「春はあけぼの」と讃えたのは清少納言だったか。だんだんあたりが白んでいくにつれて、山ぎわの空が少し明るくなり、紫がかった雲が細くたなびいていると「枕草子」の冒頭で彼女は春のあけぼのの様子を語っている。毎朝5時ごろには目覚めて、朝の散歩が続いている。夜明けが次第に早まり、山ぎわの空が明るくなっていく様子を眺めると本当に春はあけぼのこそ美しいと思う。
小犬のパピーはお尻を左右に振って元気に歩く。まるで自分たち夫婦の子どものように安心感いっぱいの姿で前へ前へと進む。「パピー」と呼びかけると耳をピーンと立て、クリクリした目を輝かせて振り返る。その仕草が可愛い。早朝の散歩。パピーは心和ませてくれる。
前から欲しいと思っていたスキャナをやっと買い求めた。「秋田県南日々新聞」を立ち上げたのが96年12月であり、その時にスキャナも用意しようと思ったが、予算が追いつかず諦めていた。このためポスターやプリントされた写真などを記事に取り込む時はそれをカメラで複写して、使っていた。小さな写真だと接写しての撮影のため、時にはピンぼけや光りの乱反射でハッキリしない映像になったりしていた。
それでもどうにか間に合わせていたが、鈴木三郎さんの「野鳥散策」が始まってからは悩みのタネだった。なぜなら鈴木さんはビデオで撮影した野鳥の生態をプリントしてこちらに届ける。そのプリントを自分のカメラで複写してケンニチの「野鳥散策」に掲載しているのだが、カメラでの複写は光りの状態がモノを言う。
太陽光線の下で複写すると反射もなく、ほぼ原板に近い色が再現されるが、屋内のしかも蛍光灯の下で複写するとせっかくの美しい写真も色が濁って困っていた。それでは野鳥撮影者の鈴木さんにも申し訳ない。だからと言って、いつも天気がいいのを待って撮るわけにはいかない。ましてや冬は青空は滅多に見られず、鉛色の空ばかりだ。
そんなこともあってスキャナの購入を考え、相談してみたら「スキャナ」だけなら1万円そこらの値段になったという。ケンニチを立ち上げたころはとてもそんな値段ではなかったはずだ。安くなったものだと感心し、パソコン関連用品も販売している市内の大型電器店を歩いたら、確かに1万2〜3千円で買える。
しかしパソコン音痴はそうした大型電器店で安いスキャナを買い求めても、それを自分のパソコンに取り込み、使えるようにすることはまず不可能だ。結局、我が家の家庭医ではないが、パソコンも含め電気関連のことなら何でも相談に乗ってくれる小松電気の息子さんに話をした。
その息子さんが言うには「スキャナだけより、コピーや写真のプリントもやれる複合の機能を備えたのが良くないでしょうか」と提案する。その上で値段も調べ、3万円ほどの機械を取り寄せた。そしてパソコンへとインストールし、使えるようにしてくれた。そのインストールとかいう作業を見ていたが、とても自分の手に終えるものではなかった。パソコンとその周辺機器は自分にとってはナゾの世界であり、未知の世界である。
とにかく1時間ほどの作業を終え、今度はその使い方を習った。写真のスキャナの仕方に始まり、写真のプリント、そしてコピー、印刷と教えられた。なるほど小松さんが側にいて指導を受けた時は「簡単じゃないか」と思った。だがあなどったのは間違いだった。パソコン音痴の自分はそれこそ無知、無能なのである。簡単だと思った操作が翌日になってみるともう忘れてしまい、スキャナの仕方も写真のプリントの仕方もみんな頭になく、混乱してしまった。
それでもどうにか写真のプリントはやれたが、スキャナの方は駄目だった。結局、小松電気に電話して再び夕方、我が家に足を運んでもらう始末となった。スキャナをかけるにも画質を高める方法と普通の画質でスキャンする方法とがあった。それも教えられ、とにかく鈴木さんの「野鳥散策」の取り込みは何とかうまくいった。
しかしさすが専用の機械である。これまでのようにカメラで複写して編集するよりも画像はしっかりしているし、色もほぼ原板と変わらない。作業も格段と楽になった。その上これからはチラシ程度の小さなポスターなんかもそのスキャナで簡単に取り込めると喜んだ。
デジカメで撮影した写真もそのスキャナでプリントしてみたが自信を持って相手にプレゼントできるほどの美しい仕上げとなる。スキャナ、そしてインストールの作業賃とプリント用の紙代も含めて3万6000円ほどかかったが、買って良かったとほぼ満足している。
だがそのスキャナ。どう見ても無骨な事務機にしか見えない。家庭の中に置けるような代物ではない。しかもテレビの前に置いただけに死角になってしょうがない。写真のプリントや新聞のコピー、そしてケンニチの記事の印刷など便利でとても役立つのだが、テレビが死角に入ってしまい良く見えない。それほどテレビを観ているわけではないが、ニュースなどはやはり画像全体を見たい。テーブルを前にしての夕食をとりながらのテレビは首を伸ばしての観賞となってしまった。
便利だが不便な生活となってしまった我が家。スキャナを見つめながら首をひねった。電話、パソコン、そしてテレビに応接セットを用意したケンニチ専用の事務室兼編集室があればなと。便利な市街地の中心部に事務所を借りても月々の収入を考えたら、一カ月分の家賃で消えてしまうかと妻に話して笑った。
それでもスキャナは新しい夢を運んできた。先日、岩間さんが大曲市に来た時に写した記念写真はきれいにプリントして、岩間さん歓迎の夕食会に参加してくれた友だちに贈った。そして一枚は我が家の思い出の写真として額装した。帰国した岩間さんからも横手市の公園で撮ってもらった記念写真が送られてきた。それもプリントしてアルバムへと入れた。ケンニチに備わった新しい機械は狭い我が家を不便にさせたが結構、楽しませる。