今年も間もなく幕を閉じようとしている。明後日はクリスマスイブだ。この日に備え、ケーキも注文している。甘いお菓子より、ビールやお酒を飲んでいる方がありがたいが、せめて24日は晩酌の前に2人とオチビさんのパピーとでケーキを囲んでクリスマスを楽しもう。
12月になってからの喜びは帰宅して直ぐ、玄関ホールに飾ったクリスマスツリーに電気を入れ、明りを灯すことだ。赤や青、黄色の小さな電球がチカチカと点滅し、ツリーが目覚めるととても幸せな気分になる。クリスチャンではないが、せめて12月はクリスマスを楽しもうと思う。
帰宅すると妻はパピーを抱いて「お帰り」と玄関まで迎えてくれる。本来ならその妻に「ただいま」と答えるべきだが、わが家では小犬のパピーに「今、帰ったよ」とあいさつするのが習慣となった。妻の腕に抱かれたまま、自分の姿を確認するとパピーの目はいかにもホッとしたような落ち着きを見せる。これで一家が揃ったと安心するのだろう。
このごろ、欲しいと思うものが一つ増えた。それはライカ社が発売したデジタルカメラ「ライカM8」である。ライカ伝統のレンジファンダー式(距離計連動)のカメラで、まだカメラ雑誌でしか観ていないが、カメラ好きの人なら一目惚れしても不思議でない魅力的なデザインだ。
新聞社に入って自分でカメラを買い求め、そのうち写真が趣味に転じた自分にとってカメラは何をさて置いてもニコンだった。しかも、「ニコンF」を持つことが憧れで、20代のまだ若かったころ、自分の給料の4〜5倍もするそのカメラが欲しくて、夢にまで見た。妻に助けられ、そのカメラを買い求めた時は「一生、大事にするぞ」と誓ったものだった。その後、ニコンFブラックも加え、カメラ2台を肩に下げて北海道、京都の旅も楽しんだ。
その当時は白黒写真で、自宅に暗室も作って写真を現像し、焼付けもした。妻と歩いた北海道と京都の旅の写真はアルバムに貼って今も大切にしている。そのアルバムを開くと今でも自慢できる「作品」が目に飛び込んでくる。昭和新山の峨々たる姿。大雪山公園を歩いた時の清々しい風景。知床半島を訪れ、知床五湖の神秘的な美しさ。オホーツクの海の荒涼とした寂しさ。「本土から来たのか。本土はいいな」とうらやんだ漁師を海を背景に写したたくましい笑顔。そしてクマ公園で捉えたヒグマの猛々しい姿。京都や奈良では案内のバスガイドが驚くほどシャッターを切り、神社仏閣を写した。苔寺、金閣寺、東大寺、法隆寺、哲学の道、知恩院などが今のアルバムの中で生きている。自分の大切な財産だ。
あのころライカはそれこそ高嶺の花で、欲しいとも思わなかった。ニコンF、その後のニコンF2、そしてニコンF3と買い足し、それで満足だった。だが、時代はフイルムカメラからデジカメへと変わった。
インターネット新聞「秋田県南日々新聞」を手がけるためにはどうしてもデジカメが必要で、10年前、それこそ写ればいいだけの機能を持ったカメラを買い求めた。それからこれまで5台のカメラを使いこなしている。今、使っているのもライカのカメラだが、これはパナソニックと共同開発したものだ。いわゆるレンジファンダーのデザインを踏襲したものでそのカッコ良さが気に入って買い求めた。
ニコンなどの一眼レフカメラに比べたら機能は不便このうえないが、クラシックな感じのデザインが好きで今も満足している。しかし、ライカが独自に出したデジタルカメラはまさにライカそのものだ。高嶺の花だったライカがそのままデジカメになって登場したのである。
カメラ雑誌ではその「ライカM8」の登場を特集を組んで詳細に報告している。一見しただけで「ウーン。いいな」とうなってしまった。忘れ掛けたカメラ小僧の虫がモソモソと動き出した。しかし、その値段を見てもうなってしまう。確か55万円前後だった。自分が今、使っているカメラの2倍以上の高さだ。しかし、そのカメラを開発した技術者の言い分がまた気を引く。「M8は5年後でも10年後でも、最上級の写真を得ることができます。スローガンは『デジタルカメラとして初めてタイムレス(永遠)に使えるもの』です」と強調するからカメラ小僧の虫をうずかせる。
土曜日。もしかしたらと横手市のカメラのチェーン店を訪ねた。本物はなくても、せめてカタログぐらいは置いてあるのではないかと期待しての訪問だった。しかし、そのカタログさえ店内にはなかった。近くの店で買い物をしていた妻に「カメラ店に行ったけどカタログさえなかったよ。どうせこんな田舎では50万円もするカメラのカタログを置いても買う人もいないだろうと思っているんだ」と愚痴を吐いた。妻は「そんなふうに思わないで、カメラを見たいからと頼んだら良かったのに」とさらりと言う。
その口ぶりは「そんなに欲しいものなら買ってもいいのよ」とでも言っているように聞こえた。妻は時々、「アタシはいつだって『功名が辻』をしてるんだから」と話す。ライカというカメラも妻にとって、それほど欲しいものなら買ってもいいとでも思っているのだろう。嬉しいひと言だった。
しかし、その勇気はまだ沸かない。このごろは欲しいものは買い求めるより、夢として追い求めているだけでいいと思うようになってきた。それにしてもライカのデジカメは悩ましい。(今年のこちら編集室はこれで休みたいと思います。みなさまどうぞ良いお年をお迎え下さい)