岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(14)」(97・9・29)

 さて(14)は米国での健康管理を取り上げてみました。健康関連事情は各州や 地域でも随分違いがあるようなので、一応、この話は私の暮らすサンノゼ周辺で の話だと思ってください。

 まず米国と日本との健康管理に関する大きな違いですが、健康に関するプライバ シーの意識です。日本では一般的な学校での集団予防接種とか健康診断なるもの を米国で実施したり、そのデータを学校が管理すること等は全て違法です。

 でも 就学に際して一定の予防接種を義務づけており、これが済んでいないと就学は認められません。ただ何処で接種させるか?と言うのは家族の意志で決めること と言う考え方です。

 まして企業が社員の健康診断を実施、記録を会社が管理したりしたら、無料有料 診断に関らず大変なことになるでしょう。検診率100%達成の為に上司が部下 に検診を受けることを求めたとか、献血運動を会社がリードして社員の参加を促 した等と言うことになるとそりゃ新聞の記事に留まらず、裁判ざたになることは間 違いありません。

 米国に進出している日系企業では日本の健康保険組合のルール から駐在員及び家族に必ず健康診断を受けさせ、診断書を会社に提出するよう求 めますが、これも明らかに違法行為です。まあ、駐在員は将来日本に戻ることで すし健康管理は重要だし会社が費用を支払ってくれるならと理解して、文句をつ ける人はまずいないでしょうが、同じことを現地社員に求めることは出来ませ ん。

 予防や早期発見の重要性は医療の常識ですから、健康保険会社は定期検診に対し ては支払率を高めたり、企業としても補助金を出したりするところも多いのです が、原点は診断場所、医師等の選択は会社が関与すべきもので無く、診断の結果 はプライバシーそのものであり、会社側に報告する義務は無いと言うのが常識的 な判断です。最も法定伝染病のケースは例外です。

 米国企業の多くは社員に対して健康保険のサービスを行っています。米国企業に は通勤費補助、住宅手当、家族手当、昼食費補助等と言う日本の企業では常識で ある各種の補助金の支払が一切ありませんから、言わば健康保険だけがゆいつの 福利厚生費と言うことになります。ただ会社そのものが健康保険組合を持つこと はほとんど無く企業側が民間の健康保険会社に加入している訳です。最近は日本 同様、医療費の値上がりが激しく、この保険料も高騰しており、各企業にとって は悩みの種になってきており、医療費の一部の個人負担化や家族の保険カバーの 制限など、全体にサービスは低下してきているようです。