病気のため04年6月の「家族風景論十八景」以来、休載していた小田嶋さんの詩の掲載が再び始まります。小田嶋さんは1957年、当時の仙北郡西木村出身。神奈川県立横浜翠嵐高等学校卒。横浜在住。これまでの詩集に『コスモスロード』(紫陽社刊)、『宇宙消滅』(紫陽社刊)がある。また短編集『んだら、な!』(文芸社刊)ほか雜文多数。現在は和紙の出版社「横濱文庫」編集長、学習塾「横濱文庫」塾長。
あじさい
「あなたは、りっぱな芸術家になってください」と
言われて電話を切ったのは二年前のことだった。
〈人間失格〉となったぼくが
入院をする直前のその会話が最後の会話になった。
二年前、ひっそりと、
あなたは、自死してしまったのだという。
そのことを、つい、最近まで
ぼくには伏せられたままだった。
Tさん、なぜ、ぼくらは
まだ、生きなければならないのだろう?
ひっそりと
ひっそりと
〈りっぱな芸術家〉にもなれず
よたよたとよたよたと町を歩く人影とすれ違う。
あじさいは、紫。
あじさいは、青。
あじさいは、白。
と、呟きながら
今日も青梅雨のあめの通りを。