こちら編集室「雪寄せの朝」(12月16日)

  大雪のニュースが伝えられている。16日の朝日新聞朝刊を飾った屋根の雪下ろしの写真を見て正直、ゾッとした。新潟県津南町では積雪が231センチを記録したという。自分も雪国に生まれ、雪を見ながら成長し、雪には慣れているが、積雪が2メートルを超えるとなると想像もつかない。いずれにしても雪国・津南町でも観測開始以降、12月としては過去、最高の積雪だという。

  テレビでも津南町の雪下ろしの映像が流され、インタビューを受けた女性の方が「12月にこんなに雪が降ったのは経験がない」と嘆いていた。屋根に積もった雪は人の背丈より高くなっていた。その屋根に上って、雪を下ろす作業を目にしながら本当にお気の毒と思った。

  そして「お願いだからこっちには来ないで」と大雪の魔の手が秋田には及ばないことを祈った。しかし、わが家でもこの一週間、毎朝夕、玄関前から車庫、勝手口への通路、そしてお隣の玄関前の雪寄せが日課となった。

  丸子橋に飾られたイルミネーション朝5時。小犬のパピーの目覚めの声と同時にベッドから離れ、着替えを済まして表の様子を確認する。除雪車が走ったようで玄関前には雪の塊が置かれている。その上、深々と雪が降り続けている。

  雪を迎えるようになってからわが家では妻と話し合って、除雪車が走った朝は散歩を止めることにした。除雪された後の雪の路面はスケートリンクのようにツルンツルンと滑るからだ。最近の冬靴には底にスパイクを打ったものもあるが、除雪車が走ったばかりの路面はそのスパイクも何の役に立たない。ツルンと滑ったら最後、両足を救われ、まともに全身を堅い路面にぶっつけてしまう。転倒して手首を折ったり、腰を痛めてもしょうがない。冬道はとにかく危険は避けよう。

  しかし、散歩を止めたとはいえ小犬のパピーだけは朝の散歩を日課とし、楽しみにしている。しかも、一晩中、狭いケージの中で過ごし、おしっこを我慢している。その生理現象だけは解消させてやりたい。仕方がないからパピーだけはどんなに雪が降っていても朝の散歩に連れ出すことにしている。パピーと歩く時は除雪車の刃で均された路面でなく、多少歩きにくくても雪が積もった隅っこを歩くことにしている。滑って転倒するのが怖いからだ。

  小犬の雪道の散歩用にといろいろな洋服を買ってみたが、最近、最も便利だなと思ったのはやはり構図が単純な服だった。それは首を通す穴と前足を通す穴の3カ所の空間のある洋服である。Tシャツをそのまま小犬用にしたようなものだ。この単純な洋服を着せるだけでパピーの背中とお腹は雪で濡れない。

  そのパピーを連れてまだ夜明け前の雪降る道を歩く。闇を突いて天から深々と降って来る白い雪。そして夜の底に埋もれるようにたたずむ家々。それを照らす街灯。雪は困りものだが、新雪がもたらす厳粛な美は何ともいえない。夜明け前、降り続ける雪の中、白と黒の単純な色彩で染まる風景を観ているのは好きだ。

  自宅周辺を一周し、帰って来ると着替えを済ませた妻が表に出てせっせとスノーダンプで雪寄せをしていた。体力的にも年々、雪寄せも辛くなってきたが、小さな体をこまねずみのように動かし、雪と格闘する妻の姿を見ていると雪寄せもまた楽しくなる。

  でも雪の神さま。どうぞ雪のプレゼントはほどほどの量で抑えて下さることをお祈りします。