岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(167)給与」(02・10・16)

 伊藤さんは3連休を利用され、お寺参りを兼ねた旅行だったのですね。10月14日はこちらもコロンバスデーと云う祝日なのですが、祝日扱いにする企業が少なく我々も右に倣って、平常通りの勤務と云う訳で3連休になりませんでした。

 先週地元新聞が発表したシリコンバレー地域の失業率は8%の水準で州の平均や全米平均値より高く、依然として景気回復の兆しがはっきりと見えない感じがします。世界の電子工業のメッカがこんな状態ですから、アメリカ依存の経済回復を期待している日本は、景気回復が更に遅れるような感じがします。

 アメリカは一年間の小売業の半分を稼ぎ出すと云うクリスマス商戦もまじかなのですが長引く不況と雇用不安が原因でコンシューマーの購買意欲は冷え切っており、市場をリードするような商品も見つからぬことから、クリスマス商戦に明るい見通しを持つ業界関係者は少ないようです。今は、クリスマスを前に、せめて賃金カットだけでも解消して欲しい!と云うのがシリコンバレー地域の平均的サラリーマンの本音だと思います。

 そんなことから今日は少しアメリカの給料の話をさせてください。アメリカ企業の給与体系はまず各社員の職種によって2種類に分けられます。管理職や技術者に代表される専門職には年俸制。一般職には正社員とかパートタイム社員に関わらず時間給制をとっています。

 年俸制で給与を受け取っている人たちの給料は就労時間の長さと関係無く、年間の成果に対する報酬として給料が支払われます。従って遅刻や終業時間前に職場を離れても、逆に残業や休日出勤しても給料額に全く反映しません。言い換えると成果主義給与で、成果が思わしくなければ、翌年の年俸は下がることも起こります。

 一般職の時間給は給料額イコール勤務時間X時間給で決ります。昇給も、年間いくらアップすると云う設定で無く、時間給がいくらアップすると云う表現です。時間給の人たちにとっては何時間働けるか?と云うことが給与額に大きく影響してくるので、日本の労働組合がポスト賃上げ活動の一つのポイントにしているような就労時間の短縮は、一般職の社員にとって実質給料の目減りにつながるので、企業に組合があろうが無かろうが、社員側から就労時間短縮の要求はほとんど出ません。この年俸制と時間給制の2本立て給与システムは民間企業でも公官庁でも全く同じです。

 こちらの給与の特徴は月一回の支払いで無く、月半ばと月末の2回払いになっていることです。企業によっては月に関わらず2週間毎に給料を支払うと云うところもあります。何故?給料は月に複数回支払われるか?と云うことですが、年俸の場合は成果期待報酬と云うことで企業側の立場から見ると前払い給与です。従って月1回の給料支払いでも問題は起こらないのですが、時間給の場合は給料は労働に対する後払いになる訳ですから、本来であれば社員は毎日の就労後に、その日の給料を受け取れなければいけない訳です。ただ、それを実施したら会社の給与支払い業務の負担が大きくなり現実的でないので、妥協できる両者の条件として、2週間毎に給料を支払うシステムが生まれたようです。無論、今は法的なバックアップもあるようです。

 さて、その給料の中身ですが、先に話したように一般職は時間給x就労時間と残業時間分の割増分で上乗せした金額が給料額になります。管理職や専門職は年俸として決まった額を単純に給与支払い回数で割った金額が毎回貰える給与額です。ただ、営業職だけは年俸に加え、自らの売上額に対してコミッションが上乗せされるケースが普通です。腕の良いセールスマンで、商品に恵まれると、勤める会社の社長より実質給料が高くなると云うことは珍しくありません。

 また管理職には会社の業績や部門成果に対してボーナスが支払われることがあります。ただボーナスはその人の雇用条件として付加されるものであって、そのような雇用条件が付加されなかった管理職や専門職にボーナスが支払われることは会社が途方も無い利益を上げたりしない限りありません。ボーナスは広く全社員に!と云う考えは無く、特別な社員に対するインセンテイブです。金額はともかく日本のように年2回定期賞与を得ることが出来ると云うのはアメリカ人にとってうらやましい話です。

 日本の給料との一番の大きな違いは、一般的な福利厚生の一環として家族手当、通勤費補助、住宅手当、給食手当、調整給のようなものがほとんど無いことです。アメリカでは家族、通勤、住宅など等は個人に寄るところのものであり、個人を雇用している企業や仕事とは全く関係のないことであると云う考えです。

 例えば、社員が会社から遠方に住もうが近隣に住もうが、それは個人の問題であって単に会社は就労に差し支えないことを求めているだけ、通勤費を負担する理由はないと云う理屈です。家族手当も住宅手当も全く同様の考え方であり、その補てんを受けることはありません。社宅とか独身寮といったものを用意する企業も皆無だと思いますし、住宅費補助などは論外だと思います。通勤も就労に関わる準備作業の一つと云う日本の理解に対して、就労は勤務場所に着いてから、そこを離れるまでの間と云う訳です。しかし、どうしても企業として採用したい技術者や管理職該当者に対して、企業側がインセンテイブとして、ストックオプション以外に住宅を提供するとか、車をリースして提供すると云うことは珍しくありません。

 つまりは社員の誰にも!で無く、特別な社員に対して!は、企業側は出来る条件は全て出すと云うことになります。唯一の全社員に対する福利厚生は医療保険です。ただこの医療保険も最近の保険料の高騰から、会社負担は従業員分だけ、家族分をカバーしたい場合にはその差額は自己負担と云う企業が増えてきました。

さて、毎回の給料から天引きされるものなのですが、給与額に応じて連邦税(国税)と州税が予納と云う形で引かれます。それに日本の国民年金の原型になった社会保険料、連邦と州の失業保険料も天引きされますが、日本と違って失業保険は自己都合による退職では受給資格は無く、あくまでにレイオフされた場合にのみ受給資格があります。また、これは任意になるのですが、企業自体がアメリカ型厚生年金(401Kプラン)に加入していれば、この拠出額の自己負担分も差し引かれます。ざっと計算すると、普通のサラリーマンであれば給与総額の40%〜30%ぐらいの額が目減りしてしまうことになります。そんな訳でアメリカのサラリーマン生活もそれほど楽ではありません(笑)。

 最後に給与袋は実際は明細だけでお金は銀行口座と云うには日本と同じですが、共稼ぎの場合は別にして、夫だけが収入を得ているアメリカ人夫婦の場合、以前は旦那が家計を握っていると云うケースが多かったそうです。つまりは、その週に必要な生活費分の小切手を奥さんに渡すと云う訳です。もっとも今では夫婦共に小切手もクレジットカードも自由に使える訳で、夫が一方的に家計を握ると云うのも不可能なことですが、それでも、月末に届く、諸々の請求書の内容を確認して小切手を用意、郵送すると云う作業を、全て、夫が請け負っていると云う家庭は今でも大変多いそうです。

それじゃ

岩間@SJ

写真:ハローウイン用の露天のカボチャ売りです。昨年は郊外の畑でしたが、今年は市内の空き地販売の様子です。
 
 
 
 
 

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