こちら編集室「トレーニング」(9月7日)

  退職してもう4カ月が過ぎた。自由な時間を胸に刻むように大切に過ごしたいと思いながらも、その難しさを実感しているこのごろだ。マイペースとは言え、取材や原稿を書いているといつの間にか一日が過ぎ、「今日は何をしていたんだろう」と夕方になると逃した時間が急にもったいなくなる。それでも「明日があるから、いい」と思い直せるのも自由さからかもしれない。

  8月。ケンニチは「Google  Analytics」によって世界の都市に読者がいるんだと書いてから、しばらく休んだ。お盆休みをしようと筆を置いたら、その翌週は我が集落の神社のお祭りであり、それまで休もうと思った。さらにその翌週は「大曲の花火」であり、この花火大会が終わるまでは夏休みにしようと「こちら編集室」を先延ばしした。そして次の週はアメリカの岩間さんが訪ねてくる。それまで休もうと思った。

  退職してからも緊張感を持って毎日、取材活動を続けたいと思ったのだが、継続するということはかなり難しいというのがこのごろの実感だ。ノンビリしたい、楽しみたいという怠惰な願望が強まって、仕事よりも自分のための時間を持ちたいという甘い誘惑へと走る。しかし、その甘い誘惑も自分の健康のためなら優先させても良いだろうと先週から健康増進施設「ペアーレ」に通って足腰のトレーニングを始めた。

  毎朝の散歩で足は鍛えているつもりだったが、大分前から長時間膝をついているとスムーズに立てなくなっていた。それこそ「どっこいしょ」と気合を入れ、何かに縋らないと立てず、しかも、膝がガクガクと悲鳴を挙げるようになった。

  急速な老いの始まりか、とさすがに怖くもなった。自分より2年早く仕事を辞めた妻は「年を取ってから寝たきりにならないためにも体を動かしたい」と週3回、ペアーレの水泳教室やトレーニングルームに友だちと通い、体を鍛えることを楽しんでいる。その妻からの勧めもあって、自分もトレーニングを受けることにした。

  若いころから体を動かすことはどちらかというと苦手で億劫だった。本格的な運動といえばゴルフを少しだけたしなんだ程度だ。だから、トレーニングを受けようと思ってもトレパンもシューズもない。結局、小学校に入学する児童のように妻同伴でスポーツ店を訪れ、トレパン、運動用のシャツ、そしてシューズを買い揃えた。

  そして先週の金曜日(8月31日)、妻とその友だちの3人でペアーレを訪ねた。二人はトレーニングルームでは既に上級生であり、こちらは新入生である。トレーナーに「うちの主人です。このごろこの人、膝をついて立ち上がると膝がガタガタするようになったの。先生、トレーニングの仕方を教えてやって下さい」と紹介した。

  そのトレーナーの若い男性は「ああ。それじゃあ、大分、膝の筋肉が弱ってますね。分かりました。頑張りましょう」と受け入れ、まず自転車を踏んで膝を中心にした筋肉強化トレーニングを受けさせた。そしてストレッチ、さらに機械を使ってのトレーニングも受けた。

  このトレーナーの先生、嬉しいことは受講生に自信を持たせようとする言葉遣いの配慮である。初めて自転車を踏んだ時も「ご自分の体力に合わせた負荷を設定して下さい」と言った。「ハイ」と返事しながら、ペダルに掛かる負荷を次々と上げていくと「すごいですね」と褒めることを忘れない。自分が適当と判断したペダルの重さはちょっとした坂道を登っていくような感じだ。そのままにして10分間も踏んでいるとさすがに息も切れ、汗もだらだらと滴り落ちる。

  そしてストレッチの指導を受け、それから機械を使ってのトレーニングだった。ストレッチは筋肉をほぐす運動だが、後ろ手で足を持ち上げようとして分かったのは、いかに自分の体が硬直しているかということだった。まるで体がギュッ、ギュッと悲鳴を挙げているような感じだ。とにかく思うように体を動かそうとしても無理だ。「今日から週2回平均、時間をかけてユックリやりましょう」。若いトレーナーの言葉が励みになった。初日は約1時間半だったが、終わると気持ちのいい疲労感があった。「今日はビールが美味そうだ」。妻とその友だちを車に乗せハンドルを握った自分はそう叫んだ。

  そして2回目は今週の月曜日、3回目は昨日の午後に受けた。まだ、自信がついたわけではないが、少しずつ体を鍛えることもこれからの楽しみとしたい。7日夕、台風9号がもたらす暗い雨空を見上げた。幸い秋田県は東山によって雨雲がさえぎられ、風も心配したほどではない。それでも朝は少し強い雨と風で、妻が育てたアサガオの鉢が風で倒された。雨の中、鉢植えの草花を移動させた。台風が大過なく通過することを祈りたい。