雪寄せ、雪運びで痛めた右ひざの鈍痛はまだ残ったままだ。ほぼ毎日、整形外科のリハビリ室に通って電気マッサージを受けている。そして週1回のひざへの注射も3回目となった。注射はひざの潤滑油の役目を果たす薬を打つためのもので、4回から5回で一応の治療は終わるとの事だった。そうするとあと1回か2回なのだが、果たしてそれまで完治するものだろうか。不安が残る。
お医者さんからはこれまで2度、「どうですか。少しは良くなりましたか」と尋ねられたが、先生の期待する回答にはならず「はあ。少しは楽になったと言ったらいいのか、いずれまだイスから立ち上がろうとひざに力を入れると痛みが走って」と答えるしかなかった。そう簡単に痛みは消えそうになく、長期戦になりそうだ。
イスに座ろうとひざを折り曲げるとビリッと鈍痛が走るため、取材先では立っていることが多い。そのせいか今度は足全体が疲れたようで、右足首がむくんできた。マッサージを終えた後、右足のむくみを見つけた看護婦さんが「あら!。どうしたんですか?。ひどくはれてますよ」と驚いた。そしてお医者さんを呼んで診察してもらったが、原因が分からず「また無理をしたかもしれませんが、もう少し様子を観てみましょう。寝る時は巻いたタオルの上に足を乗せて下さい。血流が良くなりますから」とアドバイスを受けた。
無理はしたくはないが、その日も帰ってからは裏の雪寄せ、雪運びをしなければならなかった。妻には「日中、表の雪寄せはしてもいいけど、裏側にだけは絶対、一人で行っちゃだめだよ」と固く注意した。
雪の柔らかい所に足を取られと、体ごと雪の中に沈んでしまい、力がないと雪の中でもがくばかりで上がれなくなるからだ。屋根から落ちた雪は固く締まっていて、上がって歩いても大丈夫だが、そこから踏み外して柔らかい所に足を入れるとそのまま体が持って行かれ、雪の中へと腰まで潜ってしまう。そうなると雪からの脱出も大変だ。この冬は何度かその経験をした。以前ならもっと簡単に脱出できたが、体力がなくなったせいか、今年は柔らかい雪の中でもがきながら抜け出した。それが心配だから妻には裏の雪寄せだけは一人でしないようにと注意した。
ともかく着替えもせず、アノラックを着てスノーダンプを手に裏に回った。19日は吹雪だった。その吹雪が運んだ雪と屋根から滑り落ちた雪が裏側にはたまっていた。その雪の山を崩し、運ばないと居間の窓がふさがれ鬱陶しくなる。放って置くと雪の山はさらに高くなって、運ぶのにも苦労する。
夕飯前と言っても晩酌をする前のひと仕事だと夜の雪寄せを始めた。雪の山にスノーダンプを当て、右足で踏ん張りを付けて突っ込ませ、持ち上げる。そして流雪溝のある表の道路まで運ぶ。スノーダンプを引っ張りながら歩く。最初のうちは良かったが、5〜6回と繰り返したら右足のひざがうずく。鈍い痛みがヅキヅキと感じる。
台所に立っていたはずの妻もいつの間にか着替えて「アタシも手伝う」と出てきた。いつもの事だが、自分は作業をする場合、余り段取りというものは考えない。行き当たりばったりで取りかかる。だから失敗も多く、後悔するのだが、妻の場合は違う。まず薄暗い所での雪運びはケガの元と庭に面した寝室の窓際の電気スタンドにスイッチを入れ、雪の山となった裏庭を煌々と照らした。そして雪寄せ、雪運びの段取りを付けて手伝いを始めた。
雪寄せも暗い所でやるより、明るい所だと気持ちも明るくなる。そして一人より二人だと雪を運ぶ作業も楽しくなる。小さな体の妻だが、一生懸命、スノーダンプで雪を運ぶ姿を見ていると足の痛みも忘れる。家の中では小犬のパピーが詰まらなそうに長いすの上で丸くなっていた。居間の窓際の雪片づけにもめどが付き、妻と肩を並べながら小犬のパピーの姿を眺めた。「わが家の長男が一番、可愛い」。妻の口癖がまた出た。