岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(170)カーセールス」(02・11・18)

 早々の雪のシーズンの到来で雪に慣れた読者の皆さんでも慌てているようですね。こちらは週末の土曜日、日本から来た旧友を古い港町モントレーを案内してきました。好天で観光客の多くも半袖姿。いつもながら四季感はやや乏しいけれど、素晴らしい気候の恩恵を満喫しています。

 不況の様相は日本もアメリカも同じようなものだと思うのですが、この不況の中にも関わらず、アメリカ国内では自動車が良く売れています。アメリカ自動車メーカーによる金利ゼロのローンの提供など、販売プロモーションの効果もあるのでしょうが、どうもそれだけはなさそう?です。売れている車が安い小さな車では無く、3万ドル(約360万円)以上の高価格車が良く売れていることです。

 以前にも話したことがあるように、シリコンバレーでは日産車よりもベンツ車(しかも新車)の方が数多く走っているような感じで、我々庶民感覚では、どうして多くの人がそんな高い車をぽんぽん買えるのか?不思議なのですが、事実は事実です。

 そんなことから、今日は車にまつわるカーセールスの話を少しさせてください。日本同様に新車はデイーラーと呼ばれる販売店からの購入が普通なのですが、アメリカの多くの町では、特定の地域に各車種を扱うデイーラー店舗が集中的に集まっている場所があります。オートモールと呼ばれるのですが、その地域に出かければ、歩いて一軒一軒のデイラーを覗いて、車の品定めをすることが出来ます。

 日本のデイーラーはショールームの中に1〜2台の展示車を置き、実際の車選びはカタログから選んで色や車種やクラス、オプションを決めて購入、新車は後日配送されるのが普通だと思うのですが、アメリカのデイーラーは日本の中古車センター同様に、屋外に多くの車を展示していて、顧客はその中から自分の気に入った車を選んで、必要があればその車を
試乗し、一応納得の上で、その場で購入契約が終わると顧客は、一般の商品同様に、その車を運転して家に帰ると云うやり方です。無論、カタログから選んで車を購入することも出来ますが、納車が全くあてにならぬことや、価格交渉上も不利なことから一般的な購入方法にはなりません。

 私がアメリカでの車購入で未だに気になるのは車のセールスマンの質の悪さです。全てが全てではないと思いますが、車は欲しくても彼らとは付き合いたくないと感じるのは私だけではないように思います。多分、この原因は、日本のデイーラーはメーカーの子会社とか、メーカーと資本関係があって、製造と販売が一体化したビジネスであるのに対して、アメリカのデイーラーは基本的に完全独立企業であり、メーカーは希望する販売能力や整備などのサービス能力、それに資金力があると認定すれば、そこを自社の車を販売するデイーラーと認定します。つまりはセールスマンはそのデイラーの責任の範疇にあり、教育責任や管理は全てデイーラー自身にゆだねてしまっているからだと思います。逆にデイーラーも地域での独占販売権は無いようで、ちょっとした大きさの町であれば、同一車種を販売する別会社のデイラーが複数存在するのは当たり前で、組織力も弱い為にセールスマンに対する統一した教育とかマニュアルのようなものが全く不備で、実行もされていないのではないかと思います。

 またデイーラーで常勤社員として働くセールスマンも少ないらしく、大半は訪問客の多い週末だけのパートタイム社員で、実質的な収入は販売実績によるコミッション収入と云うサラリーシステムになっているようです。

 そんな背景からか?日本のデイーラーのようにセールスマンが地域割りで担当し、地道な販売活動をしていくとか、リピート需要を期待して2〜3年前に車を購入した顧客をフォローしながら、乗り換えを狙うと云うような、継続的販売努力は皆無で、セールスマンの仕事は、車の展示場所に訪れた客を捕まえるのを旨とするのがアメリカの車のセールスマンの仕事になっています。こちらが買いたい車の性能やオプション等を少し情報を集めてから、デイーラーに出かけてセールスマンにお目当ての車の性能等をちょっと詳しく聞くと、本当に分かっているの?と呆れるような返事が返ってくることもままあり、いい車だ!買得だ!人気車種だから!今なら!と連呼するだけのセールスマンに出くわすことも珍しくありません。

 しかし、まだそれは我慢するとしても、未だに不可解なことは、セールスマンには車の値段交渉に関する一切の権限がないことです。車の売価に関わる一切は、お客の前に決して出てこない、セールスマネージャーが握っていて、セールスマンは車を買いたいと思った顧客を屋外の車の展示場所から、屋内の商談デスクに顧客を座らせてしまうのが実質の仕事で、
そこからは顧客とマネージャーの間をメッセンジャーとして往復、顧客が1500ドル割り引け!と言えばマネージャーに聞いてくるから、ちょっと待ってくれと席を立ち、マネージャーのオフィースに出向いて、その返事を聞いて戻ってきてはマネージャーが、今日買ってくれるのなら1000ドルまでは値引くと言ってますが、どうですか?と云う具合。

 再び客が高い!それじゃ1200ドルまでまけろ!そしたら買うと言うと、またマネージャーの所に出向いて、その返事を持ってくると云うやり方です。それなら、セールスマンと話をするより、マネージャーと直接話をした方が簡単だからそうさせてくれ!と求めると、それは出来ないと言う訳です。マネージャーなる人物は顧客との交渉に出るのは自分の仕事ではないと
割り切っていて、奥に個室を構え、商談がまとまっても、お客の所に顔を出すことはありません。また、商談として購入条件が決まると、その後の書類の作成やその手続きや代金受け取りに関わる業務など等は、完全にセールスマンの手から離れてしまい、そのデイーラーの別の社員が事務的に作業をするだけです。車購入後、担当したセールスマンからお礼の電話一本があれば、それは上出来の方と思えるほどです。

 マジに日本の車のセールスマンの人たちの仕事の範囲の広さとその努力をアメリカで実現すれば、デイーラーの販売実績に異変が起きるのではないかと思います。
 

 次回はデイーラーのセールスマンを介さすに新車を購入する方法についてお話したいと思います。

岩間@SJ

写真:自宅近くのオートモールにあるデイーラーの一つ