こちら編集室「500円貯金」(2月3日)

  先週の金曜日夕方、アメリカの岩間郁夫さんが「中国からの出張の帰りで時間が空いたから」とわざわざ秋田まで足を運んでくれた。昨年10月、私たち夫婦は岩間さんの案内でボストンとニューヨークの旅を楽しませてもらった。

  そのお礼も兼ねて岩間さんを歓迎したいと知り合いの大仙市職員の斉藤さんにも声をかけ、妻と3人でささやかな夕食会を開いた。秋田の雪の大変さはケンニチのニュースやアメリカで見るテレビニュースで知っていて、これまで何度かメールでのお見舞いをもらっている。秋田新幹線「こまち」で岩間さんが大曲駅に着いたのは午後5時22分だった。

  もう薄暗くなっており、これといって案内する場所もない。それならタップリある雪でも見てもらおうと車で商店街を中心にぐるっとひと回りした。屋根に積もった雪。除雪車で寄せられ、道の両側に出来た雪の壁。そしてデコボコになった雪道。まさにどこもかしこも雪だらけである。幸いなのはあのドロドロに汚れた黒い雪ではなく、真っ白な美しい雪だった点である。

  駅を出た途端、その雪景色が目の前に広がり、「さすがすごいですね」と岩間さんは驚いた。岩間さん自身、雪を知らないわけではない。金沢大学を卒業した方であり、金沢のタップリと重い雪は体験している。しかし、現在、住んでいるアメリカのサンノゼ市は雪とは縁のない温暖な地域であり、もう雪は岩間さんにとって遠い存在であり観光だろう。

  こちらは雪に泣かされ、雪との毎日の格闘で体はヘトヘトになり、雪への恨みは腹に積もっているが、不思議なもので雪と縁のない人が遠くから来てくれるとタップリとある雪がむしろ嬉しくなる。車で岩間さんを案内しながら、「わが家の雪下ろしで掛かった費用の3万円なんて安いもんですよ。この辺の古い商家なんかは屋根も大きいし、下ろした雪を捨てる場所もないからトラックで運ぶんです。ですから雪下ろしに作業員だけで5〜6人、そしてトラックも使うから1回で10万円以上ものお金が消えてしまいます」と吹聴した。

  「そうですか。そりゃあ大変ですね。雪国で暮らすにはお金もかかるんですね。いやーしかし、本当に大変な雪です」。

  うなずく岩間さんの声も弾み、その声を聞くだけで嬉しかった。後ろの席に座った妻も「岩間さん。ホラ。あすこの雪の壁。すごいでしょう。見て!見て!」とはしゃぎ、二人ともまるで雪の自慢だ。

  20分ほどこうして商店街を車で案内し、いつものグリーンホテルへと向かった。今回の雪の中での岩間さんの歓迎をどうしたらいいか考えたが、一番の心配は不慣れな雪道での転倒だった。第一、中国では上海や香港、そして日本では大阪や東京など大都会を舞台にビジネスで飛び回っている岩間さんだ。雪国用の靴を履いているはずがない。

  夜の街を歩いて雪道で転倒されても困ると思い、夕食会はホテルの中のレストランを会場にした。午後6時ごろちょうど斉藤さんも顔を見せ、岩間さんとの再会を喜んだ。そして和室だが、イスに座ったように足を入れられる席に陣取った。

  ホテルのレストランと言っても大仙市大曲を代表する和風料理店の経営者がテナントとして運営しているだけに味の面でも心配はなかった。和風料理セットにイカ焼きや牛タン焼きを注文し、秋田を代表する「キリタンポ」も頼んだ。

  斉藤さんも交えての夕食会は話も弾んだ。やはり話の中心はアメリカの思い出となり、「もしもまたアメリカに行く機会があったらラスベガスとニューヨークにはもう一度、行ってみたい」とこちらは夢を語った。それを聞いていた岩間さんは「そうですか。なら今度もニューヨークに行って、そこからナイアガラの滝の見学なんかいかがです」と3度目のアメリカへの旅を誘った。聞いていた妻は「同じ所よりもっと別な所へ行ってみたい」と手を挙げた。岩間さんも「そうですね。せっかくの旅ですから、もっといろんな所を見るのもいいでしょう」とバンクーバー、ビクトリア、カナデイアンロッキーのコースを勧めた。そして「早速、そのコースを検討してみましょう」とも。斉藤さんも「僕も行きたいですね」と同調する。もちろん、大歓迎である。

  岩間さんを大曲に迎えた場合、案内する夜のお店はいつも決まっている。雪道が心配だったが、歩道もその夜はきちんと除雪されており、夜の町を4人で歩いた。「アメリカの岩間さんがまた来てくれたよ」とドアを開け、ママさんの歓迎を受けたまでは記憶に残っているが、そのお店でどんなお話をしたのかは忘れてしまった。ただとても強くて美味しいウイスキーを夢のような気分で飲んだのを覚えている。

  翌朝、早い列車で京都に向かった岩間さんからは「早速、アメリカの旅の日程を考えてみます」とメールでのお誘いがあった。しかし、昨年行ったばかりであり、それほど余裕もない。妻とも話し合い、今度の旅は来年以降とし、それに向けて毎日500円玉貯金を始めようと誓い合った。