岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(5)」(97・5・26)
先週、この季節には珍しくサンノゼ市に雨が降りました。5月末にまとまった雨が降ったのは10年ぶりだそうです。おかげで週末の空気はいっそう澄んでカリフ ォルニアの青い空そのものになりました。ただ、この時期、当地はサクランボの 収穫期にあたり、雨に濡れたサクランボの実は割れてしまい、売り物にならないことから農家にとってはとんだ災難となりました。
アメリカ暮らし(5)。前回はこちらの新車購入を取り上げましたが、今回は中古車購入を取り上げてみました。アメリカの中古車市場は各州共に日本の車検制 度に該当する制度が無いか若しくは非常に緩い規制なこと。車歴に応じて登録税 も安くなること。所得に関らず車が生活必需品であること等の理由から巨大です。現実、中古車もピンキリですが普通8ー10年使った車や15万キロ以上走 った車でも十分な中古車価値はあります。多分、車は走りさえすればどんなに古くてもドル以上の価格は付くと思っていいでしょう。
こちらの中古車購入の手段は日本同様、販売店の中古車部門や中古車専門店から購入する方法もありますが、特徴は売り手も買い手も一番に利用するのが新聞の 個人広告利用による売買です。買い手も売り手も業者の保証価値より、業者に取られる中間マージンの損を重要視していること、消費税を払うことが無い為(本 当は払う必要があるんですが)、直接売買した方が得との判断にあるようです。
まず特定の買い手がいない売り手は大抵、新聞広告という手段を使います。毎日 発行される地元新聞にはメーカ別に数1000台の車売りますという広告が記載 されます。広告の内容は車種、年式、色、走行距離、オプション、希望価格、連 絡先の電話番号と言った簡単な記述ですが、この広告掲載には本人が新聞社で直接、電話で申し込むと次週の新聞に掲載されます。5日間連続の広告代は50ー 70ドルという安価なもので請求書は後日郵便で送られてきます。
車の価格設定に売り手は新聞広告の相場を見たり、全車種の中古車相場価格が記載されたブルーブックという本を参考にしますが、これは普通の商売同様、売り を急ぐか?、時間はかかっても価格を維持したいのか?売り手の意志で決まります。 現実、買い手はこの種の新聞広告をよく見ており、自分なりに相場を判断しています。
さて興味を引く車が見つかった場合、買い手は広告にある番号に電話を入れます。そこで売り手が出れば広告の車の内容をもう少し詳しく聞いて興味があ れば車を見せてくれというアポとなります。その後、指定された場所でお互いが会い、車をなめるようにして見てから試乗をし、気に入れば価格交渉となり、やがて商談成立となる訳です。
実はここで一つの売り買いの原則があります。売り手は車と共に車の所有者証明 書と最近の有効な排気ガス検査証明書を渡す必要があります。買い手は売り手の 安心を引く為に支払は現金(あまり無い)か個人小切手で無く銀行が支払を保証 する銀行発行の小切手を渡す必要があります。
所有証明書は新車購入後に車両管理局から発行されるもので現金で買えば直接本 人に、ローンを使えばローン先に送られ、ローン返済後に本人に送られてくるもので、これが無い車は盗難車か所有者が不確定な車と判断されます。売り手は代金受け取りと同時にこの所有者証明書にその場でサインをして所有権を放棄した 事を証明します。排気ガス検査証明書の取得は法律上は売り手の義務となっていますが、実際の車取り引きの上では曖昧です。この検査証明書取得が大抵のガソリンスタンドの整備場所で30ドルぐらいで簡単に検査を受けられるからでしょ うが、後で排気ガス検査不合格で修理代を取られるのは腹がたちますから....。
これらの交換作業で、取り引きは完了したことになり、買い手も売り手も以後、 顔を合わすことはまず無いんではないでしょうか。最後に買い手は後日、地元の 車両管理局に出かけて簡単な書類にその場で書込み、売り手がサインした所有車 証明書と排気ガス検査証明書を提出、そこで記入した購入価格が世間相場を外 れていなければそれが登録税課税上の取得価格となり、その金額を小切手で支払 って登録は完了します。 1ー2ケ月後、買い手の所に郵便で新しい所有者証明書と登録票が車両管理局か ら送られてみます。
では新聞広告を利用しない場合の広告はと言うと、まず売りたい車に "For Sale" の看板を付けて新聞広告と同じような内容を記載し、人通りの多い駐車場 所にとめておく方法。(路上にとめておくと公道で許可なく商売をしたと警告書 が張られます) スーパマーケット等の壁にある自由に使える掲示板に写真入り で案内にのせる方法等もあります。
余談ですが、日本車の中古車相場は非常に高く特にホンダとトヨタの中古車は超 人気中古車となっています。欧州車の中古は全体に少なめで市場に出てくるのは ポンコツ車が多いようです。どうやら欧州車の購入者は乗り換えずに長く乗る人 からのようです。また、装備は外してありますがパトカーの中古車とか郵便配達 用のジープの中古車等も市場に出まわります。郵便配達用の車両は歩道への出入 りがしやすいように右ハンドルが特徴です。車検が無い為、ポンコツ車も沢山走 るアメリカですが、唯一特徴があるのはツルツルタイヤで走る車は以外に少ない ことです。自滅事故の多いアメリカではタイヤは自分を守るもののという潜在意 識が働いているようです。逆に日本の車検制度の意味はなんだろう?と不思議に 思います。