岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(15)」(97・10・5)
黄金の稲穂に赤トンボ。日本であれば秋の自然の姿なのでしょうが、渡米以来、 我々の暮らすサンノゼでトンボと言うものを見たことがありません。そう言えば セミの声も聞いたことがありませんし秋の虫の声も聞きません。でもサンノゼ辺 りも朝夕の気温は下がり始め、秋を感じさせます。庭の柿の実も大きくな本当の 柿の色になってきました。収穫は3ー4週間後だと思います。我家の庭の季節と しては、次はみかんの収穫となります。とにかくこちらのスーパーで買えない果 物の木を育てています。
アメリカ暮らし(15)は健康問題の続編として医院の話をしてみたいと思いま す。
昔の本には各家庭はホームドクターを決めていて、その家族の健康相談、健康管 理を担当している等と書かれていました。地方ではまだその形態は続いているよ うですが、人口移動の多いサンノゼ辺りではほとんど存在しなくなってしまいま した。まして学校や企業が強制する健康診断そのものが違法行為とされる国です から、持病を持っている人以外は大抵、体調が悪くなって慌てて電話帳から医者 を探すと言うのが普通のパターンになってしまいました。
さて医者にかかる場合はまず電話で予約を入れ、一般診療医がいる医院を訪れる ことになります。こちらでは町単位の規模の地域の中に複数の医院が集中してい るプロフェショナルセンターと言うような名称の建物があります。大きな都市に はこの規模の医院群が何ヶ所もあり、病院の周辺にはこれらのセンターも集中し ています。ここの中にある医院を訪れます。また通常ホスピタルと呼ばれる病院 では日本のような救急部門を除いて診療行為は行われず、ホスピタルは精密検 査、手術、入院患者のみを対象としています。また救急診療を受けると高いんで す。
さて医院の受け付けで名前を告げると住所氏名、保険会社の情報のほか、アレル ギー体質があるか?病歴は云々と言うアンケートへの書込みを要求されます。実 は始めての日本人にとってはこれが至難の作業なんです。多少英語の会話に自信 のある方でも英語の病名等と言うとほとんど知識が無いのが普通です。とにかく 書き込んで、保険に関する証明等を渡し、ロビーで待っていると自分の名前が呼 ばれ、診察ベッドのあるドアのついた一坪ぐらいの個室に案内されます。その場 で医療助手(看護婦ではありません)のような人が簡単に症状を尋ね、血圧脈拍 と体温等をはかって記録、ドクターは直にきますからと言ってドアを閉めて出て いってしまいます。
ここで大抵の日本人の方が気がつくのはこの部屋の中に診療 機器とか診察道具のようなものがほとんど置いてないことです。 さてドクターの登場です。まずはドクターの方は自分の名前を告げ患者に握手を 求めてきます。一般にアメリカのドクターは威圧感とか権威感を感じさせません し命令的な言葉は絶対に使いません。言い換えると大変フレンドリーです。
当 然、スタートはどうしたの?からなんですが、ケガ以外の場合、ここで正確に症 状や経緯を説明出来るか否かが適切な治療の鍵なんです。ただ日本人にはこれが 実に難しい!。 問題の箇所を指で指すことは出来ますが、同じ痛いでもジンジ ン、ガンガン、ズキズキ、チクチクでは全く違いますし、そんな英語は学校で全 く教えてくれないし、和英事典も見ても違いを表現出来ません。問診を非常に重 要視することが多いんでドクターの方も説明しきれない私達に代わって痛さの表 現をやさしい言葉にして、こんな感じの痛さか?あんな感じの痛さか?と尋ね、 それでこちらはイエス、ノーと返事をする奇妙なやり取りが始まります。これを 第3者が見ていると言葉が通じぬ診療と言うのは本当に大変だな!と思います ね。
一応、ドクターは目星をつけると喉や耳を覗いたり、聴診器をあててとの検診と なる訳です。また必要に応じて血液や尿の採取となる訳です。ドクターの方はそ の場で本人に該当する病名をつげ、その症状と気をつける点を説明してくれ必要 な薬を買う為の処方を書いてくれます。 また、専門医の診察が必要な場合はその場で予約をとってくれるのが普通です。
最近の日本の事情は分かりませんが、日本のようにその場で投薬とか注射をとか 言うケースは大変希です。従ってその処方を持って薬局から薬を手に入れること になります。 医者のところに出かけると言うのは日本でも厄介なことと感じてズルズルと言う パターンが多い訳ですが、言葉の壁があった場合は結局、ガマンが出来なくなっ て医者の所にと言うケースが多いようです。 ニューヨークとかロスアンジェルスあたりでは日本語の良く分かる医者の数も多 いようですが、サンノゼ辺りでは非常に限られており、こと専門医となるとその 数は限られてしまいます。
そんなことから、手遅れになるケースも多く、日本で死ぬ為に帰国すると言う知 人を何人かサンフランシスコで見送りました。