岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(183)SARSの影響」(03・5・19)

 サンノゼ地域は4月始めから5月上旬まで、季節外れの長雨が続きましたが、ようやく先週辺りから夏型の天候に代わり爽快な季節がやってきました。やはりカリフォルニアです。まだ、気温はちょっと低めなのですが、青空は広がると、一斉に半袖姿を好みます。

 先週はロスアンジェルスのコンベンションセンターで開催された、E3と云うビデオゲームのトレードショーに出かけていました。深刻なハイテック不況の中ですが、ビデオゲームやコンピューターゲームはまだまだ元気の良い分野であり、会場は驚くほどの来訪者を集め、最近のトレードショーの不活発さを見慣れているだけに驚きました。ゲーム業界だけにその熱気は独特のものを感じました。またビデオゲームはもはや子供の為の遊びから離れて、大人の為の遊びに変身している感触を強く受けました。

 さて、トレードショーは別にして、今回、サンノゼーロスアンジェルス空港を往復して感じたのは空港ターミナルビル内での乗客の少なさです。私が利用した便だけで無く、何か空港全体が閑散とした感じなのです。テロ事件の危惧に飛行機の利用控え、不況による出張者の激減、それにSARS問題によるアジア方面への旅行者の激減等など、航空業界を取り巻く環境の悪さを改めて実感しました。

 今日はシリコンバレーでのSARSに関わる話題を取り上げさせてください。香港、中国、台湾等アジアで広がったSARSの影響はアジアと人的にも経済的にも、アメリカの州の中でも特に西海岸地域に出ています。

 もう一ケ月ほど前ですが成田からサンノゼに飛んだアメリカン航空の機内でSARSに似た症状を訴える乗客が出たと云うことで大騒ぎになりました。サンノゼ空港に到着した便は、到着ゲートに着けず、空港敷地の遠隔地に一時駐機。患者の症状確認や病院への搬送。他の乗客で体の異常を訴える人がいないか?各乗客の滞在予定先の確認作業等の為に、乗員乗客の全員が4時間ほど機内で缶詰になって漸く開放された等と云う出来事もありました。

 ただ、乗客も受け入れ側もパニックに成らず、淡々と作業が進められたのには感心させられました。後日、その患者はSARSで無いと云うことが分かり落着した訳ですが、SARS患者と疑われた人の座席付近に座っていた乗客の方達は随分不安じゃなかったか?と思います。

 ハイテック企業の多いシリコンバレーにはアメリカに家族を残し、台湾や中国で働いている技術者や経営者の数はかなりの人数だと思います。彼らの多くは台湾や中国生まれでアメリカ国内の大学または大学院で勉強する目的で渡米し、卒業後、母国に戻らず、アメリカ企業に就職、アメリカで家庭を持ったと云う人たちが多いのですが、中国語と英語を自由に話せ、技術者や技術管理者として米国で10年〜15年の経験を持つベテランですから、工業化を推進している母国の企業にとってはとても貴重な人材であり、出稼ぎと云うより、スカウトされて台湾や中国に招聘され台湾や中国の企業で働いています。彼らの多くは母国で一旦は仕事をするけれども家族を伴って母国に戻ろうとはしません。

 このSARS問題で一時的だと思いますが、このような人たちが台湾や中国から戻ってくるケースが増えました。日本企業だと、まずは家族の帰国はともかく、本人は会社のことを優先させて現地に踏みとどまるケースが多いと思うのですが、彼らの対応は、やはりアメリカ人。まずは自分の身の安全確保です。また、アメリカ企業の多くは台湾や中国から戻ってきた出張者に対して、最低10日間の有給自宅待機のルールを適用したりする企業も多いことから、逆に出張したら仕事にならぬと云う訳で出張手控えの傾向も顕著です。

 先日、知人の働く台湾系の半導体企業のアメリカ事務所を訪問した時ですが受付も顔見知りで、いつもはほとんどフリーパスで、事務所内に入れるのですが、その時は名前?、誰に面会するのか?等などを用紙に書き込んでくれ!と言われました。ええっ?と思ったら受付のデスクの案内にSARS対応策の一環として、社外の誰が社内の誰に接触したか?の記録管理をしていること。

 場合によっては社員が握手を拒むことがあるかもしれないけれど、その旨は了解して欲しいと書かれてました。

 無論、カリフォルニアの人たちがSARSでパニックに陥っていることはありませんが、ビジネス上の影響は相当なものがあるでは?と強く感じています。

岩間@SJ

写真:先週ロスアンジェルスで開催されたE3ショーの様子です。