カリフォルニア州在住・岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(1)」

(97・4・28)

 リマの日本大使館人質事件も解決、このニュースは米国の新聞でも複数のページ を割いたトップ記事となりました。テロに対して断固と対決と言う米国姿勢をペ ルー大統領は実践した訳で、その意味から彼は米国内でも最高の評価を得ていま す。一方、日本政府のテロに屈せず且つ平和的な解決というグレーな干渉が結 局、事件解決を遅らせたというのが、米国の一般的な意見のようです。この種の 事件が起きる度に日本政府と日本人の不可解な行動やコメントは、いつもアメリ カ人の日本人感の不信を呼び起し、米国で暮らす我々にも間接的な影響が出てきま す。実に歯がゆい話です。

 さて今週からはテーマを変えて身近なアメリカ暮しの一端を紹介させていただき たいと思います。無論、日本の面積の24倍、雑多な民族、宗教、習慣が複合し た国ですし、州や市レベルでの独立意識も強い国ですから、私の記述はカリフォ ルニア州のサンノゼ地域では一般的なことでも、町が変わればそれは違うという こともめずらしくありません。典型的な例が国の祝日です。リンカーン大統領の 誕生日は祝日とされていますが南北戦争で怨念の深い南部の州は祝日として認め ていません。コロンバスデーは祝日ではありませんが、イタリア人の多いサンフ ランシスコ市では祝日として扱っています。そんな環境の中から身近な生活上の ことを拾いあげていきたいと思います。

 まず第一回は運転免許の取得です。

 米国の暮しを始める上でまず不可欠なのが運転免許証です。運転免許証は車を運 転するのに必要なだけで無く、それ自身が身分証明書の価値を持ち、本人である か否かの判断を求めるには何処でも必ず運転免許証の提示を求められます。銀行、空港、小切手使用時、レンタルで物を借りる時、何かの書類を申請する時、 酒類を買う場合等など。更には日本の領事館ですら、パスポートの更新時に米国生 活していることを確認する為に運転免許証の提示を求めます。

 確かに運転免許証には写真と住所以外に性別、髪の色、目の色、体重、身長、本人のサイン等が記 載されていますから、身分証明書としては一番しっかりしているのかもしれません。

 カリフォルニアの普通自動車の運転免許証は満16才で取得出来ます。従って高 校に入ると学校の授業の中に車の安全教育を取り入れているところがあります。米国では日本のような自動車教習所のようなシステムは無く、運転免許を取得する為に数10万円もかかるという日本の話はこちらで一笑されます。

 そんなことから、まず運転の練習は週末に空いた駐車場等を利用して親が教える ケースがほとんど。練習度に応じて次は親が同乗して道路を実際に走り練習を積 みます。ただ16才で免許を取得しようとする場合は4ー5時間の派遣教習員の運転指導を受けることが運転免許試験を受ける条件に入っています。

 では大人の場合、既に自国で運転経験があり、腕に自信のある人はまず地元の車 両管理局(DMVと呼ぶんですが、どの町にもあります。サンノゼのような町では 数箇所あります)に出かけ運転規則集(所謂道路交通法)を貰います。カリフォ ルニア州の場合、以前は英語、中国語、スペイン語、ベトナム語、日本語で書かれた規則集がありましたが、予算難から順次、英語以外の規則集は多く印刷しない ようです。学科試験は基本的にこの本に書かれた範囲から出題されます。

 さて、規則は覚えたと自信がついたら再度、車両管理局に出かけ運転試験申し込 み書と受験料を支払います。受験料は昔から比べると高くはなりましたが今でも 1500円ぐらいです。これが運転免証の取得に必要な全費用です。この時、本人であることを証明する為に外国人であればパスポート、アメリカ人であれば出 生証明書のコピーを提示、問題無しと判断されれば、その場で学科試験の問題が手渡され、同じフロアの横にあるカウンターのような場所で立ったまま、マークシ ート方式で回答します。試験時間に制限は無く、採点員がデスクにいる以外は特 に試験と言う雰囲気はありません。

 さて、本人が出来たと思ったらいつでも採点 員のところに回答を持って行き、その場で採点を受け、学科の合否が分かります。

 現実に学科試験で落ちると言うケースは希なんですが、万一、不合格であっても 3回までは受験料を払わなくても再試験を受けられます。とにかく学科試験に合 格すればその場で視力検査を受け、実地試験の予約をします。最短では2週間先の予約が可能で空いた時間に自分の都合を合せ申し込む訳です。

 いよいよ実地試験です。車両管理局には試験車両はありませんから4速車でも5 速車でもマニュアル車でもオートマチック車でも何でも良く、自分の車を持ち込む のです。 試験官はまずその車の方向指示機やブレーキランプ等の安全機能が正常に動作す るかをチェックし、本人に手信号が出来るか?の確認をします。この段階でブレー キランプ等が切れているとその場で試験に不適な車両持ち込みとして不合格とな ります。これは悔しいでしょうね。次に試験官が助手席に乗り込み、まず前進を 指示し、次に止れを指示し、最後にまっすぐにバックすることを求めます。ここで何とか運転は可能と試験官が判断したら、コースはありませんから、いきなり 一般道路に入り、指示どうり20分ほど走行して車両管理局の駐車場に戻るということになります。

 全てが一般道路走行なので、思わぬハプニングが起こるとい うのが試験の特徴ですが、逆に日本のようなS字、クランク、縦列、車庫入れ等 の技巧を要求する試験内容が無いのも特徴かも知れません。無論、試験結果はその場で判明、合格であれば顔写真を撮って、仮の運転許可証がその場で発行され 即運転可能となります。正規の免許証は3ー4週間後、郵送されてくるというのが一連の手順となります。

 一件、簡単そうな試験ですが、日本で相当の運転歴がある方がこちらの実地試験で実はよく不合格になるのです。中には3回、4回と実地試験を繰り返すので す。最大の理由は日本の試験が運転技巧を要求しているのに対し、米国の試験が安全と気配りを要求していることから生じる問題なのでしょう。

 さて米国の他州からカリフォルニア州に移ってきたらどうなるか?基本的に切替え では無く、カリフォルニア州の免許を取得する必要があります。ただ学科試験だけで実地試験は免除されます。移住者は運転免許を取得するとようやくこの土地での生活が始められると感じます。では