岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(4)」(97・5・19)

 北カルフォルニアは5月としては記録的な熱さ。午後の海風が無い為、ここ連日38度を超す猛暑(?)となっています。普段このあたりの家はエアコンをほとん ど必要としない土地ですから、エアコン無しの住宅も多く、寝苦しいこの頃です。

 さて前回の銀行に続き、今回の米国暮らしは車の購入、特に新車購入のケースを取り上げてみました。公共交通機関をあまりあてに出来ないカリフォルニアで生 活するには車の所有は不可欠ですが、車の購入は家の購入を除くと個人にとって最 も高価な買い物の一つですし日本同様、車は所有者の性格とかステータスを示すことから、それは真剣です。しかし、日本と比べて車の買い方にずいぶん違いも あり、日本から来られた方が経験もなく一人で販売店まで買いに出かけると言葉の問題以上に、システムの違いに当惑するケースもかなりあるようです。そんなことか ら今回、新車購入はどんなものなのかをを取り上げてみました。最も私の日本の 車購入の知識は16ー17年前の話ですから、むしろ日本の方が変わってしまっているかも知れません。

 まず販売店で購入する車を決める過程に大きな違いがあります。日本での車選びはカタログ上から、モデルや色を決め、オプションを選ぶことが普通で、仮に 決めた車に試乗するとしても、それは販売店の試乗専用車であって本人が購入する車そのものではありません。全てを決めて手続きを終えた後日、納車される時点 で初めて本人が買う車とご対面と言うことになる訳ですが、アメリカの場合は販 売店の店頭に並ぶ50台から200台ぐらいの中から本人が納得出来る車を選び、その車に試乗して、外観内装等もチェックして、現物購入するという方法になります。

 無論、カタログを見て仕様を決めてから申し込む方法も存在しま すが、まずこの方法で注文した場合、納車が何時になるのかサッパリ分からないのが実体で、私の友人はさもない車であったのですが、ある工場装備のオプショ ンにこだわった為に3ケ月待たされ懲り懲りしていました。店に尋ねてもハッキ リせす、情報が入れば連絡するという返答のくり返し、頭金は入れてあるし、ペ ナルテイー無しの解約も出来ないと弱っていました。そんなことからこだわりの ある人以外、車のカタログで仕様を決めて注文するという方法はあまり利用しません。もし店頭に自分の欲しいモデルが無い場合は近日中に販売店に納入される リストの中から選択するか、他の地域の販売店に出かけて選ぶか、別の機会まで待つと言うことになります。

 さて販売店の車展示場所に足を踏み入れ、興味のある車の室内等を覗き始めると、まもなくセールスマンが近寄ってきます。"May I help you ?"とくる訳です が、まず買い手はその場で本音を言う人はまず無く"No thank you"とか”Just looking, thank you"等と言って追い返すのですが、セールスマンもしつこく何人も同じ様に近づいてきます。この時点では、これらを追い払うのが一つの腕で す。

 さて買い手側も何とか納得出来そうな車を見つけた時にめぐり合わせたセールスマンはラッキーです。早速、車の鍵を開けて買い手は車内に座って内装 等を確認していると彼は盛んにその車の試乗を勧めます。買い手がそうするかと 決めるとセールスマンを助手席に乗せ7ー8マイルの距離の試乗をします。まあ 気にいれば大抵の買い手は車は悪くは無さそうだが値段が高いとか、この色がもう一つとか、他のメーカの車の方がよさそうだとか値引きの為の前哨戦が始まります。多分このあたりの腹の探り合いは日本と同じかもしれませんが、違いはこ のセールスマンと言われる人達は価格に関して一切の権限を持っていないことです。

 つまり彼等には値引きやオプション云々とかについて交渉決定権がありません。ですから彼の経験から基づいてこの位の値引きは出来るとか、いくらだったら買ってくれるか?等という妙な会話が生じます。現実に相当いい加減な事も言うから、セールスマンの言うことは信用に値しないとい格言もあります。とは 言え買い手も買う気があれば、とにかく具体的な商談は事務所でということで買 い手を連れ込む訳です。買い手をこの事務所の個室に連れ込めばセールスマンとしては70%成功です。

 それから買い手と販売店の間の価格条件交渉がセールスマンを介して行われます。これが極めて奇妙です。セールスマンは販売店のマネ ージャーと買い手の控えている個室を往復して買い手はこう言っている。良いか 悪いか買い手に対してはマネージャーはこう言っていると両者のメッセンジャー として往復する訳です。マネージャーが買い手の所に姿を現し、直接交渉すること はまずありません。当然、良くも悪くもさっきセールスマンから聞いていた条件 と全く違う条件が出て来ることはめずらしくありません。客にとっても高い買い 物ですから、そう簡単に納得する訳は無く、買い手に逃げだされることが恐いのでセールスマンはしきりに両方をとりなす訳です。逆にそれがセールスマンの腕 ということになるようです。

 さて、買い手も潮時と感じた時点で商談成立になる訳ですが、アメリカ人でもこの個室(机が一つと粗末な椅子が2ー3ある部屋ですが)に一度入ってから途中 で出ていってしまうのは、なかなか出来ないようです。折り合いがつくと車購入 と登録に必要な住所氏名、所有者、社会保険番号、支払い方法等、その他の情報 を買い手から聞き、手書きでフォームに記入したら実質セールスマンの仕事は終 わってしまいます。後はタイプした契約書類等が出来上がるまで買い手は1ー2時間その場で待ち、書類がクレジットマネージャーに届けられ、彼の事務室で各 書類にサイン。頭金を支払うと鍵が渡され且つ一応の車の保証に関する説明があり、握手なんぞをされて買い手はその場から車を運転して自宅に持ち帰ることになります。

 そして契約書に記載された期限内に残金分の小切手を降り込めば現金買い扱いとなり、それが無ければ自動的に販売店と契約するローン会社の月賦として扱われ、2年や3年月賦の条件に見合う最初の支払い額の小切手を振込むという手順 になります。それまでの期間に買い手側は銀行などのローンが有利な場合はそちらから借用し、販売店に一括払いをして後、銀行ローンとします。 自動車保険については本人が自分の保険代理店に電話で加入手続きをすると後日、保険会社から請求書が届きます。

 さて車ですが、購入した時点では日本で言うナンバープレートがありません。ナンバープレートは1ケ月ー2ケ月後、車両管理 局より車の登録書と共に郵便で送られてきます。無論、封印などありませんから 自分でナンバーを取り付けることになります。もちろんナンバーが手に入るま で、その車を自由に使うことは一向にかまいません。

 こんな作業が極普通なのですが、これらの一連の作業を嫌い、最近は仲介業者を使い希望車種の詳細を伝え、その車種を探させ価格もそこを経由して交渉、車も自 宅に届けさせて、代金を支払うブローカ買いの方法や、車の値上がりから現金や月賦で無くリースという方法で車を調達する方法が増えているのが、最近の特徴 かもしれません。 

 PS:先日、私が(2)で書きました社会保険番号の件で小生の記述が新移民法 のもとで事実と違うのではないか?と新聞記事と比較されたご指摘のメールが県 南経由で送られて参りました。新移民法のもとで非移民者に関する社会保険を制 限する為に各種の手段が打たれつつあるのは事実です。ただ、現在の実施はバラ バラで本年秋の実施迄に現実に促した大幅な改訂があると予測されていますの で、私の暮らすサンノゼ地域では変り無く、社会保険事務所は申請者に対し本人 であることが確認出来れば社会保険番号はまだ発給しています。

 ただし、以前か ら労働資格の無い申請者への社会保険番号票には労働不許可の印が番号と共に押 されています。この印の押された社会保険番号を皆が敢えて納税者番号と呼んでいるか否かは私は存じません。

 この一連の投稿に対して私の方は最初から広いアメリカのことなので、私の述べた内容は私の暮らすサンノゼ地域の事実を書いているだけですとコメントしておりますのでその事をご理解ください。