西木村出身の詩人・小田嶋忠宏さんの「詩集(7)『家族のわすれもの』」(04・02・23)
 

 〈苦しかった。あとは生きるのみだ。〉

 
 根がなければ枯れるでしょ草も木も花も
 取り残された男のようにぼくの夜だけはひんやりしている
 
 
 帰ってくるのか戻ってくるのか言葉に定めがつかず
 出て行ったのか逃げたのか定めもつかない妻と子は家を出る
 
 
 黙ったままの父親を残して 「また、来るからね」とこどもたち
 ぼくの子であり妻の子でもあるのだからまたきてね
 
 
 世界が背中合わせになってほんとの温度を感じる
 一人の世界を充たしもうひとりの世界を満たす思想はないものか
 
 
 わすれ残したものはないかと妻が家にくる
 わすれていませんかいちばん厄介な魂という荷物ぼくのことこの僕を
 
 
 否!とぼくは心の中で叫ぶ
 破れたYシャツ朝6時の弁当初めて洗った妻のパンツをわすれていたのは僕
 

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プロフィール
1957年生まれ。西木村出身。横浜在住。
主な詩集に『コスモスロード』(紫陽社刊)
『宇宙消滅』(紫陽社刊)ほか。