こちら編集室「県南日々新聞の協力記者」(97・10・3)
「県南日々のために見習い記者としてお手伝いしたい」と読者からの申し出があった。読者の中にはもうお読みになったかと思うが、アニメーション映画で大ヒットとなった「もののけ姫」を課題に「もののけ姫の背景モデルは秋田の白神山地である」をお書きになった阿部輝忠さんである。
阿部さんはその後、9月28日に行われた角館町から鷹巣町までの「100キロマラソン」を取材、写真を添付して本紙に電子メールで送ってくれた。嬉しいかぎりだったがパソコン音痴はまたしてもその記事を前に取り込み方法が分からず戸惑った。結局、阿部さん自身が県南日々の編集室になっている大曲市役所記者室に駆けつけて、操作方法を教示して紙面に取り込むことになった。
阿部さんは大曲市から30キロほど離れた西木村の在住である。35歳。知り合ったのは、この県南日々のキー局でもあり、技術的な面でサポートをして下さっている「きたうら花ネット(田沢湖芸術村)」の創設1周年記念式典でのお酒の席でだったらしい。らしいというのは、すっかりお酒が回って記憶にないからである。その後、何度かメールの交換があって、「僕で良かったら県南日々の見習い記者として使ってください」との申し出があった。
報酬が出せる新聞じゃないからこちらからお願いするわけには行かず、見守っていたら、最初に原稿として送ってきたのが「もののけ姫」だった。読んでみて、文体がシッカリしているのに驚いた。新聞記事というより、文化欄にお似合いの内容だったので、そちらの方に掲載したが、それから2週間過ぎたら、今度は「100キロマラソン」を取材、写真を添付した上に、見出しまで付けた完全な紙面にした上で送ってきたのである。
所々に新聞記事らしさに欠けた面はあったが、ほとんど手を加える必要性はないほどまとまった文章だった。 阿部さんは15歳で家を後にし、茨城県の日立製作所が運営する「日立工業専修学校」に入学。卒業と同時に日立工業に就職したという。そして22歳になって、東京都小平市にある日立武蔵工場に移って、半導体を中心とした仕事をこなす。働きながらも、もっと面白いことに取り組みたいと、都内にある企画塾に入学。「新規事業企画」を学ぶと同時にパソコンとインターネットに興味を抱き、独学でホームページ製作を身につけたという。そしてこれからはインターネットの時代が来ると確信、その将来性に期待して故郷・西木村に今年5月に戻った。
「インターネットは田舎のほうがいい。田舎だからこそ企画もいっぱい生まれるし、地域に密着した情報を発信すれば、地域の活性化にもつながる」と夢を持つ。地元の酒屋さんのホームページの製作や県外の温泉PR用のホームページなど細々と仕事を受注。「まだ食える状態でないけど、気楽にやってます。退職金もありますから」と阿部さん。
「これからはホームページの製作より、いかに多くの人から目を通してもらうか、つまりアクセスしてもらうか、その企画と運用が主な仕事になるでしょう」とも話す。そして、ボランティア状態の「県南日々」を「それこそ、あれほどのアクセス数を誇っているんだから、間もなく営業活動に結び付く新聞になりますよ」と励ます。
県南日々の協力記者になりたかった理由は「文章をいじっているのが好きなんです」と言った。東京にいたころ仲間と音楽グループをつくって、活動。阿部さんはもっぱら、作詞を中心にやったらしい。それが文章の基礎となったようだ。なるほど表現がとてもきれいな所があると思った。
眼鏡をかけ、飄々(ひょうひょう)とした表情で、いたずらっぽく笑う。しかし、さまざまな体験もしてきたせいか、あるいはこれからインターネットという、まったく新しい分野で、しかもフリーの身で仕事をしなければいけないとの厳しい自負を持っているせいか、口調は時に厳しい。
ともあれ県南日々は頼もしい助っ人を得た。阿部さんは「まだ新聞記事の書き方はよく分からないから、送った記事はどんどん削って構わないし、捨てても構いません」と謙虚だ。とんでもないよ。阿部さん。あれほどの完成原稿を書けるんだもの。県南日々は、頼りにしてますよ。