岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(8)」(97・6・30)
鹿島流しの記事も拝見しました。私の子供時代に過ごした私の町では地元神社の 夏祭りかドンド焼きぐらいの行事しか無かったような気がします。ただ大学時代 を過ごした金沢では多くの伝統行事を見たり参加することも出来ました。またそ こから近い能登半島や富山の五箇山地方も平家ゆかりの土地で面白い行事がずい ぶんあったようです。でも学校が受け継ぐというのはいいと思います。富山県の 多くの学校では体育の時間に地元の越中おわら節の踊りを生徒全員が習うなんて 聞いたこともありました。
こちらではほとんどの学校が既に夏休み入り、バケーションシーズンたけなわと 言う時期でもあることから、何処の空港も家族旅行者で賑わっています。鉄道旅 客輸送が衰退してしまったアメリカでは、旅行と言うと車か飛行機に頼らざるを 得ず、こと、出張となるとほぼ100%飛行機の利用と言うことになってしまい ます。そんなことから空港は各都市共に良く整備されていて、人口5万人ぐらい の町であれば、大抵直接飛行機でその町に到着出来る便利さはあります。
私の地元サンノゼ空港は大空港であるサンフランシスコ空港と比べると規模も便 数も比較になりませんが、それでも10社以上の航空会社が毎日便を飛ばしてい ますし、貨物専用の航空会社の乗り入れも多いというのが特徴かも知れません。 市長も空港整備には熱心で、2本目の滑走路の延長計画が第3ターミナルの 整備等最近市議会で決定されたばかりです。
今日はそのサンノゼにも乗り入れている面白い航空会社を紹介します。
会社の名前はSouth West航空。日本ではNorth West航空を 知っている方は多いと思いますが、South West航空を知る方は少ない と思います。
この航空会社はアメリカ西海岸を中心に中西部まで路線を持ち、い わゆる片道3時間以内の飛行路線に力を入れている会社で、その意味では日本の
国内路線サービスと類似してピッタリなんですが、ビジネスのやり方が型破りで
あることからアメリカ最大手航空会社に最も敬遠されている航空会社です。
この航空会社は既に大手航空世界の規模となっているのですが、世界の航空会社 の団体であるIATAにも自由度が無くなるという理由で参加していません。
まず機体は整備性の良さと部品管理の点からボーイングの737型機に絞りこん でいます。機体のカラーは茶色と橙色の2トーンで、これほど汚い配色の飛行機 と言うのも珍しいです。 さて地上職員や搭乗の制服ですがカウンター、スチワーデス全て会社のマーク入 りのポロシャツとカーキ色の長ズボンか短パン、靴はスニーカというスタイルで す。さすがにパイロットだけは他社並みに制服制帽なんですが、最初はこれが搭 乗員かと思うようないでたちです。確かに作業性には優れていますけど。
またこの航空会社にはファーストクラスという座席は無く、座席指定なるシステ ムもありません。荷物を預ける場合以外のチェックインは全てゲートで行ないま す。乗客はカウンターで航空券を出すと、チェックイン順に便ごとに色の違うプ ラスチックの大きな番号札をもらいます。搭乗はハンデイキャップの方を除き、 この番号順。では1ー15番の札を持った方は搭乗下さいとなる訳です。一件乱 暴なようですが、航空会社にとって座席がどうのこうのという負担がありません し、だれでも良い席に座りたいと思う気持ちがあるので乗客は自然に早くチェッ クインをするようになるという効果があります。
ただ、これだけだと低料金低サ ービスの航空会社と言うイメージを作り出してしまうので、待ち合い席の乗客に 対して、従業員がクイズなんかを出して当てるとロゴ入りTシャツが貰える等の 遊び心も出しています。また機内の飲み物等のサービスもまずは他社並みを維持 しています。更に搭乗員が愉快に乗客に接すると言うのも特徴かも知れません。
また、この会社の特徴は便が到着、乗客が全員降りてから15分間で機体点検、 機内清掃、手荷物の積み降ろしが完了し、次の搭乗が開始出来るというシステム が出来上がっているそうです。 確かに他の航空会社と違い、次の便のパイロットは到着前に機の到着を外で待っ ていて、エンジン停止後、直ちに機体点検作業に入っている様子を普段、見る事 が出来ます。こんな素早い作業で手抜きがあるのでは?と言うのが、他の航空会 社の指摘なのですが、現在のところ安全記録は大手の航空会社以上で、最も安全 な航空会社で且つ出発便の遅れが少ない航空会社のトップの部類に属しているよ うです。
唯一、私自身、この会社の機体で妙に感じるのは非常口のある場所の座席だけは 日本の列車同様に前後の座席が向かい合っているんです。随分色々な飛行機に乗 りましたが、向かいあった座席の存在はアメリカ国内ではこの航空会社だけでし ょう。通常この席は一番最後まで空いているんですが、満席の時にこの席で飛行 機の進行方向に背を向けて座るのは、離陸着陸時ともにあまり良い気分はしませ ん。
South West航空の本社はカリフォルニアではありませんが、何となく カりフォルニアらしい雰囲気の航空会社で若い乗客に人気がある航空会社の一つ です。 とにもかくにも徹底した合理化で同じ区間の運賃では他社より安く、且つ十分な 利益をあげられると言う実績を出しています。こんな会社が日本に出来たら日本 の航空運賃もずいぶん安くなるのではないかと思います。アメリカ最大手の航空 会社は公式に全米をカバーする航空会社には同じことは出来ない等とコメントし ていますが、現実には強い影響が出ており、本音は右にならえ!と言うことのよ うです。
飛行機が特別な乗り物なんて時代はとっくに終わってしまい、それについて行け ない日本の航空会社は海外での集客力は毎年弱くなっています。サンフランシス コでもロスアンジェルスでも残念ながら日本の航空会社の存在感はほとんど無く なってしまいました。昔、パンナムに追い付き追い越せと頑張っていた時代が日 本の航空会社の海外での質面でのピークでした。逆に政府に保護された高い運賃 の日本国内路線に力を入れるようになったんでしょうね。