夕方、小犬のパピーを連れて横手川堤防を歩くと、秋の虫たちが涼やかな鳴き声で迎える。コロコロコロ、プチプチプチ……。草むらから聞こえてくるこの鳴き声はコオロギだろうか。数オクターブも高い、鈴のような鳴き声が響く。そして空にはうろこ雲。真っ赤に燃え落ちる夕陽。9月を迎えてからの1日、1日は愛しくなるほど時の流れが早い。
健康増進施設「ペアーレ」に通って昨日14日で6回目となった。月・水・金の午後が自分のトレーニング日とほぼ決まった。妻はその3日間の内、2日は友だちとプールでのトレーニングを楽しんでいる。「何度通っても上手にならなくて」と嘆くが、水着を入れたバッグを手に毎回、いそいそと通うのは楽しいからだろう。「選手になるわけじゃないから、水を楽しめばいいさ」と自分は言う。
一方の自分の方は、トレーニングも4回目になったころから、疲労感が高まり、「こんな状態で果たしていいのだろうか」と思った。妻には言わなかったが、朝の散歩時に土踏まずに痛みを感じ、体全体にも気だるさがあって不安を感じていたからである。
散歩しながら妻との話題はトレーニングのこととなった。自転車のペダルを踏んでいる時間と、ランニングマシーンの使用時間である。自分は自転車でのトレーニングはそれまで10分間だった。それでも終わるとクタクタで、汗だくになった。ところが妻は「アタシは30分はやってるのよ。もっと頑張らなきゃ」と叱咤する。
ペダルにかける負荷の違いもあるだろうが、どうにも疲れが体に残るのでトレーナーに相談したら「疲れが残るようなトレーニングはマイナスですよ」とアドバイスされ、「伊藤さんの場合は足にかける負荷をもっと軽くし、奥さんの言うように20分とか30分、気長にやってみたらどうです」と指導を受けた。
そして自転車を踏み終えてから、足の痛みを相談したら「足の親指をつかんで足裏を伸ばして、土踏まずを揉んで見て下さい」と教えられた。なるほど足裏を伸ばしてみると一本の堅い筋が指に当たる。それを数分間、左右の足裏を交互に指で揉んだら少し楽になった。おそらく慣れないランニングマシーンを使ってのトレーニングが足裏に疲労感を残したのだろう。トレーニングの後は軽いトレッキングで体をほぐし、そして足裏を揉み、刺激を与えるのも大事なのだと言うことも知った。
こうして昨日6回目のトレーニングとなった。午前中に取材予定があったのを済ませ、午後3時から妻を車に乗せペアーレへと向かった。いつも感心するのはその準備の良さである。トレーニングに行こうと決まった日から自分専用のバッグを妻は用意し、その中にトレパンやトレーニング時に着用する下着、Tシャツ、汗拭き用のタオル、そしてシューズ、さらには冷たい水の入ったポット、そしてシャワー室で使うシャンプーとタオル、バスタオル、着替えのシャツなどを一式、詰めておいてくれる。
自宅で過ごしていても新聞と毎日読んでいる本、それにビール、お酒を飲むコップと盃以外はどこに何があるのかさっぱり分からないのが自分だ。「あなた。少し自分の管理をシッカリしないと」と良く注意されるのだが、そう言いながらも何から何までやってくれる。旅行に行く時も着替えなどの準備はすべて妻任せでしてきた。男女共同参画社会を標榜する人から見たら「何てひどい」と叱られそうだが、一方で自分はやることはやっていると自負する。
小柄な妻の体では電気掃除機を持つのは見ていても大変だ。だから部屋に掃除機をかけるのは自分だし、ご飯を食べた後の食器を洗うのも自分だ。もっともこちらは食器洗い器に入れるだけだが……。ともかく、家事の手伝い、庭の草花への水、力仕事などはむしろ積極的にしているつもりだ。
それにしても6回目のトレーニングを終えた昨日は、自転車も30分、ランニングマシーンも30分、そして足の太ももとその裏の筋肉を鍛えるトレーニングもそれぞれ30分ほどこなした。終わるとタップリとした疲労感を味わったが、気だるさはなかった。だんだん体が汗を流し、筋肉を鍛えることに慣れてきたのだろうか。むしろ気持ちいい疲労感だった。また挑戦しようという気力がみなぎってきたから面白いものだ。
このトレーニングの事を先週、「こちら編集室」に書いたら東京の方からメールをいただいた。その方は偶然に自分のホームページを見つけ、「こちら編集室」を読んだのだという。そして社会保険健康事業財団が運営している全国のペアーレが存亡の危機に立たされており、その存続運動をしているとのことだった。その必死な呼びかけ、そして自分もやっと楽しめるようになったペアーレがそのような運命にあるということは前から薄々と知ってはいたが、いざ自分の立場になって考えてみると深刻な問題だと気づいた。
多くの人たちが自分の健康維持、そして美容や趣味、生きがいの場として利用している施設だけになんとか存続してほしいと思う。ましてや介護保険でさえも介護から介護を受けないよう予防に力を入れる方向へと見直された。団塊の世代の大量退職の時代を迎え、自分を含めた多くの退職者は第2の人生を何とか健康でありたいと体力づくりに励もうとしている。その場を取り上げないでもらいたい。社会保険庁の問題は問題としても、施設が無駄だからとの理由で売却とか廃止を打ち出す前に、国は国民の健康維持のため、地元自治体ともよく相談するなど対応策を一体となって考えてもらいたい。
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