岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(3)」(97・5・12)

 先週、日本で大流行した”たまごっち”が米国でも発売され、日系新聞はその話 題を大きく取り上げていました。まさに流行は作り出されると言うのか?何ら関 心を持たなかった人もどうなもんなんだろうと関心を呼び起こさせるというメデ イアの影響力は図り知れませんね。今は日系人顧客が対象のようですが米国でブ ームになるか否かは定かではありません... 。

 今回の米国暮らしですが、必ず生活に必要な銀行がらみの話題を紹介させていた だきます。日本から旅行で来られた方は観光地、レストラン、ショッピング等に ついては良く御存じですが、実際に米国の銀行に立ち寄られた方は以外に少ない のでは無いかと思います。しかし現地で暮らす人間に取りまして日本と同様、銀 行との関わりは必須です。個人の銀行利用は預貯金、現金引出、ローン、送金等 と基本は一緒なのですが、違いは日本で便利と思われている自動払いが米国では ほとんど行われないこと。逆に日本ではまずない小切手を使った個人の決済が非 常に多いというのが特徴かと思います。

 まず口座開設です。大抵の人間は日本の普通預金にあたるSaving口座と当座預金 にあたるChecking口座の2つを持ちます。開設に必要な情報として住所、氏名、 生年月日、運転免許証番号、社会保険番号が記録されます。日本の登録印に該当 するものは御存じのように個人のサインですが、ここで面白い質問が銀行からさ れます。日本人で初めての方は大抵この返事に戸惑ってしまいます。質問は貴方の お母さんの旧姓を教えてくださいと言うものです。実はこの姓は何でも言い訳なんですが、後日、銀行側が解約やサイン等に不審を感じた時、本人であることを 確認する手段としてこの名前をたずねる訳です。 Savinghに関して特に説明は必要としませんが、日常便利な小切手とキャッシュ カードはCheckingを利用します。キャッシュカードに関しては日本と同じですが 一回の引出額が500ドル程度が限界であること、24時間利用出来ることが特徴かもしれません。小切手は口座開設時に印刷デザインを決めると10日ぐらい で郵便で配達されてきます。また、銀行はその間でも使えるよう20枚ぐらいの 「仮小切手帳」をその場で作ってくれます。実はこの個人小切手が銀行決済の大きな 業務になっており、個人があまり現金を持たずに生活出来る大きな理由になって います。

 小切手はその場で支払い先と金額を書込み、サインをして相手に渡す訳ですから 支払い側には便利なのですが、受け取り側は本当にこの口座に金があるのか?偽 物小切手では無いか?という不安が付きまとう訳です。その為、受け取った側は その場で裏付けを取る為に運転免許証の提示、手持ちのクレジットカードと電話番号を尋ね小切手上に記録しています。このように情報がハッキリしていれ ば、まず間違いは無かろうと言う訳です。金額が特に大きい場合はその場で小切 手上の取り扱い銀行に電話を入れると、銀行側は預金額は教えませんが、その支 払い額を満たす預金が口座にあるか否かだけは電話で教えてくれます。

 一方、使う側からすると盗難等で小切手を無くした場合や支払い相手以外の手に サインした小切手がわたってしまった時はどうなるか?と言う心配がある訳です が、小切手は支払い先に明記された個人及び社名の持つ銀行口座以外では決済出 来なく、例えば支払い先がAさん名となっていた場合、例えAさん本人でもAさ ん名の口座が無い銀行に持っていってもまず取り扱ってもらえないこと。さらに 現金を受け取る場合でも運転免許証やクレジットカードの提示を求められ、受け 取り人の証拠を残すことになりますから、盗んで使ってもその証拠を残してしまう訳で都合が悪く、銀行側に小切手番号を連絡することによって引き落としを止 めることも出来ます。また使用済み小切手は銀行側に保管されるか、若しくは毎月、個人に郵送されてきます。これは受け取り人の裏書や銀行の決済記録がスタ ンプされていますので領収書として極めて有力な記録になります。そんなことからリスク「ゼロ」とは言えませんが多くのアメリカ人は便利さを優先させて多いに利 用しています。更に小切手利用に対して多くの銀行はある金額以上の預金が口座 にあれば使用料は無料とするところも多く、これが利用者にとって受けている訳です。

 さてさっき触れた自動引出しですが、アメリカ人気質として自分で確認出来てい ない金額を口座から第3者が自動で引き出す等と言うことはまっぴらというのが 普通です。よく見掛けるホテルのフロントやレストランで日本人は言われた金額 を直に支払うのに対し、アメリカ人は請求書の内容を一件一件チェックしてから 納得の上で支払う姿を見られた方も多いと思います。従って公共料金であれクレ ジットカードの支払いであっても全て請求書の中味をまず本人が確かめてから小 切手を発行して郵送するという文化なので、自動引出が定着しない社会のようです。

 蛇足ですがアメリカ人夫婦ではお互いの収入を全く別口座に入れて各自が管理、 生活費等の共通部分をお互いが出し合うというスタイルを取るケースがかなりあります。何でも「折半」という考えは通用しないケースが多く、私の知り合いでもご 主人は日本人で日本食が好き、奥さんは白人でほとんど日本食を食べない。当然、 材料費は日本食の方が高いので、その分はご主人の収入から出して当然と言う訳 です。一方、ご主人一人が収入を得ている場合は給料を奥さんに渡す等というこ とは絶対にありません。毎週、奥さんが必要な分だけ 生活費を渡すと言うのがアメリカ流でこれらのお金のやり取りは夫婦間でも小切 手を使います。