西木村出身の詩人・小田嶋忠宏さんの「詩集(6)日本列島嶋歌-----あるいは幻想への旅記」(04・01・23)

〈序詩〉
 

だれだったろう教えてくれたのは 海へ
芭蕉の忠敬の東国を離れた齢の数霊が彷徨う
 

諸島の旅、病めるものと書く一枚の斯業(しぎょう)。
鳥は泊まる
冬枯れの叢林に草本に大地に
それが、〈嶋〉。
 

一九七三年亡国の岸辺を離れ
客船フェリーは時間を持て余して着岸する。
波立つ航路、略字の〈島〉に。
 

列島。ぼくの背後で逆立つ
昨日までの
蹉跌の暮らしのすべてが。
喪失してしまったのか奪われたのか
この列島の季節は。
 

島嶼、二対の潮流、二行の歌。
ぼくは逃げるものばかりを追う
そこに聴く囀る嶋の歌を。
 

睦月の雨。
 
 

あれから
日本という列島をフェリーで離れる
俗字の〈嶌〉を
もう遠い日のことだが東国も。

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プロフィール
1957年生まれ。西木村出身。横浜在住。
主な詩集に『コスモスロード』(紫陽社刊)
『宇宙消滅』(紫陽社刊)ほか。