敦子・リーさんの真心・ふれあい(12)「冬恋歌」(02・11・11)

「ドラマ『冬恋歌』が来年4月からNHKで放送」
 
 ふるさと大曲に初雪が降った日、ソウルにも初雪が降った。その日、韓国三大紙のひとつである中央日報日本語オンラインの文化・芸能欄に載った見だしに胸が高鳴った。韓国ドラマとして初めて、「冬恋歌」が日本公営放送NHKで放送される、その事実はビッグニュースだからだ。
 
 切ない切ない高校時代からの初恋をテーマにしたこの純愛ドラマは、今年1月からロマンスに飢えた人々から熱烈な声援を受け、韓国で大・大・大ヒット。若年・中年・老年からげて、心ときめく胸キュン現象。若者の間では主人公のヘアースタイルや、ひねって結んだマフラーも「シンドローム」を巻き起こした。
 
 テーマ曲の「初めから今まで」が大流行しているとの報に、早速気の早い私はテープを購入、毎日聞きまくり「冬恋歌」三昧の車の中である。「絶対見たほうがいい」と、がり勉タイプのお固い56歳の妹から電話で薦められた主人は、早速全18回シリーズの「冬恋歌」のビデオを1・2回分をこの土・日にレントしてきた。
 
 見た感想は、「心奪われる美しさ」。物語といい画面の風景といい主人公の表情といい、絶品なのだ。主人の通訳がなかったら、おもいっきり現実から飛翔できるのにと、罪というか、妻側普通感覚の私である。主人もきっと同じ気持ち、お互い様感覚で見ていたことだろう。
 
 それにしても、秋から冬にかけてもの寂しい季節が、私は大好きである。この季節を選んで、どうしても籍だけは入れたいと、友人が11月6日に結婚した。法的結婚の立会い人として、一緒に裁判所に行ってほしいと、私たちに依頼してきたのは、ピラミッドで有名なエジプトのカイロ出身の青年アマー。結婚相手はアリゾナ州に住むシンディ。
 
 アマーはもとエジプトの国体バスケットボール選手だった長身でハンサム青年。知り合って5年になる。お鮨が大好物で、魚は市場に行って自分で仕入れる徹底的日本ファン。シンディは、弁護士目指し働きながら夜学で法律の勉強をしている、やはり好物はお鮨。来年のシンディの大学卒業を終えて、夏にはエジプト、フランス、アメリカ各地から家族・友人を招いて盛大に結婚式をする予定の二人。この初めての結婚が、ずっと続いてほしいと思う。
 
 結婚に敗れ、再婚している人が私の周りには多い。再婚に敗れ、再々婚してる人もめずらしくない。再々婚に敗れ再々再婚してる人もたまにいる。アメリカの恋愛・結婚感はユニークだ。毎週木曜日に、食事サービスのボランティアをしているが、そのほとんどが60歳、70歳代の方々。笑いが絶えない表情の明るい人、感情の老化現象著しく暗く寂しげな人、いろいろだ。
 
 男性陣の中で、一番明るく人生を楽しんで見えるのが、老年紳士75歳のボブ。彼と一緒の教会に通うガールフレンドができたばかりなのだそうだ。ときめきに輝いているというか、只今恋愛中の顔なのだ。女性陣の中では、私と一緒に食事を配達している72歳バーバラが、極めてばら色笑顔で明るさ第1位。
 
 「心臓発作でデイビットが58歳で亡くなった時、私は55歳だったのよ」、バーバラが思い出を話してくれたことがある。花束贈ったり、ラブレター書いたり、アメリカは愛の表現が、夫婦の重要な潤滑油。「一緒に住んでるのに、デイビットが出張先からよく手紙をくれた。文面はいつも同じ。何が書いてあると思う?とにかく短いのよ」とバーバラ。想像力一杯でワクワク、考える私。
 
 「いつもね、『バーバラへ 君をいつも想ってる 愛をこめて デイビット』。これだけ。文面はいつも同じなのよ、たまには違う言葉使ってもいいのにね」とバーバラは続けた。
 
 「寂しくない余生のため再婚する人も多いのに、バーバラは再婚は考えなかったの?」と私が聞くと、「考えたことはない。デイビットは私の初恋。初恋は永遠。共に高校生の時に出会って結婚し、二人で作った思い出があるから、寂しくなく生きてゆける。4人の子どもと6人の孫に囲まれ、心にいつもデイビットが一緒にいる。だから幸せだ」、そうバーバラは深く満たされたような顔で、静かに語ってくれた。
 
 初雪・初恋。ロマンチックな響きだ。私は田舎を出て30年。幸せな結婚でアメリカに住んで16年近く。祖母の葬式で12月に、ロスから幼子連れで田舎に帰って以来、田舎の雪はもう10年見ていない。ロスの冬は雨が多いだけで、たまにみぞれのおまけ付き。雪は降ってくれないのだ。
 
 雪が見たい。いつか今度雪が見れたら、一人でしみじみ雪道を歩いてみたい。小学校、中学校、高校と、雪道を通ったなつかしい日々、自分の心象風景が瞬時に甦ることだろう。
 
 アマーの結婚した11月6日。大曲の父から手紙が届いた。父からのお初の返信航空便に、胸が別色でときめいた。私が英語で自分宛ての住所を書いて同封した封筒が使われている。「父ちゃんからの手紙、今日届いだよ。手紙っこもらってえがったな」と、私は実家に電話メッセージを残した。