岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(2)」(97・5・3)

 先週から日本で人気沸騰した”たまごっち”が米国で販売され始めたようです。 何処でも買えるという訳では無く、まだ米国の大きな町の大きな店だけなんです が、売り出した店の前には開店前から日本人と思われるお客でごった返していたと聞いています。小生等はこの種の流行物には冷ややかな方なのですが、米国内 発行の日系紙がこの事を大々的に取り上げて火付け役になろうとしています。いつもながら流行をメデイアが作り出し人間がそれに盲目的について行ってしまう恐さを感じてしまいます。

 先週は運転免許証が身分証明書的な意味を持ち、運転許可証以外の価値と重要性 がある事をお伝えしましたが、実は米国で生活を始める上で最も重要なもう一つの証明書の話をしてみたいと思います。それは日本語では社会保険番号と訳されていますソシアルセキュリテイー番号で す。本来は年金積み立てや受給上の管理番号であったと思うのですが、現在はあらゆる分野で個人の証明番号になっていて米国人は1才を過ぎる迄にこの番号の 取得が義務づけられいます。また旅行者を除いて合法的な外国人滞在者の全ても 収入の有無に関らずこの番号の取得が義務づけられています。つまりは米国は「国民総背番号制度」を実施している訳です。先週の運転免許の受験申し込み書にもこ の番号を記入する欄がありますから、この番号が無いと逆に運転免許試験すら受けられないと言うことになります。

 さて取得ですが、これは試験も無くきわめて簡単です。各地域にあるソシアルセ キュリテイー事務所を訪ねて書類に書込み提出する時だけです。ただ、提出時に 本人であること証明する書類、つまり外国人の場合はパスポートを提示します。 この時、窓口担当者はパスポート上の写真で申請者本人であることを確認すると共にパスポート上のビザを確認して申請者が米国内で労働資格が在る人物なのか 否かを調べます。逆に労働資格がないからという理由で拒絶されることもありません。 申し込み者の作業はこれだけで特別な面接も指紋等採取されることもありません。その後、2ー3週間もすると郵便で自宅に名刺大の番号が記入された紙のカ ードが送られてきます。これに本人がサインをして正規のソシアルセキュリテイ ーカードとなる訳です。ただし、労働資格の無い人の者(例えば駐在員本人はビザによる労働資格はあるが、帯同家族には労働資格が無い)のカードには労働資格の無い旨の大きなスタンプが押されています。

 ソシアルセキュリテイーそのものは日本の年金保険のようなもので米国市民や外国人に限らず給与額に応じて10年間これを支払うと受給資格がもらえます。連 続する必要は無く、通算10年で良いので2ー3回米国駐在された駐在員の方は 米国で収入を得た期間が10年を超えるケースがほとんどでしょうから受給資格が得られます。ただこの番号は実質別目的で利用されています。それは税金徴収です。 銀行の口座を開く。株を売買する。不動産を取得売却する。ローンを組む。クレ ジットカードを申し込む。保険を掛ける。保険金を受け取る。税金を支払う。給 与を得る等などおおよそ金に関関して、どこでもソシアルセキュリテイー番号の提 示と記入を求められ且つ記録されます。会社に就職する時も同様です。就職時に これが提出来なければ企業は絶対に採用しませんし、労働資格無しのスタンプが押 されていた場合も同様です。金融機関や会社はこれら、お金に関する個人情報を 自動的に税務署に届け出るシステムが出来上がっています。税務署側はこれらの 個人情報をこの番号を頼りにイモづる式に収集出来る訳です。

 米国は全ての労働収入のある人間に対し確定申告を求めていますから、申告者が 収入を操作していた場合、給与所得は申告されているが、銀行利息は申告されて いない等と言うようなことは直にばれてしまうということになります。無論、人 間が介在する仕事ですから、全国民分をこのようにチェックすることは不可能で すが、収入があったのに確定申告していなかった等と言うのは一目瞭然ですし、 この番号の存在と税務署が利用していると言う事実が納税義務と正しい確定申告 をさせる効果も産み出しているようです。

 よく日本で聞く節税の為の子供名義の口座もこちらでは口座開設に子供のソシア ルセキュリテイー番号が必要ですし、利息等があれば税務署に報告されます。親が 確定申告する場合は家族の番号を併記する必要がありますから。また、個人口座 に他から一回1万ドル以上の入金があった場合等も報告義務の対象になっていま す。

 日本でもこのような背番号の導入はいつも提案されているようですが、プライバ シーの保護、云々とかで何時も挫折しているようですね。でも、これだけプライ バシーに関してうるさい米国なんですが、ソシアルセキュリー番号制度を批判す る人はほとんどいません。それだけ個人に自然に溶けこんだ番号となっていま す。今は民間でもこの番号をそのまま利用して健康保険書の番号としたり、口座 番号として使う銀行もあります。更に個人の信用調査もこの番号から色々な情報 を集めるようです。 では