岩間郁夫さんの「米国の中の日本文化(5)」(97年4月7日)
カリフォルニア州サンノゼ市在住
ご無沙汰してました。 東京、松本、名古屋、大阪、横浜と駆け抜けて、4月4日にサンフランシスコに 戻ってきました。
何処の駅舎でも秋田新幹線開業のRPポスターが目立ちました。 また訪問先では桜が満開。車窓の景色も桜の花が目立ち、日本ってこんなに桜が多かったのか!と改めて感心させられました。 実は週末、ちょっとしたハプニングから訪問先の温泉宿に泊まることになり、この結果、私にとって10数年ぶりに溢れるばかりの温泉の湯に浸かるという嬉しいこともありました。
広いアメリカですから無論、各地(日本とは比較にならぬ位少ないですが)に温泉はあります。最も有名なところはワイオミング州にあるイエローストン国立公 園内の温泉です。公園面積は四国の3分の1以上と言われる敷地のあちこちに巨大な間欠泉、泥が噴き出すいわゆる地獄、地底が見えそうな深い割れ目から噴き あがる温泉池等、様々の種類の温泉源を見ることが出来ますが、ただこの膨大なお湯は自然保護の立場から全く人間には利用されず、全部近くの川に流れていってしまいます。
私が暮らすカリフォルニア州内にも何ヶ所か温泉はあります。地名に何とかホットスプリングスとついた所は大抵が温泉です。私も以前は温泉好 きであったことから、米国内のあちこちの温泉に出かけましたが、結局、日本のような温泉感覚は味わえず失望してしまいました。理由はこんなことです。
まず湯船の湯温が非常に低く、何処も温泉プールの水温並みに調節してしまっています。源泉湯温はかなり高いのですが意図的に水を混ぜ、湯温を下げています。 長時間、湯船に浸かることが 出来るとう配慮か?肥満の多いアメリカなので、温泉に浸かって卒中でも起されては困るということなのか?またはアメリカ人が熱いお湯に弱いのか?全く定かではありませんが、ぬるくて湯の感覚が全くしません。
次に大半は露天風呂で混浴(ここまでは良い)なのですが、全員水着を着たままの温泉入りで、お風呂の感じがしません。
次に食事ですが、残念ながらホテルの食事はアメリカンフード のワンパターン。温泉に浸かった後、ハンバーガーやステーキを食べても充実感はゼロといった感じなのです。
こんな訳で日本の温泉感覚をアメリカでは遂に発見出来ませんでした。
ならアメリカ人は日本の温泉が嫌いか?と言うと決してそんな訳でもありません。実は私が日本で仕事をしていた頃、新工場の落成式があり、アメリカ人の顧 客を30人ほど現地に招待、有馬温泉に泊まって、いわゆる日本風の宴会を企画した訳です。私自身は温泉を楽しむどころか、通訳や温泉の入り方を教えたり、 よろず相談等で大変でしたが、とにかく宴会前に温泉を浴びようと言うことで、 全員教えた通り、浴衣と丹前をまとって風呂場にやってきました。
面前で衣服を全部脱ぐことは彼等の過去の経験外の事なので、始めは怪訝な顔をしていましたが、興味が先行して堂々と湯船に入っていきました。彼等はオープンになると 前を隠す等という習慣がありませんので、それは凄いものです。熱い熱いと言いながらもリラックス度は百パーセント。キャツキャッと湯船の中で大騒ぎをして いましたが、一応の常識はあり、湯船にせっけんを持ち込むことも無く、十分入浴をした後、風呂から上がり脱衣所に戻ると皆、決まったように持ち込んだ手拭いを洗い場に置いてきてしまい、湯上がりのタオルは何処だ?置いてないと裸のまま大騒ぎ。
私も使った手拭いは湯で洗って絞って体を拭く事までは説明していなかったので、とんだハプニングが最後に起こってしまいした。でも彼等、温泉 に浸かることの楽しさを十分満喫したようですし、その後の日本式宴会のドンチ ャン騒ぎも大いにのって騒ぎ過ぎた為か?、翌日、皆の声が枯れていました。
まあ奥さんが同行してくれば全く違った出来事になっていたかもしれませんが? 私の暮らすサンノゼ市から車で一時間ほど南に下ったところにギルロイ温泉があります。戦前は日本人が温泉宿を建て、ギルロイ大和温泉といって地元日系人にずいぶん人気があったようですが、戦後はアメリカ人が土地だけ所有してその後 は温泉として利用されなかったのですが、10年ほど前に関西の土地開発会社が その場所を購入して温泉リゾートとして再開発を目指しているのですが、地元環 境保護団体の強い反対運動から何回も公聴会が開かれて賛否が問われ、結局、打開策として規模を縮小を余儀なくされ、今度は事業として成り立つか?が企業側の問題となり、計画実施は大幅に遅れているようです。
銭湯を知らないアメリカ人にとって公衆浴場(パブリックバス)の持つイメージ が陰湿なものを想像してしまうことも大きなマイナス要因なのかも知れません。 やはり、温泉を楽しめるのは日本の特権のようです。
サンノゼ市 岩間