西木村出身の詩人・小田嶋忠宏さんの「詩集(6)『北方四島」(Hoppoyontou)』」(04・02・01)
 

もはや失うものはない されど雪
深紅も美もみた四島の島影夕まぐれにさみしいという文字はどう書く
 

幾たびにも重ねられてきたその蹉跌
潮風を孕ますそぼろ髪は北方の凍てつく血にそよぐ
 

ふたつの海を分けて弧状の列島に埋まる土器
住むものはだれかとぼくは荒れた漁師小屋の戸を叩く不在に
 

アイヌの人々やよいの海風に歴史の図式は吹かれる
江戸幕府松前藩オランダロシア明治政府旧ソ連日本政府根室海峡
 

還って来られるように子どものころに手折った枝折(しおり)
あの道標をさがして夕暮れのはてない海辺明かりのない我が家
 

ぼくらは今誰も見ぬ時代を生きる
木々の結実は短い春夏を経て人の秋人の冬群青を渡る鳥よ
 

さよならの彼方へ北方と書いた旅記に
一艘の漁船が色丹水道緯度44゜を南下したあれは誰の漕ぐ手か

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プロフィール
1957年生まれ。西木村出身。横浜在住。
主な詩集に『コスモスロード』(紫陽社刊)
『宇宙消滅』(紫陽社刊)ほか。