こちら編集室「さようなら2003年」(12月26日)

 今度こそ根雪かもしれないと思った雪が暖気であっけなく消えた。雪のない年の瀬となっている。例年なら屋根の雪下ろしとまで行かなくても山も平地も雪で真っ白になっているはずだ。暖冬?。スキー場には気の毒だが、暖冬なら暖冬で、なんとかこのまま時が流れて行ってほしい。いや山にだけ雪が降って平地は春のように・・・と期待するのは虫が良過ぎるか。天気予報では今日から再び雪のマークとなった。

 22日。角館町の温泉「花葉館」に泊まった。宿が主催する「クリスマスパーティに参加しよう」と妻の呼びかけからだった。「どうせ泊まるなら、実家の家族と楽しもう」と妻は全員に声をかけた。妻のことを語りたい。

 田沢湖町の駒ヶ岳(23日写す)一緒に暮らしてもう33年になるが、いつも感心するのはそのお金の遣い方である。自分のためには辛抱するが、実家の両親や家族のためなら結構、お金を惜しまない。靴下に穴が開いたら今は簡単に捨てる時代だが、妻の場合は違う。継ぎ接ぎしてでもまだ履けるものは履く主義で、自宅で履く専用の靴下として振り分けておく。ズボンでさえも「自宅での作業用ならこれでいいの」とひざに穴の開いたのを継ぎ接ぎして履いている。散歩用のズック靴も穴が開くまで履いた。

 自分のためにはケチるが、夫である僕のためにはあまりケチらない。もちろん飲みに出かけるような小遣いはあまり大盤振る舞いはしてくれないが、スーツなど衣類を買い求める時も結構、高いのを「生地がいいから」と案外、平気で買う。家を建てる時も初めて会ったと言うのにその晩のうちに「我が家もお願いしようか」と衝動買いのように建て替えをお願いし、本紙のスポンサーとなっている伊藤住宅の社長さんも「こんなお客さんは初めてだ」と驚かせた。

 それでいて100円とか、300円の品を買うのにとても時間をかけて考える。デパートでの買い物に付き合うとこちらがイライラするほど時間を食う。2〜300円そこらの商品を手にとっては仕様書を読み、決断するまで長い時間、迷う。こちらがイライラして「そんに考えなくても必要なものなら買ったらどうなの」と言っても「ウーン。だって・・・」と迷う。結局、付き合ってられないと今度は自分一人でデパートの洋服売り場を歩き、気に入った背広を見つけて妻を探し出すと「あら。いいじゃない」と16〜7万円のを「ウン。買ったら」とあっさりうなずく。そうした意外さがある。

 その妻が携帯電話を交換した。前から欲しがっていたカメラ付きの携帯電話にしたのである。その交換費用は9000円ほどだったが、交換するのを決断するまで約1時間かかった。パソコンは覚えようとしないのに携帯電話の使い方は一生懸命マニュアル書を読んで覚える。そしてカメラの使い方を覚え、写真の送信方法も覚え、「あなたの携帯電話に写真を送るからね」と楽しんでいる。カメラ付きの携帯電話がよほど嬉しかったのか「これは成功したね」と暇を見ては使い方を勉強している。交換を決断するまで1時間もかかったが、今は心底喜んでいる。

 さて「花葉館」に実家の家族全員を招いた。妻の実家は今、80歳になる母と兄さん夫婦、それに子供夫婦とその2人の子、そして妻の姪の8人家族である。全員を泊めたいと声をかけたが、兄夫婦は翌朝の仕事の関係でパーティだけの参加だった。そして姪は風邪を引いたとかで参加を見送った。結局、泊まったのは母と子供夫婦とその幼い子たち2人と自分たちの合わせて7人だった。それでもパーティの席は9人と大いに賑わった。

 子供夫婦は4歳と1歳の二人の子育てに奮戦中で、泊まり込みで温泉に遊びに出かけたことは最近ないとかでこの日のパーティをとても楽しみにしていた。子供たちを連れて早めに宿に入り、温泉にもつかったと喜んだ。そして「これは家族みんなから伊藤さんへのクリスマスプレゼントです」ときれいにパッケージされたプレゼントがあった。中を開けたら自分と妻へのカシミヤのセーターだった。実家の家族の温かい気持ちが嬉しかった。

 パーティではビール、お酒が飲み放題だったが、実家の家族は余りお酒は飲む方でなく結局、自分一人で飲んでしまった。それでも大勢の宴会客と共に過ごす夜は楽しく、特に幼い子供たちにとっては初めての体験だったようで喜んだ。見知らぬ隣の席に遊びに行っては「可愛いねー」と声をかけられてはしゃいだ。その晩は「二人とも興奮状態で深夜まで寝なかった」と翌朝の食堂での報告だった。

 「実家の人たちに喜んでもらいたい」と気づかう妻の心意気には感心する。実家の父が亡くなる数年前にも妻は「歩けるうちに連れて行きたい」と北海道の旅を企画したり、青森の温泉巡りもした。その都度、実家の父は「マサオさん。仕方ねナ。いっぱいお金を遣わせて」と気づかった。軍人上がりで、市議会議員までやった誇り高き妻の父が、娘ムコだからとまだまだ青二才だった自分にお礼を述べた。優しくていい父だった。

 とにかく自分のためには辛抱しても、実家の家族や友人との付き合いにはお金を惜しまない妻のアイデンティティーには感心する。角館町の温泉「花葉館」に泊まって改めてそう思った。年の瀬も押し詰まってきた。「こちら編集室」も今年はこれで最後としたい。この一年、辛いこと、悲しいこともあった。一方で夫婦でアメリカへ旅するという記念すべき年でもあった。さようなら2003年。読者のみなさま。お世話になりました。良きお年を・・・。