岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(163)アメリカ航空会社の経営危機」(02・8・18)

 大曲は雨にたたられたお盆休みだったのようですね。このまま、秋に入ってしまってはちょっと寂しい感じでしょう(笑)。こちらは相変わらず夏の好天なのですが、最近気づくことは
日の出時間が、めっきり遅くなったことです。夏時間で時計が一時間早いこともあり、朝6時頃、目を覚ます(私は早起き鳥なので)と、外は少し薄暗いと云う季節に入りました。アメリカの小中高の夏休みも実質、後一週間で終わり。8月最後の週は新入生等のオリエンテーションも始まり、学校は新年度のスタートです。

 今日は、こちらで大きな話題になっているアメリカ航空会社の経営危機の話をさせてください。アメリカの景気落ち込み以来、ここ2年ほどアメリカの航空業界は利用者数の減少で、業績は低迷していたのですが、ご存知のように昨年9月11日の連続航空機テロ事件をきっかけに、心理的に企業関係者や一般旅行者も航空機を利用した旅行を手控える傾向が益々強まり、先にお話したことがあるように、昨年の秋などは主要路線でも、ほとんど空席の飛行機が飛んでいるような状況になってしまい、航空会社は大幅な減便や、従業員の大型レイオフを実施して、コストの圧縮をはかりました。

 この国では車以外に代替の長距離旅行手段は少ないので乗客が他の交通機関に流れたより、旅行そのものを取りやめた人たちが如何に多かったか。と云うことだと思います。この間に業界下位のバンガード航空とミッドウエー航空の2社は乗客減少による業績低迷から早々に倒産してしまいました。

 しかし、私自身が空港を利用していて、その混雑具合等から感じる限りでは、今年に入ってから航空機利用者の数は随分、回復してきたように感じていました。また、航空会社も先にレイオフした社員の多くを、この春までに再び職場に呼び戻すなどして、昨年の9月11日以前の状態には戻ったかな?と感じていた矢先です。

 そんな時にアメリカ東部を中心に空路を持つUSエアーが会社更生法を申請したと云うニュースが流れました。ただ、USエアーの場合は過去にも身売り話が出たりユナイテイッド航空との合併話があったりで、会社自体が不安定な経営の印象を与えていたので、さほど驚かなかったのですが、先週からはアメリカ航空業界第2位のユナイテイッド航空がこの秋に会社更生法申請をするかも知れないと云うニュースには驚ろきました。

 サンノゼの地元新聞サンノゼマーキュリー紙によるとユナイテイッド航空は昨年度21億ドルの損失を計上し、今年度に入っても上期に8億5千100万ドルの損失を記録したらしく、この秋までに連邦政府から15億8000万ドルの債務保証が受けられない限り、返済期限が来る8億7500万ドル分の借入金の返済見通しが立たないので、会社更生法を申請せざるを得ないと云うものです。事実上の倒産になる訳です。

 サンノゼ空港ではユナイテイッド航空の便数は、さほど多くはないのですが、サンフランシスコ空港は国内線国際線を含めた全航空会社の離着陸便数の約半数はユナイテイッド航空の便であり、この航空会社の主要ハブ空港のひとつでです。両空港に関係するユナイテイッド航空の社員数は17000人を超えるそうです。

 ユナイテイッド航空はコスト削減策として、現時点で社員のレイオフ実施や減便等の予定はないものの、パイロット組合と賃金の1割カットの合意を得た他に、整備士組合や乗務員組合とも同様の条件交渉を始めているのですが、航空会社の社員の中で、給与レベルがずば抜けて高いパイロットとは違い、こちらは今のところ交渉は不調のようです。

 ただ、アメリカ大手航空会社の経営危機問題はユナイテイッド航空だけに留まらず、アメリカ航空業界第1位(すなわち世界最大の航空会社になるのですが)のアメリカン航空も大変厳しい状態で、ユナイテイッド航空の問題が記事になったのと同時期に、アメリカン航空は7000名以上のレイオフの実施を発表しました。

 このところアメリカ航空会社はどこも強力にコスト削減策を図っており、かっては航空券販売の中心的な役割を担った旅行代理店に対して、発券航空券の料金に対して一定率を支払っていたコミッションを、1航空券当りの定額コミッションに切り替えたり、旅行代理店が航空券を販売しても、コミッションは支払わない等の動きに出ています。困った旅行代理店はその事情を顧客に訴えて、手数料と云う形で、航空券発券毎に顧客に請求したところ、これが大変な不評で、顧客は航空券の購入を代理店を通さずにインターネットを使って航空会社から直接、購入する人達や企業が増えています。

 また、航空会社もその流れを加速させる為に、プロモーションとして旅行代理店のコンピューター端末では出てこない割安航空券を航空会社のホームページを通じて購入出来る等の策も取っています。たとえばある路線の航空券を購入しようとして旅行代理店に電話を依頼すると、旅行代理店からはその便と料金情報が返ってくるのですが、どう考えても、その料金は相場と比較して高い!と感じて、同じ航空会社のホームページを探ると、全く同じ便なのに料金は半分以下とか、代理店からは既に満席ですと言われた便の航空券が購入出来ると云うことも、ままあります。

今回のアメリカ航空会社の経営危機は単に航空会社の問題に留まらず、飛行機を利用した旅行業を支えてきた、業界そのものの構造にも大きな変化が起こっていると思います。

それでは
 

岩間@SJ
 

写真:金曜日に州都サクラメントへの出張があったのですが、帰路、立ち寄ったサクラメント川に停泊するリーバーボート、デルタキング号です。昔は大陸横断鉄道を利用する旅人をサンフランスコからサクラメント川を6時間かけて上り、このサクラメントの駅から大陸横断鉄道に乗りました。この船はその時代に活躍したリバーボートです。一時は廃船になって捨てられていたのですが、修復してオールドサクラメントと云う観光スポットに係留され、船内をホテルとレストランに使っています。なかなか趣きのあるレストランです。