柳千賀子さんの「シンガポール体験記(18)」(97・8・22)
最近、とてもドタバタとした日々を過ごし、シンガポール体験記も、書くことはた くさんあるのに、なかなかパソコンに 向かう時間もままならない状態。 夫が出張に行った時間を利用して、ゆっくり体験記を書く時間をもてたこと が、うれしいというか、ホッとして、 硬くなっていた体をゆっくりやさしくマッサージして、気持ちよくなっていくよう な感覚で(ちょっとアブナイ?!)書き始め ることにします。書き終わった後には、すっきりとした開放感を期待しつつ。
さて、今回の体験記は、奇遇な事というか、縁というものか、神の仕業か。イヤ、 会社の仕業だ。 イヤイヤ、とんでもない会社のお陰で、あれから9年後にまさか、この国で再び3 人で会えるなんて!!という ほんとに、楽しくって、夢のような1週間を過ごしたことについてです。
今から9年前、横浜の専門学校を卒業した年の夏休みに、仲良しのRちゃんとWちゃ んと私と3人で、シンガポールに 旅行に来たんです。今でいう、遅れながらの卒業旅行だったかも。
英会話授業の担当の先生はシンガポーリアンの女性で、学校を辞めてシンガポール に帰るという知らせを受けていて、 シンガポールのアドレスを教えてもらったとき、「良いところだから、遊びに来て ね。」という社交辞令の言葉を まに受けたのは私だけだったらしい。
就職して、初のボーナスをもらって、ほんの少し自由に使えるお金が出来たので、 「外国とやらに行ってみない?G先生に会いたいし、シンガポールは治安はいいみ たいだし、キレイな国らしいよ。」 と、海外旅行デビューを積極的に誘ったのは、なんとこの私。
二人とも快く承諾してくれて、5年用のパスポートをつくり、すごく安い(当時12万 円ぐらい)ツアーに申込み、 先生には日本語で書いた手紙で連絡をし、あまり下準備もせずに来たわけです。
Rちゃん、Wちゃんと一緒に海外旅行できたことがすごくうれしくって、一番張り 切っていた私だったのに、 シンガポールのチャンギ空港を出た瞬間、「ゲッ!なにこれェ〜」と、はやすぎる 後悔。 わけのわからない南国特有のニオイ。ム〜ンとした湿気の有る蒸し暑さ。それに、 なんだか空気が流れていないような、 狭い部屋に閉じ込められたような、息苦しさ。今までに無い体感にすごくブルーに なってしまった。 3泊4日と短い滞在期間なのに、私は生きて帰れるだろうかとさえ思ってしまうほど 。
泊まったホテルは、イマイチだったし、ツアーに組み込まれていた市内観光は、マ ーライオン、植物園、マウントフェーバー、 その後は、免税店のハシゴ。なんだかつまらない。おまけに、夕方ホテルのプール で泳いでいたら、深みにはまって、 溺れそうになるし、ホテルのスイスレストランでのディナーは、服装を気をつける ようにといった割には、 チーズフォンデュは食べれずじまいで、お粗末な夕食。安いツアーだから仕方の無 いことなんだけど、私が選んだ ツアーだったから、あきらめきれないぐらいのショック。
先生には無事に会えてうれしかったし、チャイナタウンや、インド人街を案内して もらったまではよかった。インド人街で、 インド料理を食べることになり、入ったお店は、小さくて、冷房は効いていないし 、あまりキレイでもない。 インド系シンガポーリアンは、みんな手で食べてるし、お客はみな男性で、目つき は悪くなかったけど、店にそぐわない めずらしい日本人が来たもんだと注目され、小心者の私は、椅子に座っていてもお 尻が浮いているようなソワソワ気分。 出てきた料理が、これまためちゃくちゃ辛い。ちゃんとフォークとスプーンはつけ てくれたのに、私はペプシコーラと お化けせんべいみたいな物しか食べれずにいたのに、RちゃんとWちゃんは、「お いしい!」と言って、ムシャムシャ食べていた。 今でこそ、辛いインド料理も、小さいお店も全然平気だけど、あの時は、先生には本 当に申し訳ないけど、ダメだった。 それでも、しっかりそこのお店でいかにもおいしく食べたような顔をして、写真に 写っていた私。
先生には会えたし、初めての海外旅行を仲のいい友達と行けたことは、うれしかっ たし、ほんとに楽しい 思いで深い旅行になった。 がしかし、シンガポールの印象があまり良くなくって、二度とシンガポールには来 ないだろうと思ったし、私には海外旅行は 向かいということを実感し、5年用のパスポートはそれっきり。海外旅行デビューは 、一発野郎で終わってしまった。 友達二人は、味をしめたらしく、5年用のパスポートを有効的に使ったらしい。私に は察してのとおり、誘いの声はかからなかった。
それが、それが、あの私がシンガポールに住むことになった、と話したときの二人の驚きは言うまでもない。この二人ほど私のシンガポール赴任を心配した人はいないはず。1年経って、辛いインド料理、タイ料理、インドネシア料理は平気で食べれるようになり、決してキレイとは言いがたいホーカセンターでも、料理はおいしいし、人目も全然気にならず平気で店に入れるようになったことを、この二人ほど驚いている人もいないはず。
9年後、Rちゃんはシングルライフを楽しんでおり、Wちゃんは1歳半娘を持つ母になり、私はシンガポール在住になり、それぞれ状況や立場も変わった3人が、再び9年前のリメイク版とでもいうべきか、楽しい1週間を過ごすことになったわけです。
8月4日。空港には私一人で迎えに行った。ガラス越しに荷物を受け取るターンテーブルのところに、RちゃんとWちゃんと、元気そうなWちゃんの娘Eちゃんの姿を見つけたときは、感無量というか涙が出そうなくらい嬉しかった。タクシーに乗ろうとして、空港を出たときのムーンとした蒸し暑さに「9年前に来たときもそうだったね」と懐かしさを感じたらしい。
わが家に案内したら、部屋の広さにビックリしながらも、良いところだと喜んでくれた。ウエルカムシャンパンで乾杯をして、わりと早めに(といっても、翌日になってはいたが)休んでもらった。
5日。まだまだ日にちはあるんだから、ユックリ行動しようということで、朝ご飯を食べてから、支度をして、まずはEちゃんを乗せるバギーを買うことと、日本円をシンガポールドルに両替するために、オートチャードに出ることにした。9年前は地下鉄(MRT)には乗らなかったので、途中まで地上を走るから、景色も見てみたいということで、MRTを使った。車内はクーラーがガンガンに効いているので、外との温度差に思わず苦笑い。
伊勢丹で、Wちゃんが求めていたバギーを購入して、Eちゃんを抱き抱えなくてもいい解放感でホッとしたらしく、RちゃんとWちゃんは安くて良い洋服探しに動きだした。私は、Eちゃんと遊ぼうとしたがなかなか受け入れてもらえず、悪戦苦闘。仲良くなるにはちょっと時間がかかりそう。お昼ご飯を伊勢丹んのファミリーレストランで簡単に済ませ、両替をしにラッキープラザに向かった。ちょうどEちゃんはお昼寝をしてくれて、「しめた。いまのうちに」と、安い洋服を探し歩いたり、夕飯の買い物をしたり、デパートの中をグルグル歩いた。家に戻ってきてWちゃんはEちゃんのお世話をして、私とRちゃんと二人で夕飯の支度。こういうときは男手より女手の方がとても助かる事を実感。
6日。朝からなんだか天気が怪しい。天気が良くなるのを祈りつつ、MRTでバードパークに行くことにした。私もまだ行ったことが無く、Eちゃんは鳥や動物が好きだということで、楽しみにしていたのだが、バードパークに行く前に(MRTに乗っている最中)ものすごい雨になり、おまけに雷まで鳴り出し、終点の駅まで行ったものの、「こりゃ駄目だ」。あえなく断念。乗ってきたMRTに乗り換え、途中のチャイナタウン近くの駅で降り、シンガポールで有名な餃子を食べに行こうということになった。その前に、安い洋服屋に立ち寄り、バードパークで過ごせなかった時間を、タップリ有意義に過ごした。Eちゃんは少しご機嫌ななめだったけど、二人は大喜び。
雨は止みそうになく、傘を買って、てくてくと餃子屋に行ったら、なっなんと水曜日は定休日。ガ〜ンショック。どうしようかと考えて、思いついたのが有名なラッフルズホテルでの飲茶。雨の最中、タクシーをやっと拾って着いたら、ラストオーダー30分前でセーフ。二人とも喜んで食べてくれて、とりあえずホッとした。
ラッフルズホテルのショッピングアーケードの中に、プラダがあって行ってみたら、日本人だらけ。Rちゃんが「50%OFF」のバックを見つけて、お店の人に金額を聞いたら、半額になっているわりには高過ぎる値段を言うので、「おかしいよ。日本で買ったってそんなにしないのに」と3人で話していたら、日本人の女性旅行者の方が「その金額みたいですよ。日本で買うより全然安いですよ」と話しかけてきた。その方が言っているのもなんだか信用出来なくて、プラダを出て、ほかのところを見ていたけど、やっぱり気になるので、もう一度戻って、さっきとは別のお店の人に聞いたら、さっきの人が答えた値段の半額の値段だという。日本円に直して計算したら、日本で買うより半額ぐらい安かったので、Rちゃんは二つ、Wちゃんは一つ。即決で購入。一次はどうなるかと思ったものの、二人にとっては有意義なショッピングができて、ルンルンな1日となった。
7日。Eちゃんのためにもとプールデビュー。思う存分水遊びをしたEちゃんは上機嫌。お昼、前日に食べれなかった餃子を食べに行くことになった。コンドミニアム前からバス一本で行けるので、2階建てエアコン付きバスに乗った。記念にとしっかり写真を撮った。チャイナタウンで降りて、真っ直ぐ餃子屋へ。ちょっと時間が早かったから、並ばずに座れた。蒸し餃子と、焼き餃子、餃子の中にスープが入っているショウロンポウ(これが絶品)を注文。Eちゃんが喜んでムシャムシャ食べてくれたし、二人とも大満足してくれた。
その後、前日に行った安い洋服屋に立ち寄り、Rちゃんが買い物をしていたとき、私とWちゃんとフラフラ店の中を歩いていたら、日本では絶対見られないような奇妙なカツラを被ったマネキンが立っていて、悪のりをして、私たちはそのカツラを被って写真を撮ったり、大騒ぎをしてしまった。お店の人には怒られるし、迷惑な日本人と大ひんしゅくをかってしまった。しばらくあの店には立ち寄れないかも。追われるように店を出て、今度は日本の60%OFFぐらいで買える宝石工場に行ってみた。Rちゃんは、かなり値切ってほとんど90%OFFぐらいの金額で、アクアマリンの指輪を購入。粘り強く交渉したRちゃんは、かなりラッキーな買い物をした。
8日。シンガポール動物園に行った。3時からオリエンタルホテルでのハイティーを予約していたので、4人とも、ワンピースにサンダルの格好。なんだか動物園にはそぐわないいでたち。シンガポール動物園は、動物を檻に閉じ込めないでオープンなサファリ式自然動物園になっており、動物たちが伸び伸びと生活しているのを近くで見ることが出来る。もちろん、低い木々や小川などの柵はあるけど、日本の動物園とは全然違うのでEちゃんは大好きな動物を近くで見れて、嬉しそうだった。幾らかお金を払うと、ゾウに乗れるコーナーがあり、記念にと思ったものの、なにしろワンピースを着ていたので、断念。
充分楽しんだ後、オリエンタルホテルに行った。エレベーターに乗ろうとした時、Rちゃんが「ここってさ。先生に連れてきてもらったホテルじゃない?」と言う。そういえば、9年前に先生が、すごく素敵なホテルに連れて行ってくれて、最上階のプールサイドで涼んで、キレイな夜景を見た記憶があって、1年前に来たときから、気になっていたホテルが、オリエンタルホテルだったということが分かり、探し物を見つけたような嬉しさと、何だか偶然にしては不思議なくらいピッタリと当てはまったことに、ビックリ。9年後に再び、3人がシンガポールを訪れることが、偶然ではなく、あらかじめ決められていたのでは?と恐い気さえした。夜は、Eちゃんが眠ったあと3人でお酒を飲みながら、3時過ぎまで盛り上がった。夫が2泊3日の出張でいなかったため、ユッタリした気分で存分に楽しんだ。酔っぱらいながら、何枚も写真を撮ったので、見るのが恐い。
9日。Eちゃん、Wちゃん、Rちゃんはすごい元気なのに、私だけが二日酔い。体調不良。それでもシンガポールのリゾートアイランドセントサ島に行くことにした。マウント・フェーバーと呼ばれる小高い丘からロープウエーで海を渡りセントーサへ。いろいろな所を見て回りかったけど、何しろこの日は、目茶苦茶暑くて、おまけに二日酔いで調子が出ない。とえあえず「セントサ島に行ってきました」と記念の写真を撮って帰った。
10日。とうとう最後の日。午前中からお昼にかけて、買い足りないお土産を買いに、オーチャードに出た。レストランより、ファーストフードのほうが、気をつかわず食べれるからと、ケンタッキーに行った。そこで、またもRちゃんは「ここに、来たよね?」と言う。そういえば9年前、階段を下った半地下にあったケンタッキーで、チキンフィレサンドを食べた記憶がある。「ここだったんだー」。9年前に歩いた所を、全部ではないけど、たどった事になる。家に戻ってから、EちゃんとWちゃんは、シンガポール滞在期間中の日課である、プールを思う存分楽しんでいた。
夜。シーフードレストランで最後のディナー。蒸しカニ、アワビ、牛肉の炒めもの、チキン、ベジタブル、ヌードルとどれもおいしかったので、充分満足してくれた。Eちゃんは、私にだいぶ慣れてくれて、私がEちゃんと遊んでいるときに、Wちゃんは食事をしたりで、ユックリとディナーを楽しめた。Eちゃんもおいしいものを食べれて上機嫌。だいぶ舌が肥えたみたい。
6泊7日は、あっという間に終わってしまった。Eちゃんは慣れたころに帰ることになって本当に寂しかった。1歳半で海外旅行なんて生意気と思ったけれど、3人プラス1人の存在感はとても大きかった。わざわざ遠いところ、子連れで不安を抱きながら来てくれたRちゃん。9年前の再現が出来たことや、シンガポール生活の中で、心に残る大切な思い出が出来たことで、二人には本当に感謝したい。ずっとずっと大切にしたい私の親友だ。
9年前の嫌な体験も今となっては良い思い出だし、それがあったからこそ、9年後の今回を楽しむことができたんだ。何年後、何十年後、足腰が達者なうちに2度或ることは3度有るというように、また3人で、シンガポール旅行ができることを楽しみにしたいと思う。