長い冬だったと思う。初雪が降ったのは昨年11月19日であり、それからずーっと冷たい雪との付き合いが始まった。玄関前の雪寄せもした。屋根に融雪装置は取り付けたものの灯油高もあって屋根を見上げては、ボイラーのスイッチを入れるべきかどうかと悩みもした。小犬のパピーを連れての朝の散歩時、除雪車が走った後の鏡のような雪の路面に足を滑らせ、何度も転倒しそうな恐い目にも遭った。そして毎日のように続いた朝の雪寄せに「もう。雪は見るのもイヤ」と天を怨んだ時もあった。
その雪も3月に入ると眠ったように休み、代わって青空と雨が交互に繰り返した。そして3月中旬からは雪消えが始まり、木々が芽吹き、フキノトウが顔を出して春を告げ始めた。雪道での転倒を恐れ、休んでいた妻との朝の散歩も再開した。
早いもので退職してから1年目の4月を迎えた。会社を辞めたのは県議選取材という任務を終えた昨年の4月27日だった。それでもインターネット新聞「秋田県南日々新聞」だけは継続したいと取材活動は続けてきた。しかし、退職してからだから随分、わがままな取材となった。と言うのも面倒な取材は避け、できるだけ楽しみながらやれる仕事を選ぼうとしているからである。
そして土日はなるべく休み、賑わいを求めて街に繰り出している。今はフリーであるだけに8時間労働ではないが、とにかく5日間だけ仕事をしたら週末の2日間は休み、自由な時間を楽しみたい。そう思っている。自分にとっての自由な時間は小さな家族である小犬のパピーを車に乗せ、妻と共に街に出ては食事を楽しみ、大型店をブラブラすることである。そして月・水・金の午後からはペアーレに通ってのトレーニングである。
ペアーレでのトレーニングを習慣化してからは体調も良いし、ビールも美味い。そして様々な人と顔見知りになれるという喜びも加わった。両足や両腕の推定筋肉量も計測した結果、少しずつだが増えている。そのおかげで長距離歩くのにも苦痛を感じない。
それにしても退職したら有り余る時間をどう過ごすべきかと心配したこともあったが、時間は働いていたころより加速したような感じだ。あっと言う間に1日が過ぎ去る。目覚めの時間が遅くなったせいもあるが、朝の散歩を終え、朝食を済ませ、新聞に目を通していると10時近くになっているからだ。それから取材に出かけたり、自宅で原稿を書いたりしているのだが、気が付くと直ぐに昼を迎え、午後になっている。
今、自宅では倉本裕基さんのCD「ロマンス・コレクション」が流れている。韓国ドラマ「冬のソナタ」の監督ユン・ソクホさんは倉本さんの音楽を「窓ガラスに降り落ちた雨粒の合間に見え隠れする、新緑のような音楽」と評している。確かに美しく、寂しいほど優しいピアノ音楽だ。
平日の午後、自宅でこうした音楽を聴きながら過ごせるぜいたくと幸せ。小犬のパピーは自分の側のソファに横になって安心しきった顔で眠っている。居間に面した庭に山と積もってあった雪も消えた。そして木々の芽吹きが始まった。今月も中旬にはサクラが咲き出し、ミズバショウ、カタクリの花の群生も観られることだろう。
ようやく迎えた春。雪国に暮らすものにとって至福の季節である。庭からはスイセンの花も芽を出してきた。仙北市角館町のサクラが咲き出したら今年も花の季節を楽しもうと思っている。昨年よりももっとノンビリと歩き、花を愛で、新緑の山と青空を目に刻み、春の空気を思いっきり吸って歩きたい。そんなささやかな夢がこのごろ自分には愛しいものになってきた。ようやく迎えた4月である。