岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(175)最近の車事情」(03・1・28)

 アメリカの景気もなかなか回復せず、急な回復は望めないと悲観的な景気観測をする人が増えています。昨年のクリスマス商戦は消費者心理に大きく影響、量販店は予想通り(?)売上の低迷に泣いたようです。とは云え、こんな経済環境にも関わらず自動車が比較的良く売れていることです。しかも売れ筋の車は、安い車では無く、アメリカでは高価格車である一つの目安価格である3万ドルを超える車が良く売れていることです。

 この背景には米国自動車メーカーの販売促進策として、自動車ローンのゼロ金利の実施の効果が大きいようです。一般銀行を利用して自動車ローンを組むと、今でも最低5%程度の金利が掛かりますから、このゼロ金利はローンを利用して車を購入しようとする人には大変魅力的です。ただ、このゼロ金は長期的には自動車メーカーの利益を圧迫することになりますから自動車メーカーとしてはぼつぼつこの販売促進策を切り上げたいところなのですが、その反動によって自動車販売が一気に冷えてしまうことは自動車メーカーにとって最も怖いところであり、諸般の経済状況や消費者心理を考えると、決して自動車メーカーに有利な環境でないだけに現実には判断しあぐねているような感じがします。

 しかし、アメリカ国内で全ての自動車メーカーが同じようなゼロ金利策をとっているかと云うとそうでもありません。日系自動車メーカーの中には一部、限定車種に対して、低金利策を打ち出しているところもありますが、多くの日系及び欧州系自動車メーカーはアメリカ自動車メーカーと同じような販売促進策をとっていません。

 アメリカの自動車市場では今大きな変化が起こっています。4ドアセダンに代表される乗用車市場では、アメリカ自動車メーカーの出番がほとんど無くなってしまったことです。無論、アメリカ自動車メーカーも乗用車のラインアップは揃えているのですが、ここ5〜6年の間、アメリカ自動車メーカーの乗用車で、市場に大きなインパクトを与えるような車が存在しないことです。

 かってのアメリカ自動車メーカーのシンボル的な大型乗用車市場が消滅してしまった後、残った小型車市場は日系及び欧州系の乗用車がアメリカ市場を事実上制覇してしまいました。こちらでは小型車と云ってもエンジンの排気量は2.5リッター以上がその大半で、平均的な小型車セダンは6シリンダーで排気量は3.0リッターぐらいが小型車のサイズに変わりつつあります。更に小さい排気量2.0リッター以下のセダンも日本メーカーの独壇場です。

 それでもアメリカの自動車メーカーが大きな利益を上げられる事情は乗用車を中心としたビジネスからピックアップトラックとSUV車を中心とした車の販売に移行しているからです。特に人気の高いSUV車は潜在的にアメリカ人堅気を満足させる、より大きいサイズ、より大きなエンジンを積み込んだスポーツ?とは言い難い様な巨大なSUV車までも良く売れているのです。

 排気量が5リッターを超えるような大型SUV車の価格は5万ドル以上するのですが、通勤時のハイウエー上で、このクラスの新車を実に多く見かけるのです。アメリカ自動車メーカーにとって、これらの高価格SUV車の利益率は非常に高いことから益々はエスカレートしていく感があり省エネの掛け声と現実の動きには大きな矛盾を感じさせます。

 ただ、これからが問題かもしれません。この大型ピックアップや大型SUV車市場に日系自動車メーカーが目をつけて、じわじわと車種を揃えて進出してきたことです。今の所は非常に限られた車種であり、大きいとは言え、アメリカ車よりは一回り小ぶりな印象ですが内装の仕上がりはやっぱり日本車です。日本勢もかっての自動車貿易摩擦の再来を望まないことから、この種の車の生産は米国内の工場で生産しています。しかも、現地部品の調達率は80%を超えると云うことで、名前は日本メーカーですが、車はれっきとしたアメリカ製と云う訳です。

 これらの車が市場に増え出してアメリカ自動車メーカーの一番うまい儲けが存在する市場を奪うことになると、どんな難癖をつけてくるか?気になるところです。

ではまた!

岩間@SJ