日曜日の朝、今冬2度目の雪を迎えた。15センチほどの積雪があった。真っ白になった道を歩くことにした。長靴を履いて歩いた跡をライトで照らしたら、8つの足跡が夜の底の白い道にトボトボと残っていた。丸く判でも押したような小さな4つの足跡は小犬のパピーのものであり、その横に自分たち夫婦の足跡がクッキリと並んでいた。車も人もまだ誰も通ってない真っ白な雪道を、自分たちだけが歩いていると思うとロマンチックで、ちょっと自慢だった。横手川の橋を渡り、小学校に向かって真っ直ぐ歩いた。
歩き出して困ったなと思ったのはパピーの4つの足に雪が玉となってくっつき始めたからだ。子どものころはそれを〃ボッコ〃と呼んだ。雪の降り始め、下駄を履いて歩くとその底にボコボコと雪の塊がくっつき、歩くのに難儀したものだった。ボッコはスキーにもくっついて、滑りにくくした。
体中がフワフワした毛で覆われているパピー。その小さな足にくっついた雪はさらに雪をかき集め、いつの間にか雪だるまをいっぱい付けて歩いているような状態となった。それでも一心にパピーは歩いた。2人の家族の支えとなって歩こうとしているようだった。
途中で何度か抱き上げ、その雪の塊を取ってやろうとしたが、足の毛をふかく吸い込んだ雪の塊を無理に引っ張ると痛がる。家に帰ってからお湯に入れて解かすより方法がなかった。雪道を漕ぎ、せっせと歩くその姿が可愛くて何度か写真に収めた。
日曜日。朝の散歩を終えてから、玄関ホールにクリスマスツリーを飾った。高さ75センチほどのツリーはわが家の自慢である。2年前、わらび座のホテルに泊まった時、ホテルの従業員の方からプレゼントされた「雪だるま」の可愛い人形、そして昨年のニューヨークの旅でクリスマスデコレーション専門店から買い求めたサンタさんなど素敵な飾り物があるからだ。それを飾ってやっと冬を迎えたなと実感した。
先週、秋田県南日々新聞は10年目を迎えたと「こちら編集室」で書いた。その10年に対して「読者の意広場」を通じてのお祝いやメールでのお祝いがあった。本当に自分でもよく10年間一人で、コツコツと続けてきたものだと思う。
その10年目のお祝いとして自分の新聞運営を技術的な面でサポートしてくれているわらび座デジタル・アート・ファクトリーの海賀孝明さんからプレゼントがあった。それは毎日の訪問者数をグラフに記録すると同時に世界地図も描かれ、ケンニチの読者はどこにどのくらいいるかを示してくれる。その地図を観ると、日本はすべて「○」で埋まり、福岡から広島、三重、静岡、東京、山形、岩手、札幌までと全国各地に読者が散らばっているのが分かる。その上、世界では中国やマレーシア、それに南太平洋の島々、そしてアメリカでは西海岸、東海岸の都市にも読者が散在している。ケンニチは世界につながっているんだと胸を高まらせた。
そうしたことを喜んでいたら先月末、「小学館ですが……」と携帯電話が鳴った。何かの聞き違いかなと思いながらも耳を澄ますと紛れもなく「小学館」であり、「新しい絵本を送りたいので、住所を教えてほしい」との事だった。まさか「小学館」という大手出版社から、絵本の紹介依頼が飛び込んでくるとは思えなかったが、住所だけは知らせておいた。
それから間もなく「冊子小包」が自宅に送り届けられた。差出人はやはり「小学館」であり、あの電話は本当だったのかとまた驚いた。そしてこのような大手出版社からまで絵本の紹介を依頼される責任の重さを感じた。
小包を開いてみると中には「十二支のはじまり」と題した素敵な絵本が入っていた。絵本とは縁のない貧しい家に生れ育ったが、お世話になっている大曲図書館でこのごろ、様々な絵本を手にし、心いやさる体験を何度かした。涙を流しながら読んだ絵本もあった。絵本は心をいやし、心を洗濯する心の薬だとその時、思った。
取材には行かなかったが、大仙市の広報12月1日号にノンフィクション作家の柳田邦男さんが大曲中学校で講演し、「大人こそ絵本を読むべし」と絵本の魅力を語ったと掲載されていた。本当にその通りだと思う。
今回、送られてきた「十二支のはじまり」も表紙に描かれた絵を観ているだけで心が温まる。神さまを中心に十二支の動物たちが描かれ、どれもみなほほえましい顔だ。読み始めたら止められず、最後のページまで一気に目を通してしまった。
神さまの下(もと)にあわてて駆けつけたトラや龍(たつ)、午(うま)、巳(へび)たちの顔がいい。十二支は神さまの下に一番に駆けつけたネズミから始まり、そのネズミを背中に乗せて到着した牛が二番目となる。三番目となったトラが「はやあしじまんの この おれが さんばんめとは なさけない、ガオーッ」と大汗をかいてうなった表情がいい。
「十二支のはじまり」を手にしていると、子どもに絵本を読み聞かせしている優しいお母さんの表情が目に浮かんでくるような気分だった。絵本を通じて母と子が心を結び、夢をみる。絵本は母と子の心を包む神さまの手かもしれない。
小学館出版局「おひさま」編集部からはその後、本紙に鄭重なお礼のメールも届いた。絵本は人と人をも結ぶ力を持っていると思った。