岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(173)代理人」(02・12・25)

 お久しぶりです。12月24日クリスマスイブです。青空が売り物のカリフォルニアですが、今は冬の雨季の真っ只中、10日ほど前に日本から戻ってきて以来、雨の多い毎日です。
この地域にとっては貴重な冬の雨ですが、いつまでも続くとやはり気分的には陰になってきます(笑)。

 インターネットで日本の新聞を見ると元巨人軍の松井選手のヤンキーズ入団が大きな話題になったようですね。当初、彼は大リーグ入りについて、諸々の球団との交渉をEメール等を活用して自分でやるような考えを表明、次に日本の弁護士を介して交渉を行うと方針を変え、結局、最後は代理人を立てての球団との交渉と云うことになり、その後は代理人によってスムースに希望していたヤンキーズとの話が進んだように聞いています。

 日本の球界でも、ようやく選手が直接球団との間で年俸交渉を持つやり方から必要に応じて代理人を立てての年俸交渉が認められるようになったそうですが、依然として当事者間解決が社会の中で長く定着してきた習慣から、両当事者と直接関わりのない代理人を介在させて、諸事の話を進め、問題解決することにはまだ違和感があるように思います。

 松井選手も代理人なる存在や、アメリカ社会の習慣や知識が無かったことから入団交渉に関しても契約金の金額や契約年数だけの主な条件だけでなく、法律の専門家が読んでも、その理解と判断に相当な労力を要する膨大な厚みの契約書が待っていることを十分に理解していなかったように思います。

 そんな話題もあったことから、今日はアメリカ社会の中での代理人の話をさせてください。

 アメリカ社会の中ではスポーツ界だけでなく、一般企業や個人に関わる諸件について、当事者間の話し合いや交渉の代わりに、代理人を用いると云うやり方は広く行き渡っています。この代理人ですが、実際はほとんどが弁護士です。日本の弁護士との根本の違いは日本の弁護士は比較的広範囲な種類の仕事をするのに対してアメリカの弁護士は各自の担当する範囲を非常に狭めて、専門性を各々の弁護士の売り物にしています。

 今回、松井選手が採用した代理人も野球界で選手と球団の間の条件交渉や契約を専門とする弁護士だと思います。弁護士がそんな仕事を?と思うのですが、アメリカの弁護士はサービス業として広く社会に食い込んでいる訳です。

 代理人は普通の弁護士とは違い、依頼人に関わる作業時間に対する報酬で無く、作業に関わる諸経費(飛行機代、ホテル代、食事代など等)と成功して取得した金額に対して成功報酬を受け取るタイプの弁護士です。つまりは選手と球団の間に入って結んだ契約金の5%〜15%を成功報酬として代理人は選手から受け取れる訳です。この5〜15%の成功報酬の割合は正しく選手と代理の交渉で決まる訳ですが、日本人の場合は言葉の障害もあり、大抵は代理人のいいなりの割合で決まるようです。

 何れにしても交渉相手である球団から、より高額な契約金を引き出せれば代理人の手元にもより大きな成功報酬金が転がり込むと云う訳で、代理人は選手の身代わりとなって、良い条件を球団から引き出す努力をすることになります。わずか2〜3週間動いただけで、相当な金額の報酬を手に入れることが出来る訳ですから、考えれば、ぼろ儲けの商売のように思いますが、誰でもできる訳では無く、球団世界に深く入り込んで、裏表が分かっているからこそ出来る商売でもある訳です。

 スポーツ界ではありませんが、私が経験したビジネスの世界ではこんな例がありました。以前に、あるアメリカ企業との技術契約を結ぶ交渉を進めていたことがありました。無論、両者側共に弁護士を採用するのですが、我々、日本企業側は弁護士を契約交渉の中で、専門用語やその条件に関係する法的な意味の理解など、補助的に使うのに対し、相手のアメリカ企業はその弁護士は完全に代理人として、我々の交渉相手になるのには驚きました。さほど大きなベンチャー企業ではないのに、彼らが採用した2名の弁護士に対して、一時間当たり250ドルなる弁護士料を支払っているんです。

 その企業の経営者達は交渉会議後、その弁護士から交渉の経緯や課題の説明を聞き、弁護士がこの条件で妥当と思うと意見を述べれば、それで良し!と契約をしてしまうのです。確かに小さな会社なので、社内には法務を扱う専門部門も無いし、社長も役員も契約の専門家ではないと云う実情も分かるのですが、代理人と云う会社の経営と関わりのない
社外の人間に会社の重要なものを預けてしまっていることに対し、我々は大変違和感を感じたのですが、代理人と云うのはそんなもののようです。

それじゃ。

岩間@SJ

写真:西海岸のリゾート地ぺブルビーチですが、最近気づいたのですがこの町のあちこちある時計は全てROLEXでした。