシリコンバレーと云う地域に限って見ると、自動車、特に3万ドル(340万円)以上する高級車が良く売れていることです。日本のように不景気で小型車が売れると云うのでは無く、比較的大きなサイズの車で内装なども立派な車が売れるのです。日本車も3000cc以上の車に人気があり、欧州車ではベンツ人気には驚きます。走っている新車だけを見ていると、もはや日産車よりもベンツ車の方が多いようにも感じられます。シリコンバレーで長く暮らすと、どの職種についていれば、大体、どの程度の年間所得を得られるか?は容易に想像がつくのですが、今でも、目一杯、高い車に手を伸ばすと云うのは、まだ好況な時期の名残なのか?それとも別の理由があるのか?分かりませんが、私などには変わった感じがします。

 こちらで仕事をしていて毎日シリコンバレー企業の現場を見る限り、IT不況からの回復のテンポは非常に遅く、アメリカ人経営者の中には、このままアメリカ経済は回復すると云うシナリオでなく、日本と同じような長期構造不況の泥沼に陥るのではないか?と懸念する人もいます。将来の経済など誰にも分かる訳はないのですが、日本の景気回復はアメリカ景気頼みだとすると、これは難しそうだな!と感じます。

ではまた。

岩間@SJ

写真:先に紹介したことのあるサンノゼのちどりバンドです。先月のお盆フェステイバルでの演奏です。後ろに見えるのは本願寺のサンノゼ別院です。
 
 
 
 
 

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